産ロボ市場、倍増のカギは概念の変更にあり!

付加価値の高い分野にロボット技術の投入を

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切削加工や塑性加工の分野で活躍しているシステムは、技術的にはロボットそのもの。ロボットの概念を拡大すれば、より大きな市場を創出できる可能性がある(図提供:荒井氏)
 政府は1月23日、ロボットによる新たな産業革命の実現に向けアクションプランとなる「ロボット新戦略」を発表した。ロボット市場の大半を占める産業用ロボットについては、2020年には市場規模を、現在の約6000億円から2倍となる1兆2000億円に拡大することを目標に掲げる。具体策として、ロボットまわりのシステム構築を担うシステムインテグレータ(SI)の育成や、それによる中小製造業や3品業界(食品・化粧品・医薬品業界)への導入拡大などを盛り込むが、いずれもリーマン・ショック以降の2009年から取り組まれている活動ばかり。倍増を期すには物足りない。

【産ロボの市場規模は一進一退】
 2014年の産業用ロボット市場は、日本ロボット工業会会員企業に限定されるが、総出荷台数は過去最高を更新した。前年比28.9%増の12万7491台で3年ぶりのプラスとなり、2013年の会員外を含む11万889台を大きく上回った。出荷金額も同21.1%増の4815億円となり、こちらも3年ぶりにプラス。このうち国内出荷台数は同24.5%増の2万8809台、出荷額は同11.3%増の1255億円、輸出台数は同30.2%増の9万8882台、輸出額は同25.0%増の3596億円と大幅に増大した。

 ただし、前年の2013年はマイナス成長だった。同会員と会員外を含む受注額は、対前年比0.4増の5098億円、生産額は同5.6%減の44927億円、出荷額は同6.9%減の5037億円。うち国内出荷額が同14.6%減の1522億円、輸出額は同3.1%減の3515億円だった。
 2009年に前年のリーマン・ショックの影響で、ロボットの「飛躍元年」とされた1985年の市場規模を下回るまで落ち込み、その後、台数ベースでは以前の水準にまで回復。2014年になってようやく、ピークとなった2006年の水準まで回復した(図1)。ユーザー企業の設備投資の影響を受けつつ、市場規模は一進一退を繰り返しているのが実情だ。

【ロボットの概念を矮小化】
 産業用ロボット市場の倍増を期すには、その概念の拡大がカギになるかもしれない。
 そう唱えるのは、スピニング加工(へら絞り加工)にロボット技術の適用を試みる産業技術総合研究所 先進製造プロセス研究部門の荒井裕彦上級主任研究員である。ロボット産業がテリトリーとするのは産業用ロボットと周辺機器と捉えるがために、ロボット産業が自身の役割を各応用分野で埋め込めず、結果、多くの取りこぼしがあると指摘する。

 その一例に、わが国初の技術として1990年代以降に普及したサーボプレスがあげられる。サーボモーターの応用により下死点および平行度を位置制御したり、力フィードバック制御(プレス時の加圧制御)したりすることで精緻に加工ができる。技術的にはまさしくロボットであり、サーボモーターを精緻に制御するのはロボット屋にとっては十八番(おはこ)である。にもかかわらず、塑性加工分野の研究者が独自開発で実用化に至った。同様のケースは他にもあるのではと荒井氏は見る。

【モノづくりの付加価値の高い分野へ】
 また、こうした概念の拡大は、ロボットの生産財としての価値を高める可能性がある。製造現場における作業は、製品競争力に直結する付加価値となる作業と、単純にコストとなる作業に大別される。同じ産業用ロボットでも、前者は溶接ロボットや塗装ロボットなどが、後者はマテリアルハンドリング(マテハン)などが当たり、生産財としての価値は異なる(図2)。自動車産業において、溶接ロボットや塗装ロボットが必須のシステムとなり、かつ大量に導入されるのは、自動車の品質そのものを左右するからである。

 生産現場には、各種工作機械をはじめ、射出成型機や鍛圧機械などが存在する。これらはロボットを構成する主な3要素であるセンサー、コントローラー、アクチュエーターを搭載しており、技術的にロボットに近い。塑性加工のほか切削や研削、切断、研磨など、モノの形状や性質を変えるような工程のロボット化や自動化は可能であり、実際、IHIが力フィードバック応用のエッジ仕上げロボットを発売しており、ロボット技術を応用したパイプベンダーも複数存在する。

 産業用ロボットの海外販売が拡大する中、ロボットの単価下落および収益低下が進展している。日本ロボット工業会の調べによると、ロボットメーカーが中国で販売を伸ばし始めた2011年は、産業用ロボットの出荷台数が約12万2000台で、出荷額が約6000億円だった。2012年は出荷台数が約11万5000台で、出荷額は約5400億円。単純計算で2011年に1台当たり約491万円だったロボットの価格は、2012年に約470万円に下落しており、この傾向は現在も続いている。

 「ロボット」という先入観から、自動化・省力化ばかりに目が行きがちにある。結果、上述のような価格の下落を招きやすい。しかし、切削や研削、切断、塑性加工など、あえて付加価値の高い分野にもロボット技術を積極的に展開すれば、導入台数の拡大をはかりつつ生産財としての価値の向上につがる可能性がある(図3)。ロボットメーカーならびにSIの目をこちらに向けることに目標達成のカギがある。

ニュースイッチオリジナル

COMMENT

2000年代はじめに、ロボットの概念を拡大することで非産業分野にロボット技術の適用を図る試みがなされてきました。そうではなく、産業用ロボットの概念を拡大しつつ、モノづくり分野をくまなくウォッチすることで、ロボット産業の役割を埋め込む活動がまず必要だったといえ、いまから取り組むことが求められているといえるでしょう。

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