不織布需要が止まらない!旭化成せんい「ベンリーゼ」の生産増強
新素材開発で顧客との共同開発も加速中
旭化成せんいは9日、ベンベルグ工場(宮崎県延岡市)敷地内に、再生セルロース長繊維不織布「ベンリーゼ」の生産設備を増強すると発表した。シートマスクなど化粧品用途を中心に需要が伸びており、現状比約3割増の能力増強を決めた。投資額は非公表だが、数十億円程度と見られる。12月に着工し、2017年3月の稼働を目指す。
ベンベルグ工場敷地内に新たに建屋を設け、年産約1500トンの設備を増強する。現状ベンリーゼはベンベルグ工場で生産しており、年4000トン強の生産能力を持つ。ベンリーゼは、再生セルロース繊維「ベンベルグ」から作られる不織布。ベンリーゼで作ったシートマスクは密着性が良く、透明性があり、けば立ちにくいなどの特徴を持つため、中国や韓国メーカーから需要が高まっている。
旭化成せんいが2014年に打ち出した、新素材開発の指針「A―cubic」。「Active(運動時の機能性)」「Adaptive(肌へのやさしさと適合性)」「Agreeable(清涼性と保温性)」の三つの英単語の頭文字を取って名付けた。こうした機能を持つ素材開発のため、素材の加工技術・評価技術など幅広い周辺技術を蓄積。「A―cubic」の打ち出しを通じて、顧客とも新たな関係を築き、顧客満足度向上につなげている。
もともと同社は「A―cubic」で掲げるような機能性素材の開発に注力していたが、開発方針を明確にまとめていなかった。糸・生地メーカーの同社は「糸用ポリマー開発にとどまらず、生地の縫製の仕方や製品化後の着心地なども検証している」(向井三郎企画管理部マーケティング室副部長)のが強み。しかし、開発姿勢を伝える機会が少ないのも課題だった。
「開発指針を展示会でアピールし始めると、国内外で当社の開発姿勢を知ってもらえるようになった」(荒木鉄治企画管理部マーケティング室室長)と、変化を実感。また「開発姿勢に共感してもらい、商社を通じて糸や生地を提供するだけの関係だった顧客と、共同開発へ発展することが増えている」(荒木室長)と手応えを得ている。
顧客との共同開発で重宝するのが同社の評価技術。「ユーザーが、きちんと素材の機能を実感できるかが重要だと考えている。人工気候室などを使った、着用試験に特に注力している」(池永秀雄商品科学研究所所長)。顧客から要望があれば、製品形態で機能を評価。機能性を検証したデータを提供し、顧客がタグ等で素材の機能をアピールするための材料を提供する。
最近では、皮膚の伸縮を動的に解析できるシステムを活用し、顧客と共同でガードルを開発。海外顧客と共同開発した揺れを制御する防振ブラジャーは、コンピューターシミュレーション技術を活用した。
「旭化成せんいの強みである技術力は、すなわち顧客の強みにもなる。ぜひ活用してほしい」(向井副部長)。顧客との共同開発で、顧客が求める素材の提供につなげている。
(文=山路甲子)
ベンベルグ工場敷地内に新たに建屋を設け、年産約1500トンの設備を増強する。現状ベンリーゼはベンベルグ工場で生産しており、年4000トン強の生産能力を持つ。ベンリーゼは、再生セルロース繊維「ベンベルグ」から作られる不織布。ベンリーゼで作ったシートマスクは密着性が良く、透明性があり、けば立ちにくいなどの特徴を持つため、中国や韓国メーカーから需要が高まっている。
「A―cubic」で新素材開発で顧客と新たな関係構築
旭化成せんいが2014年に打ち出した、新素材開発の指針「A―cubic」。「Active(運動時の機能性)」「Adaptive(肌へのやさしさと適合性)」「Agreeable(清涼性と保温性)」の三つの英単語の頭文字を取って名付けた。こうした機能を持つ素材開発のため、素材の加工技術・評価技術など幅広い周辺技術を蓄積。「A―cubic」の打ち出しを通じて、顧客とも新たな関係を築き、顧客満足度向上につなげている。
もともと同社は「A―cubic」で掲げるような機能性素材の開発に注力していたが、開発方針を明確にまとめていなかった。糸・生地メーカーの同社は「糸用ポリマー開発にとどまらず、生地の縫製の仕方や製品化後の着心地なども検証している」(向井三郎企画管理部マーケティング室副部長)のが強み。しかし、開発姿勢を伝える機会が少ないのも課題だった。
「開発指針を展示会でアピールし始めると、国内外で当社の開発姿勢を知ってもらえるようになった」(荒木鉄治企画管理部マーケティング室室長)と、変化を実感。また「開発姿勢に共感してもらい、商社を通じて糸や生地を提供するだけの関係だった顧客と、共同開発へ発展することが増えている」(荒木室長)と手応えを得ている。
顧客との共同開発で重宝するのが同社の評価技術。「ユーザーが、きちんと素材の機能を実感できるかが重要だと考えている。人工気候室などを使った、着用試験に特に注力している」(池永秀雄商品科学研究所所長)。顧客から要望があれば、製品形態で機能を評価。機能性を検証したデータを提供し、顧客がタグ等で素材の機能をアピールするための材料を提供する。
最近では、皮膚の伸縮を動的に解析できるシステムを活用し、顧客と共同でガードルを開発。海外顧客と共同開発した揺れを制御する防振ブラジャーは、コンピューターシミュレーション技術を活用した。
「旭化成せんいの強みである技術力は、すなわち顧客の強みにもなる。ぜひ活用してほしい」(向井副部長)。顧客との共同開発で、顧客が求める素材の提供につなげている。
(文=山路甲子)
日刊工業新聞2015年07月10日 モノづくり/素材・ヘルスケア・環境