インダストリー4.0の標準規格、日本は出遅れ?

次世代モノづくりシステムの国際標準争い本格化-独米で“仕切る”構図

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独米で次世代モノづくりシステムの覇権争いが進む中、日本の製造業の対応が問われている
 次世代モノづくりシステムの覇権争いが海外で本格化している。ドイツが提唱する製造業強化戦略「インダストリー4・0」の国際標準化に向けた議論が2014年末に始まった。米国では民間主導で製造業へのIoT(モノのインターネット)技術導入が加速。両国はIoTが製造業の事業構造を「産業革命」並みに大転換させる潜在力に敏感だ。一方で、日本の動きは鈍い。モノづくり立国を掲げる以上、製造業の未来について自らの答えを早期に示さなければならない。
 
 国際電気標準会議(IEC)は14年11月にシンガポールで、インダストリー4・0標準化に向けた検討グループの初会合を開いた。日本代表として出席した横河電機IA―MK本部の小田信二テクノロジマーケティング室長は「まずはグループの位置づけを確認して、各国の状況を全員で話した」と会議の中身を明かす。今後はテレビ会議などを含めて2カ月に1回会合を設ける。16年までに方向性を決めて、実際の規格開発に移る計画。

 同グループの主査(コンビナ)はドイツと米国が務めている。それぞれの所属は独シーメンスと米ロックウェル・オートメーションだ。「ドイツは相当やる気で来ている。ドイツ主導で動いているのは間違いない」(小田室長)とし、両国が議論を仕切る構図で固まりつつある。

 ドイツは標準化を戦略上、最優先に据える。インダストリー4・0の最終目標は工場の完全自動化や、企業グループの垣根を越えたサプライチェーン全体でのデータ統合だ。そのためには産業機械同士の連携が不可欠であり、データ仕様や通信手順を統一しないとデータの統合管理も実現できない。だからこそ、標準規格開発を急いでいる。

 インダストリー4・0に詳しい富士通総研経済研究所のマルティン・シュルツ上席主任研究員はドイツの積極姿勢の背景に「米グーグルへの心配」を指摘。「特に自動車メーカーの心配は大きい。同社の自動運転技術により車もアンドロイドがプラットフォームになったら全ビジネスのコントロールが米国に握られてしまう」と説明する。

 ただ、ドイツ国内もこの新しい構想に一枚岩ではない。シュルツ上席主任研究員は「自動車メーカーと機械メーカーはほとんど(インダストリー4・0の)サポーターではない」と明かす。例えば、フォルクスワーゲン(VW)はすでに自前の生産システムを整備しており、ボッシュやシーメンスが提案する新システムに乗る気ではない模様。

 加えて、ドイツの機械業界は反対派の急先鋒(せんぽう)だ。シーメンスがフルターンキー(設計から試運転)で自動車工場などを手がけるようになれば、機械ごとの各種データも同社の管理下となる。「シーメンスがノウハウなどを盗んで自分たちだけでやる恐れがあり、中堅メーカーにとってはすごいリスクだ。グーグルはダメだけど、シーメンスもダメ」(同)というのが業界の本音だ。

 米国ではゼネラル・エレクトリック(GE)を中心に次世代モノづくりシステムの開発が進む。標準化を目的に企業連合を立ち上げたほか、全世界にある2万8000基の航空機エンジンと140万台の医療機器に計1000万個のセンサーを取り付けて毎日5000万件のデータを収集していると言われる。分析結果を保守に活用し、新製品開発にも生かす。

 日本は官民ともにまだ方針を固めていない。政府は今夏予定の日本再興戦略の再改定に、次世代モノづくりシステム構想を盛り込む方向で調整中だ。ただ、産業界は慎重な見方も少なくない。「インダストリー4・0は系列構造を破壊する方向へ働く。系列のないドイツだからできるが、日本では難しい」(関係者)との声もある。

 一方で例えば、特定の日系自動車メーカーと取引している中堅・中小企業などが独米社へ納入できるようになる利点がある。また、日系自動車メーカーにとっても海外の生産拠点で現地サプライヤーをより簡単に活用できる可能性も生まれる。

 政府や産業界に今問われているのは独インダストリー4・0の正否ではない。ドイツは製造業の未来についてすでに答えを出した。米国も先を行く。日本に求められるのは10年後、20年後を見据えた製造業の将来像だ。

日刊工業新聞2015年1月6日1面&2面

COMMENT

清水信彦
福山支局
支局長

日本人は国際標準化が苦手ですからね。FA関連業界はもっとどんどん加わっていかないとまずいんじゃないかと思います。

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