首位浮上の第一生命、国内勢は視界にあらず?
グローバルカンパニーへの野望
生命保険大手4社が海外事業を積極化している。長期的に人口の縮小が避けられない日本市場とは対照的に、アジアを中心に成長の余力の大きい海外市場を取り込み、収益構造を多角化する狙いがある。ただ、背景は同じでも実際の取り組みには4社間で徐々に差が生じてもいる。各社の海外戦略を追った。2回目は第一生命保険。
2020年に世界5位へ―。日本の大手生保の中で第一生命保険は海外戦略で先頭を走る。米国とアジア太平洋地区に基盤を築き、足元で利益に占める海外事業の割合は30%を超えた。15年度からは買収した米生保が損益面で連結化され、海外の貢献度合いはさらに高まる見通しだ。海外での拠点作りに急ぐ国内他生保を尻目に、常に一歩先をいく海外戦略を展開する。
【第2ステージ】
「グローバル戦略は第2ステージに入った」。渡辺光一郎社長が強調するように、15年度から海外戦略は新たなステージを迎えた。アジア太平洋で5カ国に進出し、2月には米プロテクティブ生命保険も傘下入り。日・米・アジア太平洋の3極体制が整った。今後はグループ間の連携を深め、成長をいかに加速させるかが問われる。この一環として16年には持ち株会社体制に移行し、各地区の事業会社が意思決定を迅速にできるよう、執行体制もグローバル経営に適した体制となる。
【ノウハウ共有】
足元でも連携によるシナジーを生み出すための取り組みに積極的だ。経営トップ層はもちろん、実務者レベルでもグループ各社の代表が集うミーテイングを年に複数回開く。ここでは商品開発や営業戦略など5分野にわたって、互いの好事例やノウハウなどを学び合う。
稲垣精二常務執行役員は「経営戦略でもあっと驚くことが多い。グループのメンバー同士で学び合うことはたくさんある」と会議の意義を強調する。
具体的な事例も生まれ始めている。販売戦略面では第一生命の国内子会社で銀行窓販を担う第一フロンティア生命保険が培った商品開発面のノウハウなどをアジアのグループ会社に水平展開。ベトナム子会社を通じ、現地大手銀行のホーチミン市住宅開発商業銀行と、銀行窓口における独占的な保険商品の販売で業務提携したのは実例の一つ。
逆に海外のグループ会社から、日本の第一生命がチャネル戦略などでノウハウを活用する構想もある。今後はグループ間の連携がより活発化することが期待される。
【先行者の真価】
今後も成長の機会は常に探している。米国ではプロテクテイブ生命を中心にドル建てでの買収を模索する。一方、成長性が期待されるアジアでは、必要に応じて既存出資先への追加出資も検討するという。
稲垣常務は「アジアは成長が著しいマーケット。逆に必要資本が増えていくぐらいの成長を期待している」とも話す。
バラ色に見える海外事業だが、第2ステージの戦略は始まったばかり。北米事業も、保険の本丸市場でどこまで収益を伸ばせるのかは未知数であり、北米進出を検討する日本の生保会社は同社の動向を注視している。
ただ、第一生命の海外事業への意欲は高く、5年後の20年にはグローバル生保で世界5位を目指す野心的な目標も掲げる。「当面やることはまずやった。今後はこのグループ力をどう生かすかに力点を置く」(稲垣常務)。
今後はいかに成長の果実を獲得できるか、先行者としての真価も問われる。
(次回は7月15日に公開予定)
日刊工業新聞2015年7月8日金融面