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4人の実力派アナリストから見た「ギリシャ」の焦点

 ニッセイ基礎研究所・専務理事 櫨(はじ)浩一氏 「混乱続けば南欧に波及」
 今回の投票結果は予想外に反対が多かった印象だ。反対という民意を盾に交渉に臨むギリシャと、欧州連合(EU)の交渉は非常に難しくなる。EU側に大幅な譲歩の余地を期待するのは難しく、足踏み状態になっていくだろう。あまり混乱が続くと南欧地域にも波及しかねない。

 ギリシャ側がEUを離脱する可能性は以前よりは高まったといえるが、お互いにEU離脱を望んではいない。交渉を通じ、ギリシャ国民が緊縮財政の必要性に理解を示す方向に動かせるかがポイントになる。マーケットは株安が一気に進んだが、円相場は予想よりは落ち着いている。ただ、ニューヨークやヨーロッパ市場の動向次第で円相場も揺れ動くだろう。(写真=下段)

 日本総合研究所・理事 藤井英彦氏 「世界が危機に対応済み」
 財政緊縮策への反対派が勝ったのは多くの人の予想通りで、特にサプライズではない。今後は時間をかけて、ギリシャと欧州連合(EU)とで妥協点を探していくことになる。ギリシャは交渉力が強くなった。ユーロ圏離脱を交渉に利用するかもしれないが、出て行くつもりはない。EUもギリシャの言い分を認めたら他国にも同様の動きが広がるため、すぐには受け入れられないが、支援を打ち切るつもりはない。不透明な中で事態は長引いていくのだろう。

 しばらくマーケットはギリシャを材料に動くだろう。ただ、皆が既にギリシャ危機には対応済みだ。不測の事態の発生リスクは小さく、世界経済や日本経済に大きな影響を与えることはないとみている。(写真=左)

 みずほ信託銀行・チーフストラテジスト 荻原健氏 「『想定外』中国もリスク」
 国民投票の結果は想定外だった。ギリシャのユーロ離脱が現実のものになってきた。ただ、欧州中央銀行(ECB)も緊急流動性支援(ELA)を即時打ち切るわけではない。欧州周辺国も影響を事前に織り込んでいたため、経済活動は比較的通常に推移している。20日のECB保有の国債償還が焦点だが、直近では7日のユーロ圏首脳会議、ギリシャ政府が日本の投資家向けに発行したサムライ債(円建て外債)の償還が市場の関心だ。

 日本経済への直接的な影響は少ないが、マーケットを通して波及する。中国の上海株も下落し、投資家にはギリシャと中国がリスク。ただ、中国はなりふり構わず策を打っている。時間はかかるが、反転するだろう。米国の利上げ時期は12月と見ている。(写真=上段中央)

 大和総研・シニアエコノミスト 山崎加津子氏 「双方とも『離脱』望まず」
 ギリシャ政府は投票に際し「投票は欧州連合(EU)の緊縮策に対する賛否を問うもの。どちらにしてもギリシャはユーロ圏にとどまる」と説明していた。一方野党や財界は「実質的にユーロ圏に残るか出るかを問う選挙」とアピールしたが浸透しなかった。

 ギリシャは失業率も高く、特に若者の失業が深刻化している。彼らは親や祖父母の年金を頼りにしており、年金削減などをうたう緊縮案は受け入れがたかった。今回の国民投票の背景には、自国のリーダーを信頼したいという国民の切実な気持ちが表れている。ギリシャとEUの交渉がどう進むかは見通せない部分も多いが、双方とも「ギリシャのユーロ圏離脱」を望んではいない。問題を回避するため交渉進展を期待する人は多い。 (写真=上段右)
日刊工業新聞2015年07月07日深層断面から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
経済問題というよりは完全に政治も問題に。

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