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2030年の「心豊かなライフスタイル」~未来のあたりまえを考える~vol.2

モノづくり日本会議「ネイチャー・テクノロジー研究会」主催 第3回コンテスト入賞作品紹介
2030年の「心豊かなライフスタイル」~未来のあたりまえを考える~vol.2

「アップサイクルライフ」

 環境・エネルギー制約が頂点に達するとされる2030年をターゲットに、地球環境やエネルギーの問題を考えながら、心豊かな未来の情景、人間らしいライフスタイル(暮らし方、生活シーン)を表現する。厳しいからといって単にがまんをするだけではなく、わくわくドキドキするために必要なモノ、技術かを探る。その答えを自然の中から見つけ出すことがコンテンストの目的。子どもから大人、専門家など幅広い層から寄せられた応募作品は201件。入賞した11件を順次紹介します。

「路面電車のある暮らし」【花王 こころつながるくらし賞】


 田中ナオミさん(東京都渋谷区・54歳)

 私は今年で古希。今の楽しみは週二回の和菓子屋さんでのアルバイトと月一回の観劇です。シニアバイトは成人の半分の給料で短時間、お小遣い程度ですが働けるのは嬉しいことです。

 この十年、東京の交通はJOMZ(japan organized mobilityZ 縦横無人)という低床路面電車の導入が進んでとても便利になりました。その立役者はかつて首都圏の通勤の足だった地下鉄。一部深層路線は今も運行しているものの、約七割が貨物路線へと生まれ変わり、東京の物流を地下から支えています。旧駅スペースは各地域の物流拠点へと生まれ変わり、配送を管理するビルや百貨店は直接地下に貨物を引き入れ、地上を走る大型車は激減しました。

 JOMZは自分の居場所も乗り換えも分かり易くて助かるし、何より車窓の景色が楽しめます。かつての地下鉄の入り口は塞がれ、歩道や自転車道も整備されました。バス路線も見直され、交通の便の良さは高齢者の自立に一役買っているようです。
 さあ着いた。明治座が目の前ね!

「受け継がれる二地域居住」【サンデン賞】


 田中英貴さん(東京都目黒区・26歳)

 都心に住まいながら地方の豊かな自然を享受する暮らし、賃貸と戸建による二地域居住を提案したい。
 
 狭小で地価の高い都心は緑すら人工的に設けられているが、そこから2時間も離れれば広大な土地にありのままの豊かな自然が広がっている。平日は便利な都心の賃貸マンションに暮らし、休日は豊かな地方の戸建住宅で過ごせば、都心の暮らしに空間的ゆとりをもたせることができる。自然の溢れる環境での休息や成長は、必ずや人格・精神を豊かにするはずだ。

 ファミリー世代をターゲットに都心賃貸マンションと郊外戸建のセット販売や、市区町村間の連携による移動コストの控除があれば、二地域居住が広まるだけでなく、地方への人口流出や経済効果につながる。そして子供が大人になったとき、豊かな自然に囲まれた暮らしを思い出せば、自分も同じような暮らしをしたいと望み、世代を通じて受け継がれていく。15年後、私は未来の家族とそんな暮らしをしたい。

「アップサイクルライフ」【積水インテグレーテッドリサーチ賞】


 紺野琢磨さん(岐阜県大垣市・25歳)

 アップサイクルという、リサイクルをグレードアップした概念が2030年、人々の暮らしに浸透しています。ものが壊れ、自分の手で直す際に、ただ元通りに直すのではなく、新たな付加価値を同時につけます。時計を例にとり、時計が壊れ、ベルが片方なくなったとします。本来あった場所に新たにベルを取り付けることによって時計は直りましたが、このときぜんまいも同時につけました。このことによって、時計が歩き出したため、赤ちゃんは大喜びです。

 ものを捨てずに直す、そして自分の手でよりよいものに仕上げることはエコの観点でよいことというだけに留まりません。自分の手でカスタマイズしたことで得られたONLY1に愛着がわき、時計を直した親御さん、そして時計を新たな遊び相手として獲得した赤ちゃん双方にとって宝物となること間違いなしです。

 (次回は7月13日公開予定)
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
路面電車もいいが馬車もいい。

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