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サーモモジュール、磁性流体、DCB基板…自動車市場を攻める“三本の矢”

フェローテック、半導体に続く2本目の柱へプロジェクト発足
サーモモジュール、磁性流体、DCB基板…自動車市場を攻める“三本の矢”

磁性流体

 フェローテックホールディングスは、半導体活況の波に乗り、1000億円体制に王手をかけている。グローバル企業の立ち位置を築いている同社が今、注目するのは変化めざましい自動車業界。半導体活況の波を生かしつつ、骨太の事業成長を図る。

1000億円体制に王手


 半導体業界の好況を受け、同社は2019年3月期売上高980億円、営業利益率10%を目標としている。半導体製造装置向け消耗材の石英・セラミックス製品やグローバルトップシェアの真空シールを含む半導体等装置関連事業は成長著しく、売り上げの60%程度を占める。また同社のコア製品である磁性流体やサーモモジュール、そして市場成長に応じた事業拡大を見込むパワー半導体用基板の電子デバイス事業は同社売上の13%程度だが、自動化生産を推進するなど、同セグメントとして高収益であり、今後中長期の成長ドライバーでもある。

 17年に中国の工場に約100億円を投じ、直径8インチ(200㍉メートル)の中口径ウエハーの設備を設置し7月に上海で生産を始めた。同社は6インチ以下の小口径ウエハーを手がけてきたが、8インチウエハーの生産販売体制を整えるため、中国の銀川工場(銀川市)の隣接地に結晶引き上げ専用工場を整備した。ウェハーの仕上げ加工工程を現在の上海に加え、杭州にも建設し、2020年中に月産45万枚体制の構築を目指す。また、同社は2001年に中国・上海で部品洗浄事業に参入。同国内のローカル事業として展開しており、中国国内で50ー60%のシェアを確保している。現在の上海、天津、四川、大連、4拠点体制から、新たに5拠点目となる安徽省新工場を建設(2018年度内に稼働開始予定)し、年間売上25億円程度(18年3月期)から2-3年での倍増を見込む。

自動車プロジェクト発足


 同社は自動車関連の売上高を現状の50億円から3-4年間で4倍の200億円に伸長させる目標を掲げ、2018年1月に「自動車プロジェクト」を発足した。プロジェクトのメンバーは営業、及びマーケティング部門で約30人規模となり、中国、台湾、韓国、シンガポール、マレーシア、米、独のグローバルな組織編成だ。

 自動車業界はEV(電気自動車)のほかPHV(プラグインハイブリッド車)、ADAS(自動運転システム)などの新技術を搭載した自動車の登場により、大きな市場変化が見込まれている。同社はEVの普及により、車載製品で同社製品の導入を進めたい方針だ。富士経済の調査によると、2035年に電気・ガソリン併用のPHV車を含め、EV市場は1000万台超に膨らむと予測。イギリス・フランスに加え、中国も新エネルギー車(NEV)導入を促進し、ガソリン車の抑制に動いている。

 同プロジェクトの中心となるのはサーモモジュール、磁性流体、パワー半導体用DCB基板の3製品。「サーモモジュール」はエアコンやドライヤーなど家電品、高級自動車の温調シートに使われている。今後、バッテリークーリングやヘッドアップディスプレー・レーザーレーダーなどの光源の冷却用途で導入が進む可能性がある。
サーモモジュール

 車載用スピーカーコイルの放熱、タッチパネル用の触感デバイス制御などに使われる「磁性流体」も見逃せない。同素材は外部磁場によって磁性を帯び、磁石に吸い寄せられる機能性素材だ。今後は自動車向けに磁場の作用で粘性が大幅に増加する振動制御用新磁性流体を使用したサスペンション、磁性コア材料を使った高精度直流測定センサの導入を目指す。

 「パワー半導体用DCB基板」はアルミナや窒化アルミニウムなどのセラミックス基板に銅版を直接接合し、銅回路を形成した電子部品だ。ヘッドランプやルームランプ制御を行うボディーやエンジン向けなどに導入を見込む。

教育体制の強化


 昨今、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の分野に取り組む企業を重視したESG投資も時代のトレンドになっている。同社も財務情報のみならず、この非財務情報であるESGに対しても積極的な姿勢だ。同社では本年度から山村章社長と同社グループの入社5年以内の社員で、コミュニケーションを持つ場を月1回設けるなど、同社独自の風通しの良い企業文化を背景とした新しい試みは尽きない。今後は海外交渉もできる人材育成も必要と考えており、管理統括担当の山村丈副社長は若手・中堅サポートに注力していく方針を立てる。英語教育も本格化していく構えだ。「魅力的な企業にしていくために、人材育成のプログラムを実行していきたい」(山村副社長)。
管理統括担当の山村丈副社長

 人、機械、技術が国境を越えてつながる「コネクテッド・インダストリーズ」が提唱される中、同社は国内外で着実に成長を加速していく。


日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
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