「社員の発明、企業のもの」−特許法改正で発明への意欲はそがれないか?

対価の支払いを社内規定などで約束した場合に限定

去年のノーベル賞受賞時に日亜に感謝の意を表した中村修二米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授
 社員が職務上の研究で生み出した発明について、特許を取得する権利を「社員のもの」から「企業のもの」に変更できる改正特許法が3日午前、参院本会議で可決、成立した。企業は「発明の対価」をめぐる訴訟リスクを減らせる一方、特許庁のガイドラインに沿って社員に対価を支払うことになる。

 改正法は、発明に携わった社員が「相当の金銭、その他の経済上の利益を受ける権利」を持つと明記。社員の意欲をそがないよう、特許を取得する権利が企業に帰属するのは、対価の支払いを社内規定などで約束した場合に限定した。

 大企業の多くはすでに、特許取得権を社員から企業に移すことを社内規定で定めている。特許庁は年内にもまとめるガイドラインで、企業が提示した対価への異議申立制度の導入なども促す方針だ。また同日の参院本会議では、設計図など企業秘密の漏えいに対する罰則を強化した改正不正競争防止法も成立した。

特許庁、中小企業向けに「法人帰属」の導入支援


 経済産業省・特許庁は職務発明制度の見直しを盛り込んだ特許法改正案の成立をにらみ、従業員の発明にかかわる特許を得る権利を雇用主に認める「法人帰属」の枠組みを導入する中小企業への支援策を講じる。発明者本人への報奨に関する取り決めなど、法人帰属を選ぶ際に必要な労使間のルールづくりを、弁護士ら専門家を通じて支援する案が有力。公布後1年以内の改正法施行に備えて詳細の設計を進める。

 今国会に提出した特許法改正案には従業員らによる職務上の発明について、特許を得る権利を発明者本人のものとする従来の発明者帰属と、使用者が当初から保有すると見なす法人帰属のどちらかを選べる規定を盛り込んだ。

 法人帰属の場合には金銭などの経済的利益を請求する権利を、発明者本人に認める。法人帰属を採用する際には、その意思や経済的利益の付与に関するルールを「職務発明規程」として勤務規則などであらかじめ定めておく必要がある。

 改正特許法の成立を前提に、こうした規程を新設する中小企業への支援策を検討する。中小の特許出願や知的財産戦略を支援するため、各都道府県の発明協会などに設けてある「知財総合支援窓口」で相談員を務める弁護士らに、専門的見地から助言してもらう方向で具体策を練る。経産省は改正法の施行までに、発明者に対する経済的利益の付与にかかわるルールづくりで、参考となる指針をまとめる方針。その内容も踏まえて詳しい制度設計を検討する。

 特許庁の調べでは大企業のほぼすべてが法改正に先立ち、職務発明にかかわる特許の取り扱いで何らかの規程を独自に設けているが、中小企業では20%にとどまる。職務発明をめぐる中小の知財活動を本格的に支援し、法人帰属への円滑な移行を後押しする。

日刊工業新聞2015年04月08日2面/07月06日3面

COMMENT

神崎明子
デジタルメディア局
編集委員

これまで職務発明についての特許権は社員のものとされていましたが、青色LED訴訟など巨額の支払いを求める紛争が相次いだことから、訴訟リスクを軽減するため産業界が見直しを求めていました。イノベーションは競争力の源泉だけに、開発意欲をかきててる環境整備は重要です。

関連する記事はこちら

特集