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放課後、校内が静まり返る理由とは?「就職率100%」栃木県立真岡工業高校

資格取得に工業人の誇り、“仕事の現場”を常に意識した人材育成
放課後、校内が静まり返る理由とは?「就職率100%」栃木県立真岡工業高校

清水さん(写真右)の旋盤加工を指導する石塚先生

 モノづくりの復権に向け、製造現場では多くの優秀な人材が求められている。産業界のニーズ、意欲の高い生徒のために教育カリキュラム・設備の充実が進む工業高校など人材育成現場の現在を追う。

 栃木県立真岡工業高校は「実践的な技術者育成」と「資格取得」に力を注いでいる。卒業生は産業界からの評価も高く、モノづくりの現場で広く活躍する。“仕事の現場”を常に意識した人材育成は「就職率100%」という形で成果を表している。

 放課後、校内は静まりかえる。家路を急いだり部活に汗を流したりする生徒たちの騒がしい雰囲気がここにはない。小林綱芳校長によると、放課後の1―2時間は資格取得のための自主勉強が各クラスで行われているという。
 生徒たちは卒業までに平均3―4の資格を取得する。2・3級技能検定(普通旋盤作業や大工工事作業)や第3種電気主任技術者、測量士補に加え、溶接や危険物取扱者、CAD検定などと幅広い。「資格は工業人としてのプライドにつながる」と語る小林校長も第2種電気工事士などの資格を持つ。教員側も実際に資格を取得し、生徒たちの資格勉強をサポートする。

 生徒が“工場”と呼ぶ機械実習棟では、野球部やサッカー部などと同じ部活の「機械研究部」に所属する生産機械科3年生の清水幸太さんが旋盤加工の練習に汗を流す。清水さんは6月に行われた「高校生ものづくりコンテスト」の栃木県大会機械系部門で優勝。次のステージは9月に埼玉県で開かれる関東大会だ。
 「モノづくりにあこがれて工業高校に入学した。卒業までに旋盤の操作技術を少しでも向上させたい」と意欲を語る。指導役の石塚利生実習教員は技能士1級の持ち主。県内の工業高校教員でも技能士1級を持つ教員は極めて珍しいという。

 「うちは大きな高校ではないが、熱心な教員や確かな腕を持つ技術指導員が多くいる。モノづくりに少しでも興味があれば“入学資格”がある」と小林校長は熱を込める。
 (栃木・小野里裕一)

【DATA】
校長=小林綱芳氏
所在地=栃木県真岡市
学科構成=機械科、生産機械科、電子科、建設科
総定員=480人
主要設備=旋盤、フライス盤、3軸マシニングセンター、コンクリート万能試験機
主な進路=ミツトヨ、花王、千住金属工業、日産自動車、真岡製作所、コマツ、宇都宮大学、群馬大学、足利工業大学、作新学院大学など

※日刊工業新聞 毎週金曜日に掲載
日刊工業新聞2015年07月10日 中小企業・地域経済面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
まじめさ、ひたむきさが伝わってくる真岡工業高校。本気でモノづくりをしたい生徒をサポートする体制や雰囲気がここにはあります。

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