『プロ野球 最強の助っ人論』~栗下直也のビジネスに効くかもしれない新刊

なぜヤクルトの助っ人は「アタリ」が多いのか(講談社新書)

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左がヤクルトのロマン投手
 「彼はウォーニング・トラック・フライ・ボール・ヒッターか?」。

 長年、日本のプロ野球で外国人のスカウトに携わってきた著者はメジャーリーグやマイナーリーグの視察でまずこう質問するという。メジャーでは打球が外野のフェンス直前で失速するフライのことを「ウォーニング・トラック・フライ」と呼ぶ。つまり、「ウォーニング・トラック・フライ・ボール・ヒッター」とは、フェンス際まで打球を飛ばせる力はあるが、オーバーフェンスには少し足りないバッターを揶揄する表現だ。

 フェンスを越えないバッターになぜ注目するのか。

 メジャーの球場は日本に比べて広い。ピッチャーが投げる球も時速145キロメートル前後の日本に比べて、2メートル前後の大男が160キロメートルの球を投げ込んでくる。球質も重い。環境差を考えれば、米国では「ウォーニング・トラック・フライ・ボール」を連発している打者でも日本では、スタンドに届くのではないか。

 著者の仮説を証明したのが、外国人としては日本球界初の2000本安打を達成したアレックス・ラミレス(ヤクルト→巨人→DeNA)であり、本塁打王に二度輝いたロベルト・ペタジーニ(ヤクルト→巨人→ソフトバンク)である。

 本書は東京ヤクルトスワローズで長年スカウトを務めてきた著者が選手獲得のノウハウの極意を選手とのエピソードを交えながら紹介している。パワーは十分か、メンタルに問題ないか、細かな判断基準を用いて、日本で通用する選手、しない選手を見極めていることがわかる。

 素人からすれば、「ウォーニング・トラック・フライ・ボール・ヒッターがこれだけ活躍するのならばフェンスを越えるバッターを呼んでくれば、大成功するのでは」と考えてしまうが、それが間違いであることは歴史が証明している。古くはデーブ・ジョンソン(元巨人)から最近ではケビン・ユーキリス(元楽天)まで、メジャーでの実績は十分ながらも期待外れに終わった助っ人は少なくない。

 ハングリーさの有無やメジャーリーガーならではのプライドの高さが活躍を邪魔するだけでなく、バッティングスタイルの影響も我々が思うよりも大きい。98年にシーズン70本を放ち世界記録を更新したマグワイヤはボールを叩く位置の問題から、日本で通用しないというのはスカウトの間では定説だったという。

 考えてみれば、海を渡った日本人選手も前評判通りの活躍をした者もいれば、期待はずれに終わった者もいる。誰もが予想しなかった活躍をした選手もいる。環境が変わったことで、自らのスキルが違う形で活きることは少なくない。

 野球選手だけではない。4月は新生活の季節。異動を迎えた方も少なくないはず。慣れない職場でも環境適応を心がければ、あなたの意外なスキルが光り、職場の「助っ人」になれる日は遠くはないかもしれない。

<書籍紹介> 「プロ野球 最強の助っ人論」(著者=中島国章)
●発売日2015年03月18日
●定価 本体740円(税別)
●主な内容 
なぜヤクルトの外国人選手は「アタリ」が多いのか?「成功する選手」と「ダメ外国人」を分ける18の判断基準とは?ホーナー、ラミレス、ペタジーニなどを日本に連れてきた敏腕国際スカウトが明かす「驚異の人材発掘力」の秘密。(講談社BOOK倶楽部ページより)

ニュースイッチオリジナル

COMMENT

栗下直也
デジタルメディア局
編集委員

マグワイヤは日本では通用しない?やけに「アタリ」が多いことで知られるヤクルトスワローズの元スカウトが外国人獲得のノウハウを公開。人材の有効活用のヒントが詰まっている一冊です。

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