エーザイが認知症で「医療と介護」の連携に挑戦

服薬や生活状態を一元管理、医師とヘルパーが意思疎通図る

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東京・品川区では認知症対策で多職種が連携する
 認知症薬「アリセプト」で知られるエーザイは、認知症患者の在宅ケアを効率化する仕組みの構築も模索している。NTT東日本の情報共有システムを活用し、医師やケアマネジャーといった専門職の連携を促進する試みだ。認知症の症状は服薬状況や介護環境次第で変わると考えられるため、普段患者と接する介護担当者が得た情報が治療方針決定のカギを握る。エーザイは在宅ケアの知見を中長期の医薬品開発や販売にも生かす考えだ。

 【従来は技能に差】
 「医療と介護を連携させる仕組みをつくらなければならない」。エーザイの国内事業部門であるエーザイ・ジャパンで認知症対策を担当する小峰俊也戦略企画部部長は、こう力を込める。認知症患者は自宅で介護サービスを受けつつ、時折は医師に診察してもらう場合が多い。この際、医師をはじめとする医療機関とヘルパーなどの介護担当者が必ずしもうまく連携できていないと小峰部長は指摘する。

 例えば従来は、ヘルパーが紙のノートに患者の状況を記録し、ケアマネジャーや看護師経由で医師へ報告するといった情報の受け渡しが行われていたという。これでは症状変化の迅速な把握や、タイムリーな診療が難しい場合も出てくる。「ヘルパーによって観察や報告の技能に差がある」(小峰部長)ため、正しい情報が伝わらない懸念もあった。

 【要介護改善も】
 そこでエーザイはNTT東と共同で、ITを活用して複数の専門職が連携する仕組みの試験運用を2014年5月に東京都品川区で始めた。NTT東が開発した、認知症患者の服薬状況や生活状態を一元管理できるシステムを活用。ヘルパーや看護師がこれらの情報をタブレット端末などで入力し、医師が参照して診療に活用する。

 同システムでは患者ごとの管理項目が明示されており、複数のヘルパーが介護を分担するなどの場合でも同じ基準で記録を行いやすい。短文を即座にやりとりする機能もあり、迅速な意思決定も期待できる。「医師と話すことがほとんどなかったヘルパーにとっては医療に貢献する実感が得られ、モチベーションも上がる」(同)。

 試験運用では要介護5の患者が同3に改善した成功例が出た。水分摂取量が少なく寝たきりになっていたが、関係者が情報を共有しつつ増やす働きかけを行ったことが奏功した。別の例では興奮しがちな患者の対応策を細かく定め、暴力を未然に防げたという。

 【収益化に注目】
 品川区ではもともとエーザイが、多職種間で症例の議論を行う研究会を運営していた。このような下地があったためITの導入もスムーズに進んだといえる。同社は16年度にも一連の枠組みを全国へ横展開する考え。総合的な認知症対策を主導できれば、ブランド力向上につながりうる。

 収益モデルの具体化も注目される。エーザイは詳細を明らかにしていないが、在宅ケアにおける服薬データを分析して医薬品開発や販売に活用したい考えのようだ。認知症領域で複数の開発品を抱えるだけに、中長期の業績に貢献する可能性がある。
 (文=斎藤弘和)

日刊工業新聞2015年07月10日 モノづくり面

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア事業担当 DX統括

意外とIT化が進んでない。今後はIoTデバイスが有効活用できそう。

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