「人工知能を語り尽くそう!」儲かる?倫理は?説明責任が発生?(前編)

元Google・村上、東大・松尾、ドワンゴ・山川、IGPI・塩野、Preferred ・西川による刺激的な討論会

 <モデレーター>
 ●東京大学大学院工学系研究科准教授 松尾豊氏
 <パネリスト>
 ●エナリス社長(元グーグル米国本社副社長兼日本法人社長) 村上憲郎氏
 ●ドワンゴ人工知能研究所所長 山川宏氏
 ●経営共創基盤(IGPI)取締役マネージングディレクター、塩野誠氏
 ●Preferred Networks社長兼最高経営責任者 西川徹氏



イノベーションが起こるのは製造業、交通システム、ライフサイエンスから


 松尾 まず、今後どういう産業において、AI(人工知能)とかIoT(モノのインターネット)が重要になってくるかうかがいたい。

 山川 人間ができることがだんだんAIでできるようになってくる。そのような状況で、より人間的なものに特化した産業が広がってくると思う。例えば、将棋をずっと研究してきて、ドワンゴの電王戦で人間とAIが戦うことをやってきた。いろいろな能力がAIに凌駕されていく中で、AIでもできるが、あえて人間がやることで価値を発揮する職業がある。

 例えば、教育でも単に講義をすることより、コースを組み立てたり、人と触れ合って共感したりという仕事が増えてくると思う。ドワンゴの人工知能研究所は昨年10月に発足して、長期の人工知能の目標として、15年後以上先に人間レベルの人工知能を実現する目標を掲げている。そのために(村上さんの基調講演で)汎用的なバトラーの話もあったが、家庭で非常に雑多なことができる、単機能でなくいろいろなことができるAIを目指している。神経科学、脳科学の知見を使いながら、人間並みの柔軟な知能をもった「知能」を生み出す。

 自分が主たる事業者か武器を提供する側かをしっかり考える

 塩野 私は普段、経営コンサルティングをしている。経営者からは、「AI、ビッグデータといった話を聞くが、本当にもうかるのか?」とよく聞かれる。AIのアルゴリズムは汎用的なので、いろいろなことに使うことが可能になる。それがありとあらゆるものに適用されそうな雰囲気をつくっているが、ビジネスの側面では、どの産業のどのバリューチェーンで使ったら一番付加価値が出るかを冷静にみるべきだ。

 また、自らがAI、IoTの主たる事業者となるのか、そうではなく「それで稼ごう」という人たちにある種の武器を提供する側に立つのか、を考えたほうがよい。そこがゴチャゴチャになっていて、今はインターネット黎明期の雰囲気を漂わせているのではないか。

 西川 大学院1年生の時に会社を設立し、検索技術やビッグデータ技術の研究開発を行っていたが、昨年新しい会社をスピンオフした。今までは、「人が生み出すデータ」を扱ってきたが、IoTの急速な普及で、「機械が生み出すデータ」をいかに処理するかが重要になる。そこにフォーカスし、デバイス、機械から生まれる大量のデータを人工知能のテクノロジーで活用しようと。

 今後、IoTやAIでイノベーションが起きるのは製造業。あとは交通システムと自動車、ライフサイエンスの分野ではないか。製造業に関しては、インダストリー 4.0というドイツを中心にデータの活用で効率化する流れがある。もっと大きなイノベーションを起こせるはず。インダストリー 4.0ではロボットをインテリジェントにすることには目が向いてなく、センシングされたデータ処理にフォーカスされている。

 我々は、AIをロボット制御そのもの、最適化そのものに使っていくべきと考えている。協調し合うロボットで、生産効率を10倍にも 100倍にもするような仕組みをつくっていけると思う。もう1つは自動車の分野。自動運転をはじめとして、人がドライビングしていた状況から、大量のセンサーデータを人工知能が同時に処理して、人よりも安全な運転、交通システムを実現することができると思う。人工知能は、特にこの2つの分野でかなり近いタイムスケールでイノベーションを起こしていくはずだ。

 並列性を極限まで高めれば複数の産業用ロボットが協調し始める

 松尾 やはりどこが一番もうかるのか?ということに興味がある。一方、製造業の生産性向上は、具体的にどういう仕組みだろうか。

 西川 今、実際にモノをつくるのは、基本的には人がつくるか、産業用ロボットがつくるかだ。産業用ロボットを制御するプログラムは、今は人が書いている。なので、複数のロボットが協調して何かモノをつくるときには、人がわかりやすい形でプログラムを書いてあげないと、到底制御し切れない。シーケンス制御にしても、人がある程度、工程をシリアライズしてプログラムを書かなければならないが、並列性を極限まで高めれば、オーバーラップしてロボットが動作できる。人ではルールは書けないが、機械であれば、その複雑なルールまで構築し得るのではないか。そうすると並列性が10倍にでも100倍にでも上げられる。

 塩野 製造業でいうとマシンラーニングを使えばより効率化されるが、他にも例えば、自動運転でいうと、車間距離をもっと縮められる。道路という有限の資産に対して、車間距離を取り過ぎるという問題があり、ロボットが運転したらもっと車間距離が縮められ、もっと早く目的地に着ける。

 松尾 何で渋滞は起こるのか?前の車が出た瞬間0.0秒でアクセルを同様に踏めばよい、車間距離ゼロにすればよい、といった議論を以前にしたことがある。

 高速道路では全車両が連結し渋滞がなくなる

 村上 自動車については2つ論点がある。1つは将来、自動車は個人所有というより、シェアされるのではないかということ。いつか「えっ、みんなが1台ずつ買ってたの?」という時代がくるる。もう1つ。車間距離ゼロは、一般道路は無理だと思うが高速道路に乗ったら全ての車両は連結して、出口のところで切り離されて外に出ていくようになるのではないか。米国での自動運転の議論も、今はまだ保険会社や各州のライセンスといった規制当局とのせめぎ合いが主要なテーマで、もっと進んだ破壊的な議論にまでには至ってない。

 松尾 いつでも自分の好きなときに使えることが、今まで所有の一番のメリットだった。マッチングのシステムがよくなっていつでも使えるとなると、わざわざ所有する必要はなくなる。今の自動車の話でも、製造業の並列化の話でも、人間が理解できなくても効率的に動く方向に進んでいく気がする。それに対して人間は基本的に1個のことしかできない。


<シンポジウム基調講演>元グーグル副社長・村上憲郎氏から見た「Googleが考える近未来」

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明 豊

明 豊
07月09日
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説明責任の話は非常に興味深い。倫理の部分も宗教によってかなり変わってくる。宗教なども超越した世界が生まれるのだろうか。米国の手で。

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