揺れる東芝「ガバナンス」を考える

2年前、田中社長はどのような課題を背負って誕生したか

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左から西田氏、田中氏、佐々木氏(2013年2月の社長交代会見)
 東芝の田中久雄社長が就任したのは2年前。日刊工業新聞では就任翌日に、田中体制が背負う課題などを指摘した特集を掲載した。改めて読み返すと、今回の不適切な会計処理の問題が発生していく背景が浮かび上がってくる。

二律背反のガバナンスが内包


 東芝は25日付で田中久雄社長が就任、新体制が始動した。西田厚聰会長と佐々木則夫副会長(前社長)の路線対立が社内外で注目され、電機業界をけん引すべき名門企業の成長を危ぶむ声もある。田中新社長は実績で、雑音を打ち消すしかない。

 「佐々木さんは細かいところまで口を出し成長への勢いを削いだという評価もあるが、それはしょうがない。4年前にはかなり財務内容が悪化していたのだから」―。東芝のある幹部は財務規律を重視した佐々木前社長の戦略に理解を示す。実際、2009年3月末に8・2%だった自己資本比率は、13年3月末には16・9%まで回復した。

 しかし、ここ数年は年初に立てた業績目標は未達に終わり、特にデジタル機器部門は売り上げが大幅に減少。「テレビ事業は2年間で約900億円の赤字と許されないミスを犯した」(国内証券アナリスト)。田中新社長も「今期は必ず数字を上振れさせる」と市場への信頼回復を口にする。

 大手機関投資家の運用者は「東芝はひやひやするところはあるが、グローバルに全部勝ちたいという意識が強い。だから日立製作所よりも投資先として面白みがある」と話す。特に西田会長が社長時代はそれが前面に出ていた。

 西田会長の経営哲学は「二律背反の克服」だ。「利益優先かシェア(規模)優先か。かつてはどちらかを選択すれば良かったが、パラダイムが変わり、二律背反という本質的な課題を解決しないと勝ち残れない」(西田会長)という。東芝自体も従業員20万人の巨大企業で、組織的に物事が動く側面と、経営トップの個性が方向性を決める二律背反のガバナンス(企業統治)を内包する。
 
 西田会長が事実上指名した田中新社長はどのような経営手腕を発揮するのか。副社長時代は戦略企画担当として、定例の部長会などでは会議の口火を切ることもしばしば。佐々木社長の方針を代弁し、社内では“ミニ佐々木”と呼ばれていたほど。半導体部門の構造改革にも厳しい姿勢を打ち出していた。

 成長路線へかじを切ることを宣言しているものの、まずは自身が得意とする調達や物流などでのコスト削減を優先するのではないか。調達担当役員時代は西田氏の右腕としてパソコンの収益改善に貢献した。パソコン好きを自認するが、「どこまでプロダクツにこだわりを持っているのかはまだ分からない」(東芝幹部)という声もある。

 東芝にはモノづくりのDNAが根付く。佐々木氏も原子力畑一筋だったが、他部門との会話を積み重ね、デジタル機器部門に対し自ら製品の提案もしていたという。一方、開発現場では、顧客目線でなく「社内に認められることを優先したと思われるバリューチェーンのみえない製品も生まれている」(同)とされる。田中新社長は、自由闊達(かったつ)な社風を再興させる使命を負っている。
 

2013株主総会 佐々木氏「将来の方向性を示せた」


 25日、議長として自身最後の株主総会に挑んだ佐々木則夫社長。専門の原発に関する質問も多く、終始笑顔で議事進行を進めた。社長交代に関することは事前質問だけで、当日の出席者からはなかった。

 担当役員が「指名委員会で議論しルールに従い決定した」と淡々と回答。閉会前に佐々木社長は改めて4年間の社長在任中の支援に感謝を述べるとともに、「事業構造転換や財務基盤の強化など将来の方向性を示すことが相応にできた」と実績をアピールした。

日刊工業新聞2013年06月26日深層断面から一部抜粋

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

今回の問題は、「二律背反」という言葉にヒントがある。経営の転機は2代前の西田社長の登場だったと思う。個性的で強烈なリーダーシップを持つトップとしてメディアも賞賛した。不幸にもリーマンショックによって財務が悪化し、後を託された佐々木社長は収益重視へ舵を切る。西田・佐々木時代は、より「経営トップの個性が方向性を決める」方へ振れた。もちろんそれ自体が悪いことではないが、東芝のような大企業でリーダーシップを発揮させるガバナンスの仕組みが追いついてなかったように映る。

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