ニュースイッチ

コニカミノルタ、30年までにバングラデシュに「健康診断」根付かせる

「SDGs」を事業戦略に組み込む企業が増加中
コニカミノルタ、30年までにバングラデシュに「健康診断」根付かせる

農村に持ち運び、撮影する小型X線機器

 国連が掲げる2030年の世界共通目標「持続可能な開発目標」(SDGs)を事業戦略に組み込む日本企業が増えてきた。国連は本業の力で目標達成に貢献するよう企業に求めている。社会・環境・経済のあらゆる課題を網羅したSDGsには新事業のヒントが示され、将来の市場を映しだしている。持続的な成長を目指す企業にとってSDGsが羅針盤となる。

“壮大な目標”


 コニカミノルタは30年までにバングラデシュに「健康診断制度」を根付かせる“壮大な目標”を描く。現地の医療課題解決と、新規事業創出との両立を目指した取り組みで、17年度は国際協力機構(JICA)の「SDGsビジネス」調査に採択された。

 同国の医療課題が地域格差。都市部の病院では医療機器が整いつつあっても、農村は普及率が低い。X線機器は住民100万人に1台という状況だ。コニカミノルタの丸山則治X線システムグループマネージャーは「画像を読む医師は都会にしかいない」と、医師不足を原因に挙げる。

 食生活や運動不足などが招く生活習慣病の急増も課題だ。予防には定期的な健康診断が有効だが、地域格差や医師不足があって実施率が極めて低い。

 そこでコニカミノルタは、地方の診療所でX線撮影した画像データを都市の医師に送信し、遠隔診断する事業を立案。16年度は経済産業省の事業として、小型X線機器を農村部に持ち込み、2300人を遠隔健診した。

AI精度確認


 17年度は情報通信技術(ICT)活用による安価な医療サービス提供を目指すベンチャー企業「miup」と連携する。X線や超音波機器による健診データをmiupの人工知能(AI)やコニカミノルタの解析技術で診断する。

 最大1万人の住民が参加する大規模な実証事業を展開し、AIなどによる診断の精度を確認する。成果が得られれば、AIなどでリスク判定が出た人が医師に受診する遠隔健診サービスの事業化を目指す。

健康と福祉


 SDGsは目標3に「すべての人に健康と福祉を」と掲げ、達成手段として「30年までに(生活習慣病のような)非感染性疾患による若年死亡率を3分の1減少させる」と定量目標を定めた。

 バングラデシュで計画する事業と一致する。現状ではコニカミノルタにとって健診サービス料よりも医療機器1台の売上高が大きい。それが30年、同国に健康診断が普及し、年1000万人が遠隔健診を利用するようになると、サービス料は大きな事業基盤になる。丸山マネージャーは「今、医療は先進国が市場だが、将来を考えると途上国にも経営資源を配分する価値がある」と話す。

 同社は中長期戦略の重要課題として「ソーシャルイノベーション」を掲げる。CSR推進グループの御給佳織リーダーは「社会課題と自分たちのビジネスを突き合わせ、社会も会社も成長する構造をつくりたい」と語る。そして「SDGsは壮大だが、『課題はここにある』と言ってくれている。いい道しるべ」と分析する。

 バングラデシュの事例のような将来を見すえた社会課題解決型事業の創出を期待する。
日刊工業新聞2017年10月24日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
「30年なんて」「世界目標なんて」って声が聞かれます。逆に「壮大だから面白い」と言う人もいます。東レの炭素繊維は1兆円のバッグオーダーが入るまで半世紀かかりました。太陽電池だって発明から半世紀してようやくビジネスになりました。将来のビジネスを考えるが、イノベーションを生んでいます。

編集部のおすすめ