揺れる東芝「パソコン・テレビ」リストラの行方

懸念されるブランドイメージの低下

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就任以降、デジタル機器の構造改革が最重要命題の一つだった田中社長
 2年前の2013年6月に社長に就任した田中久雄氏。当時から最大の経営課題は、赤字が続くデジタル機器部門をテコ入れだった。調達部門が長かった田中社長も構造改革による止血に全力をあげるとしていた。

 パソコンは依然として売り上げ規模で約6000ー7000億円を誇る中核事業。もともと米IBMの「シンクパッド」のフォロワー(追随者)という伝統があり、企業向けに欠かせないセキュリティーなどの技術蓄積もある。コンシューマーに比べ収益性が数倍の企業向けにシフトし、成熟産業の中で差異化しながら生き残る戦略だった。

 テレビは国内メーカーの中でもシェアトップだった時期もあり、「レグザ」の映像技術も評価が高い。しかしテレビは放送を映す変換器としての価値しかなく、国ごとにカスタマイズが必要で世界中のメーカーで利益を出しているところはほとんどない。デジタル機器は画面サイズごとに一つの製品カテゴリーに収れんしつつあり、ソフトウエアによる機能更新でハードウエアの新陳代謝が起こりにくい。テレビは、すでに2年前の段階で海外市場の大幅縮小は避けて通れない状況だった。

 しかし、リストラは後手に回った印象が強い。今回の不適切な会計処理の調査対象にパソコンとテレビが含まれる。デジタル機器は「TOSHIBA」のブランドイメージをけん引してきた。かつてはDVDの規格争いでソニーなどの向こうを張って勝利したこともある。ただ東芝のデジタル機器事業はパソコンとテレビが大半を占め、製品ラインアップが少ない。それだけに一番の懸念は、ブランド毀損による販売への影響だろう。今年から追加のリストラに乗り出しているが、再度のテコ入れが必要になる可能性もある。

パソコン、個人向け大幅縮小「今回の構造改革で打つべき手は全てやり切った」


  東芝は18日、赤字体質の個人向けパソコン事業を大幅に縮小すると発表した。2014年度中に国内外でパソコン事業に関わる従業員の20%強にあたる900人を削減するほか、販売拠点を先進国に絞り込み、現状の32カ所から13カ所に減らす。固定費を13年度比で200億円以上削減する計画。パソコン事業では経営資源を法人向けに集中し、13年度に30%の法人向け売上高比率を、15年度に45%、16年度に50%以上に引き上げる。

 人員削減は製造部門を除いて国内で400人、海外で500人を計画する。国内の人員は成長事業の社会インフラ部門に配置転換する。同日会見した前田恵造専務は「今回の構造改革で打つべき手は全てやり切った。14年度中に完了して、15年度以降は個人向けでも安定的に黒字が出せる体質にする」と断言した。

 スマートフォンやタブレット端末(携帯型情報端末)の普及により、個人向けパソコンは市場が縮小している。価格競争も激化しており、東芝の個人向けパソコン事業も新興国中心に一部地域で採算性が悪化しており、リストラに踏み切る。

 一方、法人向けパソコンでは黒字を確保しており、売上高も「13年度以降、年率10%程度で伸びている」(前田専務)。国内POS業界首位の東芝テックなどグループ企業の販路活用を進めるほか、直販体制を強化するための投資も行う。将来、売上高経常利益率(ROS)5%以上を視野に入れる。

 個人向けの規模は縮小するが、完全撤退はしない。「法人向けでも価格競争力は大切。(個人向けも続けることで)調達面で規模のメリットが出せる」と説明した。ただ価格競争力では、販売規模が桁違いに大きい中国レノボや米ヒューレット・パッカードといった海外勢に劣る。また、国内外のパソコンメーカーが法人向け市場に活路を見いだしており、今後の競争激化は必至だ。
 
 今回の業績修正は事業面とは別の意味がある。東芝の田中久雄社長は5月の経営説明会で「一度提示した目標は変更しない」と明言し、2014年度にテレビとパソコンのビジネスを黒字にする考えを示していた。それにもかかわらず、両ビジネスを含むライフスタイル事業の赤字転落を決めた。トップの発言の真意を投資家がどう受け止めるのか不透明だ。

 無論、前向きな改革と見ることもできる。海外勢との価格競争やスマートフォンの普及が足かせになっており、そもそも同事業を海外で大きく成長させることは困難だった。早めに膿(うみ)を出すことで、全社の業績目標を堅持するという田中社長の意志も伝わってくる。短期的に出血しても実利を確実に創出すれば、市場の信認は後から付いてくるだろう。(2014年09月19日付)

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