揺れる東芝「第三の柱・ヘルスケア」アドバルーンの着地点

田中社長肝いり。M&A難しく2017年度売上高1兆円の目標は遠のく

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ヘルスケア開発センター開所式(左から4人目が田中社長=14年12月17日)
 二代前の西田厚聰社長(現相談役)、前任の佐々木則夫社長(現副会長)という個性的なキャラクターの後を継いだ田中久雄社長。調達部門が長くコーポレート出身のため、社内では各事業部からの求心力が弱く、社外からも地味な存在に映った。それでもこの2年間は、必至に独自色を出そうとアドバルーンを打ち上げてきた。案件が大きくなくても、とにかくこまめに海外出張にも出向いた。

 そして事業面でアドバルーンの象徴が「ヘルスケア」。「社長はヘルスケア事業しか頭にないのではないか」(同社幹部)と言われるぐらいに、熱の入れようは凄まじかった。かつては「半導体」、「社会インフラ」、「デジタルプロダクツ」が東芝の3本柱だったが、赤字体質のデジタルプロダクツに取って代わって、ヘルスケアを“第三の柱”に位置づけ、成長投資へ動き出していた。

 毎年5月に東芝は経営説明会を開催する。昨年も田中社長の口から、特にヘルスケアについては強気な言葉が飛び出していた。今回の不適切会計問題の調査などが終了し、9月の臨時株主総会で新体制を整えてからも、ヘルスケア事業を成長分野に位置づけていくことに変わりはない。

 2017年度には売上高1兆円(14年度実績は約4500億円)というかなり高い目標を設定。「1兆円は新規・既存事業だけでは難しい」(田中社長)とし、大型のM&Aも検討していたが、当面、それは難しくなった。今回の件で、国内外の受注活動に影響が出る可能性もあるが、よい製品や技術があるだけに、どこまで自力成長できるかにかかっている。

キャッシュを創出して投資に。「画像診断事業で世界トップスリーを目指す」


 「2016年度(17年3月期)に売上高7兆5000億円、営業利益4500億円を目指す。一度提示した目標は変更しない」。(経営説明会の)会場にさっそうと登場した田中社長は、必達目標を高らかに宣言した。コスト削減を加速して14―16年度に3000億円の効果を創出し、ヘルスケアなど重点3分野を中心に3年間で1兆5000億円を投じる。キャッシュを創出して投資に回し、売り上げを増やすという好循環を狙う。

 稼ぎ頭のNAND型フラッシュメモリーには課題もある。需要が伸び悩むほか、単価の下落も続いており、田中社長も収益面で「ボラティリティー(変動性)が高い」と認める。15年度には立体構造のNANDを量産する計画だが、先行する韓国サムスン電子は「歩留まりが上がらずに苦労している」(業界筋)。東芝が順調に量産できるかは不透明だ。安定的に稼げる事業を早期に育てる必要がある。
 
 そこで注目されるのが、第3の柱に掲げたヘルスケア事業だ。原子力発電設備事業が低迷し電力・インフラ部門の成長が鈍化する中、国内や欧米で稼げるヘルスケア事業への期待は大きい。「製品力を強化し画像診断事業で世界トップスリーを目指す」(同)考えで、16年度に売上高7200億円(13年度比75%増)を視野に入れる。
 
 ただ足元の14年度は同4400億円の規模にとどまり、種まきの段階だ。また日立など競合も勢力を拡大しており、自前主義で規模を追求するには限界がある。かつて東芝は米ウエスチングハウスへの買収を決める前に「医療機器メーカーの買収を検討したこともあった」(東芝首脳)。田中社長も規模拡大に向け「アライアンスやM&A(合併・買収)を考えたい」と前向きだ。

 <サービスやそりーションの比率高める>
 重点分野に掲げた予防領域では日本人向けの全遺伝子情報(ゲノム)解析システム、生体情報センシング装置、クラウド技術を活用した健康セルフチェックサービスなどを順次実用化する。
 
 予後・介護領域は医療施設向けの音声コミュニケーションシステム、健康増進領域では無農薬野菜を生産できる植物工場事業などを進めている。現在売上高の大半を占めるコンピューター断層撮影装置(CT)などの診断・治療分野はウイルス検査キット、呼気分析検査装置を投入。飲み込むだけで体内を観察できカプセル内視鏡にも新規参入する。
 
 ヘルスケア事業は売上高拡大とともに営業利益率も10%超に高める。「サービスやソリューションの比率を高め収益を伸ばす」(田中社長)としており、M&Aなどによって医療IT・サービス分野を強化していく。(2015年05月23日付から抜粋・加筆)

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

ヘルスケア事業の拡大は西田社長時代から悲願。田中社長も就任当社は説明もたどたどしかったが、その後、かなり事業を勉強したことが伺えた。ヘルスケアは国や公的機関とのつながりも多いだけに、早期に信頼を回復して受注活動の影響を最小限にしないといけない。

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