ジャスト・イン・タイムが進化!?ボッシュ日本法人の取り組みとは
「最終形まで時間がかかるが、モノづくりを劇的に効率化する」
インダストリー4・0(I4・0)に期待される効果の中で、日本の製造業にも身近なものは、ジャスト・イン・タイム(JIT)を用いたモノづくりの進化だろう。サプライチェーンの隅々までI4・0を行き渡らせ、情報をリアルタイムで共有して働く生産ラインが構築できれば、“サプライチェーン全体のJITと在庫ゼロ”という究極の最適化も夢ではない。
ボッシュ(東京都渋谷区)の製造を統括する満岡隆一専務は、「個人的にJITへの効果を最も期待している」と話す。独ロバート・ボッシュは自動車部品や製造設備、センサーなどを事業展開し、I4・0では約50件のプロジェクトを進める。I4・0の中核企業だ。
現在、JITを実現するシステムとして、トヨタ自動車が考案した「かんばん方式」が世界中で浸透している。同方式は十分な成果を上げているが、自社工場内での効率化が中心。また「かんばんを何枚・いつ出すか」や「かんばんの内容」を決めるには、ノウハウを持つ生産管理担当者が必要。かんばんの設定が甘いと、不要なモノを製造することもある。
I4・0では各生産ラインや工場からの情報がサーバーなどに集められ、“かんばんの内容”を新しいロジックを基にコンピューターが行い、自動的に指令を出すと想定される。少ない人員で効率的にJITを実現でき、「生産管理の品質など幅広い面を改善できる」(満岡専務)。
ただ、全てを実現するには、機械側が加工や段替え時間を短縮するなどの進化や、情報を共有するための標準化が不可欠。「最終形まで時間がかかるが、モノづくりを劇的に効率化する」(同)とにらみ、じっくり取り組む構えだ。
I4・0の最終ゴールまでには、情報を相互に共有するためのさまざまな仕様での標準化や、個々の製造装置やツールの進化、情報を収集・分析する仕組みづくりなど課題が山積している。膨大な時間もかかる。それでもドイツがI4・0に総力をあげて取り組む背景には製造業への強い危機感がある。生産量では新興国に明らかに負けていても、生産拠点として生き残らなければ、世界有数のモノづくり先進国というドイツの座もいずれは危うい。現場の近くから次代のアイデアが出ることは歴史も物語る。
ドイツの生産拠点を維持しつつ、次の製造装置をリードするためのモノづくり革新が、「コネクテッド=つながる」をキーワードとするI4・0だ。
ドイツはI4・0以前にも、国が主導権を持って官民学で巨大計画を実行してきた実績がある。そのドイツにとっても、I4・0で「自己の利益に固執していた業界団体や学会が仕様の共通化を真剣に考えるようになったことは革命的」(ティッセンクルップ・ジャパンのニコラス・ボルツェ社長)という。
一方、日本も長らく生産技術などで優位性を持ちつつも、足元では新興国の台頭に国内生産が窮地に陥っている状況は、ドイツと全く同じ。ボッシュの満岡専務は、「センサーやデバイスなど、日本の機器メーカーには力がある。日本でI4・0についてどう考えられているか市場調査し、日本の有望な技術をドイツと情報共有することも当社グループの中で重要な役割」と話す。日本のアイデア・ソリューションへの期待は大きい。
日本の技術が新たなモノづくりの中で活用されれば、製造設備メーカーなどはビジネスチャンスを広げる。ただ、I4・0をそれだけで終わらせるわけにはいかない。I4・0で各工場がバーチャルにつながり、サプライチェーンでのムダがなくなることは、小さな工場のハンデが減ることにつながる。つまり日本に数多い中小企業の競争環境が改善する可能性があるからだ。ドイツ発の新しいモノづくりにどう向き合うか、日本も真剣に考える必要がある。
ボッシュ(東京都渋谷区)の製造を統括する満岡隆一専務は、「個人的にJITへの効果を最も期待している」と話す。独ロバート・ボッシュは自動車部品や製造設備、センサーなどを事業展開し、I4・0では約50件のプロジェクトを進める。I4・0の中核企業だ。
現在、JITを実現するシステムとして、トヨタ自動車が考案した「かんばん方式」が世界中で浸透している。同方式は十分な成果を上げているが、自社工場内での効率化が中心。また「かんばんを何枚・いつ出すか」や「かんばんの内容」を決めるには、ノウハウを持つ生産管理担当者が必要。かんばんの設定が甘いと、不要なモノを製造することもある。
I4・0では各生産ラインや工場からの情報がサーバーなどに集められ、“かんばんの内容”を新しいロジックを基にコンピューターが行い、自動的に指令を出すと想定される。少ない人員で効率的にJITを実現でき、「生産管理の品質など幅広い面を改善できる」(満岡専務)。
ただ、全てを実現するには、機械側が加工や段替え時間を短縮するなどの進化や、情報を共有するための標準化が不可欠。「最終形まで時間がかかるが、モノづくりを劇的に効率化する」(同)とにらみ、じっくり取り組む構えだ。
I4・0の最終ゴールまでには、情報を相互に共有するためのさまざまな仕様での標準化や、個々の製造装置やツールの進化、情報を収集・分析する仕組みづくりなど課題が山積している。膨大な時間もかかる。それでもドイツがI4・0に総力をあげて取り組む背景には製造業への強い危機感がある。生産量では新興国に明らかに負けていても、生産拠点として生き残らなければ、世界有数のモノづくり先進国というドイツの座もいずれは危うい。現場の近くから次代のアイデアが出ることは歴史も物語る。
ドイツの生産拠点を維持しつつ、次の製造装置をリードするためのモノづくり革新が、「コネクテッド=つながる」をキーワードとするI4・0だ。
ドイツはI4・0以前にも、国が主導権を持って官民学で巨大計画を実行してきた実績がある。そのドイツにとっても、I4・0で「自己の利益に固執していた業界団体や学会が仕様の共通化を真剣に考えるようになったことは革命的」(ティッセンクルップ・ジャパンのニコラス・ボルツェ社長)という。
一方、日本も長らく生産技術などで優位性を持ちつつも、足元では新興国の台頭に国内生産が窮地に陥っている状況は、ドイツと全く同じ。ボッシュの満岡専務は、「センサーやデバイスなど、日本の機器メーカーには力がある。日本でI4・0についてどう考えられているか市場調査し、日本の有望な技術をドイツと情報共有することも当社グループの中で重要な役割」と話す。日本のアイデア・ソリューションへの期待は大きい。
日本の技術が新たなモノづくりの中で活用されれば、製造設備メーカーなどはビジネスチャンスを広げる。ただ、I4・0をそれだけで終わらせるわけにはいかない。I4・0で各工場がバーチャルにつながり、サプライチェーンでのムダがなくなることは、小さな工場のハンデが減ることにつながる。つまり日本に数多い中小企業の競争環境が改善する可能性があるからだ。ドイツ発の新しいモノづくりにどう向き合うか、日本も真剣に考える必要がある。
日刊工業新聞2014年10月9日深層断面の一部を抜粋