4月に民営化した大阪メトロ、大きなBSの割にPLが小さい

河井英明初代社長インタビュー「不動産を活用して成長する」

 4月に民営化した大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)の河井英明社長は日刊工業新聞の取材に応じ、地下鉄の「駅ナカ」開発など非鉄道事業の拡大や、可動式ホーム柵の設置策など安全対策を重点的に進める考えを示した。これらは6月末にも発表する中期計画に盛り込む方針だ。

 中期計画では心斎橋や梅田といった主要駅に、駅ナカ、駅地下といわれる駅構内の開発計画を明らかにする。経営資源を有効活用し、現在売上高比率で10%以下の非鉄道事業の拡大を図る。河井社長は「(大阪の)地下街だけで毎日70万人が行き来する環境はビッグチャンス」とし、賃貸マンションやホテル、保育所などの開発・運営も視野に入れる。

 安全対策に向けた可動式ホーム柵の設置では「御堂筋線をまず優先する」(河井社長)とし、「ほかの乗降客数の多い駅と合わせて、早期設置を検討する」(同)とした。河井社長はパナソニックの最高財務責任者(CFO)の経験を生かし、民営化に対応した経理・財務制度など内部の経営管理体制の早期構築も中計に盛り込む。

日刊工業新聞2018年5月15日


河井社長に今後の方向性を聞いた


 ―就任から2カ月たち、大阪メトロの印象は変わりましたか。
 「一利用者の時は、(会社イメージに)無機質な感じがあった。あるアンケートでも同じ印象を抱く人が多かった。だが中に入ると、駅や電車の安心・安全を支える多くの職員が、強いプロ意識を持ち業務に携わっていることが分かった」

 ―パナソニックの財務責任者を務めた経験から、会社の課題をどう認識していますか。
 「財務構造を見ると、大きなB/S(バランスシート)の割に、P/L(損益計算書)は小さく、キャッシュフローは伸びないというアンバランスさがある。投資から利益を回収するまで時間もかかる。内部の経営管理体制を変えなければと思う。人口減少や少子高齢化が進み、今後は沿線人口が減ることを踏まえ、鉄道事業一本でやっている現状では成長が難しい。鉄道以外の売り上げや利益をどう増やすかは大きな課題だ」

 ―非鉄道事業をどう進めますか。
 「大阪メトロは毎日250万人が利用し、地下街だけでも70万人が行き来する。この立地環境はビジネスチャンス。広告収入や『駅ナカ・駅チカ』事業、点在している不動産を活用して街づくりに向けた取り組みを重ねていく。介護・子育て関係、賃貸マンションやホテルなど、いろいろとやっていけるだろう」

 ―安全対策の取り組みも重要です。
 「安全安心が最優先という方針はぶれずに、これは今まで以上に力を入れていく。可動式ホーム柵の設置は、混雑する駅が多い御堂筋線を優先する。各路線ごとの設置計画も、6月末か7月頭にも発表予定の中期計画に盛り込んでいきたい」
河井英明社長

日刊工業新聞2018年6月4日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
06月04日
この記事のファシリテーター

鉄道以外でいかに収益を上げるかの取り組みは待ったなしだ。JR西日本は中期計画で非鉄道事業の割合を50%以上にすることを掲げ、他の関西私鉄の割合はすでに高い。民営化したことを原動力に、大阪メトロならではの事業を展開できるか。社員の“民間”発想という意識改革も大きなカギとなる。
(日刊工業新聞社大阪支社・新庄悠)

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

PRmore

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。