クールビズの思わぬ被害者?

ネクタイ産業の悲哀

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現在では、すっかり定着した感のある「クールビズ」。夏になれば、今やほとんどのビジネスマンがノーネクタイだが、それ以外の季節にノーネクタイ姿を目にすることも決して珍しいことではない。こうした時流の影響を受けているのが「ネクタイ業界」である。

昨年12月に東京地裁へ自己破産を申請した晴画堂も、ネクタイの卸が主力事業。同社は大手紳士服小売りと取引をしていたネクタイ業者の事業を引き継ぐ形で2000年に設立。安定した販路に恵まれ事業を展開してきたが、クールビズの影響は避けられなかった。

帝国データバンクが06年6月に実施した「クールビズに対する企業の動向調査」では、全体の32・3%がクールビズを導入していた。一気に浸透するきっかけとなったのが11年3月の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故。夏季の電力不足に伴う節電意識の高まりから注目が高まった。12年6月に実施した「夏季の電力使用量削減に対する企業の意識調査」によると、クールビズを実施している割合は75・1%に上昇。震災後にクールビズがかなり浸透した。

その間の晴画堂の売上高を比較すると、07年2月期は約7億1200万円。これに対し13年2月期は約5億3400万円に減少。クールビズが浸透した間、2億円近くの減収を余儀なくされた。これに伴い借り入れも増加していった。

追い打ちをかけたのが急激に進行した円安。ネクタイは中国工場で製造し輸入していたため、収益を直撃した。ある業界関係者は「百貨店など高価格帯のゾーンは底を打った感はあるが、量販向けは引き続き厳しい」と語る。ネクタイに限らず、ほかのアパレル関連も同様だが、個人消費が盛り上がりを欠くなか、量販店向けに販売している企業は価格転嫁で頭を悩ませている。

最終的に、売り上げのほとんどを依存していた大手紳士服小売業者から取引停止を通告され万事休す。今年1月5日に破産手続きの開始決定を受けた。特定の商材、特定の大口得意先に依存した経営では、ひとつの状況変化が命取りとなる。晴画堂の破綻はそのリスクを如実に物語っている。
 (帝国データバンク情報部)

 (株)晴画堂
 住  所:東京都墨田区緑1の22の5
 代  表:保坂 清次氏
 資本金:1200万円
 年売上高:5億8100万円
 (14年2月期)
 負  債:約3億7200万円

2015年 3月10日 倒産学(407)

COMMENT

栗下直也
デジタルメディア局
編集委員

「クールビズ、楽で最高!」と思っていたけれども、追い風になる業界もあれば、打撃を受ける業界も当然ありますね。まあ、日本人の勤め人の大半がネクタイしていた世界が少し変わっていたのかもしれませんが。

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