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タイで紙おむつ用繊維を増産する旭化成せんい。主原料の供給に課題?

「ロイカ」の強みであるグループ内原料一貫体制を保つことはできるか
タイで紙おむつ用繊維を増産する旭化成せんい。主原料の供給に課題?

紙おむつ向けの需要が伸びているロイカの原糸

  旭化成せんいは紙おむつの伸縮部(ギャザー)などに使うポリウレタン弾性繊維「ロイカ」をタイで増産する。現地子会社のタイ旭化成スパンデックス(チョンブリ県)にある生産ラインを増設し、生産能力を5割高める。投資額は数十億円。所得水準の向上で紙おむつ市場が拡大している東南アジアの需要増を取り込む。
 
 ロイカはしなやかな伸びと回復性に優れ、女性用肌着やストッキングの材料にも使われている。滋賀県守山市のほか、タイ、台湾、中国、ドイツで生産しており、2004年に稼働したタイ拠点はアジア向けの基幹工場に位置づけていた。

 年産能力は非公表だが、増設後に1万トン程度になるとみられる。増設設備は16年9月までに稼働し、タイの紙おむつ工場に供給する。

 旭化成せんいは紙おむつのバックシートなどに使うポリプロピレン製スパンボンド不織布もタイでの増産を決めている。チョンブリ県にある現地子会社の旭化成スパンボンド(タイ)に約50億円を投じて生産設備を増設し、年産能力4万トンと従来比で倍増させる。増設設備は11月に稼働する計画だ。

 中国や東南アジアでは日系紙おむつメーカーの生産拡大が続いている。大王製紙は中国とタイのベビー用紙おむつ工場で能力を増強し、インドネシアでも12月の完成を目指して工場を建設中。王子ホールディングス(HD)は、マレーシアで紙おむつ工場を11月に稼働する計画。インドネシアでも現地メーカーと紙おむつの製造・販売事業を行うことを決めている。これらを受け、紙おむつ材料を提供する化学各社の生産増強も続きそうだ。
日刊工業新聞2015年07月06日 素材・ヘルスケア・環境面
峯岸研一
峯岸研一 Minegishi Kenichi フリーランス
旭化成せんいの「ロイカ」強みはグループ内で原料一貫を基本にしていることだ。主原料のPTMGを、日本の守山工場と台湾プラスチックとの合弁会社である台塑旭弾性繊維で生産、欧州を除いた日本、台湾、中国、そしてタイの「ロイカ」生産工場へ供給している。 ただ、今回の増設によってPTMGの供給力に余裕が無くなることが予想される。「ロイカ」は自社で生産を拡大しているオムツ向けポリプロピレン・スパンボンドとの連携を強化しているだけに、今後の「ロイカ」の拡大にとってPTMGの供給力強化が課題になる。「ロイカ」とともにPTMGの動向から目を離せない。

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