エレベーターのメンテ現場、AI活用で「緊急事態」減らせ!
デジタル端末使い作業効率化も
エレベーターのメンテナンス現場で「働き方改革」が進んでいる。故障が起きれば人命にも関わりかねないため、時間を問わず顧客対応が求められてきた。各社はデジタル端末の有効利用で作業効率化を後押ししたり、人工知能(AI)の活用で「緊急事態」を減らしたりしようと躍起になっている。(栗下直也)
「平均すると導入前に10分かかっていた報告書の作成が導入後に5分程度になった」。東芝エレベータの古屋秀樹フィールドサービス部保守管理担当グループ長は「声」の成果を語る。
同社では2015年8月にスマートフォンに点検内容などを音声で吹き込むと、自動で文字変換され、作業点検報告書を作成できるようにした。それまで手入力していたが、メンテナンスしながら、つぶやくだけで報告書が完成する。
作業員の負担を減らせると同時に、声で入力できるようになったことで細かい点検内容や顧客のニーズなども漏らさず記録できるようになったという。吉井謙二営業推進担当グループ長は「保守現場の情報をすぐに共有できるので、お客さんに時間を置かずにアプローチできる」と指摘する。
今後も「声」の利用を拡大する。例えば、部品の在庫の確認などを想定する。「今は型番や細かい仕様の入力が必要だが、スマホでシステムとの音声応答で保守員が必要な部品を特定し、情報を入手できるようにしたい」(古屋グループ長)。
「フィールドエンジニア(保守員)のストレスを減らせたら」。三菱電機ビルテクノサービスの芹澤研二技術開発本部保守技術開発部長はこう願う。
エレベーター各社は故障の件数を開示していないが、エレベーターの故障件数は劇的に減少しているというのが各社の一致した見方だ。ただ、いかに保守を徹底しても、故障をゼロにはできない。故障対応は昼夜を問わないため、作業員によっては、肉体的・精神的負担も生じる。
国内のエレベーター業界ではオンラインで遠隔制御する取り組みを約20年前から始めている。地震などの緊急時に停止した際には保守員が駆けつけなくても、エレべーターが自動診断して復旧できる体制も整えている。三菱電機ではここから一歩踏み込もうとしている。
「修理の必要性はあっても、夜中に駆けつけるほどではない、緊急性を必要としない場合もある。そうした場合に、自動運転できるような仕組みをつくっていきたい」(芹澤保守技術開発部長)。
不急でない場合は、自動運転して、翌日に現場に向かえば、生産性は改善し、作業員の負担も減る。
実現のために同社が推進するのがAIの活用だ。オンラインでつながる国内の15万台以上のエレベーター情報を有効に利用して、どのような状況ならば稼働できるのかといった分析に生かす。
故障そのものを未然に防ぐ取り組みも広がる。エレベーターを制御する機器などに設置したセンサーから、情報を収集。定期点検前に故障が発生する可能性がわかった場合、定期点検を前倒ししたり、部品を交換したりする。いかに故障につながる事例を積み上げ、正しく分析できるかが課題になる。
「我々は世界に約200万台のエレベーターを持っている」。日本オーチス・エレベータのギヨーム・ルノー社長は自社の強みを語る。世界最大のエレベーターメーカーの規模を生かして、予測を精緻化している。すでに海外では一部で導入しており、日本での提供も検討中だ。
「声」の成果
「平均すると導入前に10分かかっていた報告書の作成が導入後に5分程度になった」。東芝エレベータの古屋秀樹フィールドサービス部保守管理担当グループ長は「声」の成果を語る。
同社では2015年8月にスマートフォンに点検内容などを音声で吹き込むと、自動で文字変換され、作業点検報告書を作成できるようにした。それまで手入力していたが、メンテナンスしながら、つぶやくだけで報告書が完成する。
ニーズ漏らさず
作業員の負担を減らせると同時に、声で入力できるようになったことで細かい点検内容や顧客のニーズなども漏らさず記録できるようになったという。吉井謙二営業推進担当グループ長は「保守現場の情報をすぐに共有できるので、お客さんに時間を置かずにアプローチできる」と指摘する。
今後も「声」の利用を拡大する。例えば、部品の在庫の確認などを想定する。「今は型番や細かい仕様の入力が必要だが、スマホでシステムとの音声応答で保守員が必要な部品を特定し、情報を入手できるようにしたい」(古屋グループ長)。
オンラインで情報収集
「フィールドエンジニア(保守員)のストレスを減らせたら」。三菱電機ビルテクノサービスの芹澤研二技術開発本部保守技術開発部長はこう願う。
エレベーター各社は故障の件数を開示していないが、エレベーターの故障件数は劇的に減少しているというのが各社の一致した見方だ。ただ、いかに保守を徹底しても、故障をゼロにはできない。故障対応は昼夜を問わないため、作業員によっては、肉体的・精神的負担も生じる。
国内のエレベーター業界ではオンラインで遠隔制御する取り組みを約20年前から始めている。地震などの緊急時に停止した際には保守員が駆けつけなくても、エレべーターが自動診断して復旧できる体制も整えている。三菱電機ではここから一歩踏み込もうとしている。
緊急性
「修理の必要性はあっても、夜中に駆けつけるほどではない、緊急性を必要としない場合もある。そうした場合に、自動運転できるような仕組みをつくっていきたい」(芹澤保守技術開発部長)。
不急でない場合は、自動運転して、翌日に現場に向かえば、生産性は改善し、作業員の負担も減る。
実現のために同社が推進するのがAIの活用だ。オンラインでつながる国内の15万台以上のエレベーター情報を有効に利用して、どのような状況ならば稼働できるのかといった分析に生かす。
故障そのものを未然に防ぐ取り組みも広がる。エレベーターを制御する機器などに設置したセンサーから、情報を収集。定期点検前に故障が発生する可能性がわかった場合、定期点検を前倒ししたり、部品を交換したりする。いかに故障につながる事例を積み上げ、正しく分析できるかが課題になる。
予測を精緻化
「我々は世界に約200万台のエレベーターを持っている」。日本オーチス・エレベータのギヨーム・ルノー社長は自社の強みを語る。世界最大のエレベーターメーカーの規模を生かして、予測を精緻化している。すでに海外では一部で導入しており、日本での提供も検討中だ。
日刊工業新聞2018年5月2日