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屋根で水素製造。パナソニックが開発に名乗り

東芝は水素サプライチェーン構築の実証を開始
屋根で水素製造。パナソニックが開発に名乗り

開発する水素製造装置を屋根に設置したイメージ

 パナソニックは家庭でも太陽光と水があれば無尽蔵に水素を作り出せる装置の開発を始めた。屋根の上で水素を製造し、燃料電池で発電ができるという。実用化の時期は未定だが、水素を低コストに生成できる光触媒技術に目星をつけた。東芝などに続きパナソニックも名乗りを上げたことで水素製造装置の開発競争が始まりそうだ。
 
 パナソニックが開発する技術は光触媒を入れた装置に水を満たし、太陽光を照射して水素を作り出す。光触媒は光を受けると汚れを分解する酸化作用が生まれる性質があり、外壁のコーティング材などで使われている。新しい装置は太陽光を受けた光触媒の働きで水を水素と酸素に分離。水素を燃料電池に送ると電力とお湯を作れる。

 現状の家庭用燃料電池「エネファーム」はガスを改質して製造した水素が燃料。パナソニックの新装置は化石資源のガスを使わないため、二酸化炭素(CO2)の発生がない“カーボンフリー”な水素を供給できる。

 実用化への技術課題が光触媒だ。実用化されている酸化チタン系光触媒は光の波長の7%しか利用できていない。パナソニックが本命と考えるニオブ系光触媒は57%の利用可能といい、装置の小型化による低コスト化が期待できるという。

 すでに東芝などが電気分解で水から水素を生成する装置を製品化している。太陽光パネルで作った電力で電気分解装置を稼働させるため、パナソニックと同様に水素もカーボンフリーで製造できる。
 燃料電池は低コスト化が普及を後押しし、市場全体の導入は累計10万台を突破した。水素製造でも開発メーカーが増えれば低コスト化が進み、早期に普及の段階に入る可能性がある。

 パナソニックは製造・貯蔵・発電までの“水素バリューチェーン”全製品の品ぞろえを目指す。「発電」では家庭用燃料電池を販売している。20年をめどに水素を直接、燃料にする純水素燃料電池を製品化する予定だ。
 水と太陽光からの水素製造装置は20年以降の実用化を目指す。貯蔵技術の開発にも着手しているという。宮部義幸専務は「燃料電池で実績があり、コストダウンの技術は山ほどある」と自信をみせた。

日刊工業新聞2015年07月06日 総合3面


東芝、水素の製造・運搬・利用を北海道・釧路で実証−19年度まで


 東芝は北海道釧路地区で、水素のサプライチェーンを構築・運用する実証実験を始める。水素の製造から運搬、利用までできる環境を整える。運用状況を調査し結果を水素関連事業に生かす。期間は2019年度までの5年間。同実証実験は環境省に採択された事業で、釧路市と白糠町との連携で進める。白糠町にあるダムに出力220キロワットの小水力発電所をつくり、発電した電力を活用して水素を製造する。水素はトレーラーで地元の酪農家やプールなどの施設に運搬し、燃料電池や燃料電池車(FCV)の燃料として使う。
 東芝は水素関連事業を強化しており、4月には府中事業所(東京都府中市)内に水素エネルギー研究開発センターを設置した。20年度に同事業で売上高1000億円を目指す目標を掲げている。同社によると小水力発電の電力を使った水素製造は業界初という。

日刊工業新聞2015年07月06日 電機・電子部品・情報・通信面
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
たまたま同じに3日、パナソニックと東芝からそれぞれ水素関連の発表がありました。 NEDOも3月31日に光触媒の働きで水から水素を取り出す技術を発表しています。NEDOの場合は人工光合成の開発テーマの一つとして研究しており、水素を二酸化炭素と反応させてプラスチック原料をつくるのが目標です。

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