産業技術の「発明大賞」、今年の24件はこれだ!
今日、表彰式
日本発明振興協会(東京都港区、原昭邦会長)と日刊工業新聞社共催の「第43回(2017年度)発明大賞」に24件の発明が選ばれた。発明大賞は発明考案を通して産業の発展や国民生活の向上に寄与した資本金10億円以下の中堅・中小企業や個人、グループに送られる。表彰式は12日に東京都港区の明治記念館で行う。
■半導体工場における配管型反応生成物捕集機器=大成技研(代表取締役・斉藤義貴氏)
うず溝構造を利用した排ガス用の微粒子捕集フィルター。半導体製造装置(CVD)などから排出されるガスから微粒子を捕集する。装置内部にうず溝構造を設け、排ガス中に含まれる微粒子を遠心力で分離する。従来の除去方法は、操業を停止して、分解するといったメンテナンスが必要であった。さらに、微粒子そのものの影響で真空ポンプの寿命が短くなるという課題があった。
開発した捕集器は圧力損失が小さく、フィルターの目詰まりが小さく長寿命という特徴がある。さらに、うず流旋回吸着と高機能フィルターによって1マイクロ―300マイクロメートルという幅広い粒子径の粉じんを捕集できる。
(大成技研=東京都足立区、03・3858・8701)
■粒状体地盤コアバーレル=基礎地盤コンサルタンツ(社長・岩﨑公俊氏ほか1人)
土木・建築構造物の建設に必要な地盤調査時、砂れき地盤など崩壊しやすく取り出すことが困難な地盤で、原地盤状態を乱さずにサンプルを採取する技術。地質観察や強度情報を得る室内土室試験の試料採取を目的に使われる。
従来手法では、サンプリング時に試料表面や細粒土を消失してしまっていた。本技術は、潤滑剤として高粘性流体を使うことで、原地盤状態を乱さずに試料の採取が可能である。水溶性ポリマー溶液を使って試料表面を保護し、崩壊しやすい砂れき地盤の採取が可能になった。
(基礎地盤コンサルタンツ=東京都江東区、03・6861・8800)
■眼鏡レンズの染色方法=ニデック(コート事業部研究開発部副主席技師・犬塚稔氏)
厚みの異なるレンズに高い再現性で着色する技術。昇華性染料をインクジェットプリンターで転写紙に印刷し、レンズに転写して染色する。色の再現性が高く、安定して目的の色を出すことができる。さらに、プリンターを使うことでインク量の調整が可能なため廃液が減り、環境にも良い。
従来は、レンズを染料を融解した染料液に浸漬して着色していたが、レンズの厚みが異なると色の再現性が低くなるため、熟練者が一つ一つ色修正する必要があった。
(ニデック=愛知県蒲郡市、0533・67・6611)
■ダイレクトタッチ型メタルダイヤフラム弁=フジキン(革新設計課参事・谷川毅氏ほか2人)
高速で開閉し、ガスの流量の精密な制御をするダイヤフラム弁について、形状と素材を改良して耐久性を向上させた。素材を複数のステンレス鋼板とニッケル・コバルト合金薄板との積層体で形成し、形状および構造に特徴を持たせることで、一定の流量を保つことができる。
従来は一定流量を維持するためにダイヤフラムを大きく変形させて流路断面積を確保していたが、高速で開閉を行う場合には負荷がかかり、破損の恐れがあった。
(フジキン=大阪府柏原市、072・977・4661)
■錘部材とマグネットを使用した高性能水道メーター=柏原計器工業(開発部マネージャー・小川義典氏ほか3人)
高精度で耐久性が高く、低価格な乾式直読水道メーターと、電子式水道メーターの多機能性を融合した水道メーター。メーターの羽根車の回転軸に振動を抑制する錘を設けて誤差を軽減し、さらにメーターの針の指示をデジタルデータへ変換する。低流量域でも高い精度で計測できる。
人が行っていた検針業務が無線通信で可能になる。IoTを活用した次世代インフラの実現に貢献する。クラウド活用でマンションの水道使用量の管理も可能になる。
(柏原計器工業=大阪府柏原市、072・973・0601)
■紙粉除去装置を組み込んだ段ボール製造システム=三和紙器(会長・青山健祐氏)
段ボールの製造・加工時に発生する紙粉を自社開発した特殊ブローと吸引で安定的に除去するシステム。重なった段ボールを立てることで適度な隙間を作り、振動させながら送風機で吹き飛ばす。生産された段ボール箱が装置内に自動的に搬送される。製造ラインのひとつの工程として設置可能なため、生産性を落とすことなく除塵ができる。
段ボール箱の原料は90%以上が古紙で繊維が短く、紙粉がでやすい。食品や医薬品業界などでは、衛生的観点から紙粉除去の必要性が高まっていた。
(三和紙器=兵庫県尼崎市、06・6492・6111)
■白煙を排出する煙突の排ガス中のばいじん濃度連続測定器=田中電気研究所(社長・田中敏文氏)
ボイラーや焼却炉から排出される排ガス中のばいじんを連続的にモニタリングできる計測器。石炭発電所やバイオマスボイラーなどの排煙脱硫装置出口は水分ミストを含んだ排ガスになる。この排ガス中の水分ミストを瞬間的に気化させて白煙とダストを分離し、ばいじんだけを測定する。
水分ミストの影響を受けるとガス中のばいじんだけを測定することが困難だった。また、従来の吸引式ダスト計が130キログラムなのに対し、本装置は30キログラムと小型軽量化した。
(田中電気研究所=東京都世田谷区、03・3425・2381)
■衝撃吸収性と通気性を向上させたヘルメット=谷沢製作所(常磐谷沢製作所茨城工場工場長・崔成根氏ほか3人)
衝撃吸収性を損なわずに通気性を確保した産業用ヘルメット。内装に衝撃吸収部材として従来使われていた発泡スチロールの代わりに樹脂で成形した構造体を用いたことで、衝撃吸収性と通気性を両立した。
六角形と円筒形状を複合化した樹脂製ブロックで作った集合体を、衝撃吸収部材としてハンモックに形成した。高い断熱効果を持つ発泡スチロールを使わないことで、従来品と比較してヘルメット内の温度と湿度の上昇が抑えられた。
(谷沢製作所=東京都中央区、03・3552・5581)
■基板検査装置および基板検査方法=日本電産リード(開発本部開発1部課長代理・高原大輔氏ほか1人)
半導体パッケージ基板、プリント基板などの配線の抵抗値を検査する検査装置。検査したい端子を組み合わせて選択し、基板の端子に多点のスキャナーを接触させて同時に検査できるため、配線1本ごとの検査に比べて検査時間の短縮につながる。従来手法より2・7倍の速度で検査することができる。
情報通信機器やモバイル機器、家電製品や自動車など、幅広い商品に使われるプリント基板の、高速な品質検査が可能になる。
(日本電産リード=京都市右京区、075・315・8001)
■低ノイズで連続波長掃引可能な波長可変半導体レーザー(室清文氏)
回折格子から一次光を取り出すことができる「“転置”Littman配置」を採用し、出力や波長可変域の減少を起こさない高スペクトル純度の波長可変半導体レーザー。従来の半導体レーザーにおけるレーザーチップからの自然放射光ノイズによる、レーザー光のスペクトル純度劣化を改善した。
さらにレーザーチップの屈折率変化によるモード跳びを抑制する方式で連続波長掃引域を拡大し、高効率なファイバー結合を得ることで実用性を高めた。分光計測の分野での応用が期待できる。
(室清文氏〈スペクトラ・クエスト・ラボ〉=千葉市中央区、043・305・5563)
■出力軸トルク測定機能付きギヤードサーボモーター=ロボテック(社長・吉本喬美氏ほか3人)
実測トルク値による制御が可能なサーボモーター。回転軸に設けたひずみゲージでトルクを検出するトルクセンサーは、検出信号を取り出すことと回転軸側に電源を供給することが従来困難とされていた。回転軸に設けた基板から検出信号をデジタルで光学的に送信し、スペース効率とサイズを追求した非接触給電方式で回転軸側の基板へ電源を供給することによって、高精度なトルク測定が容易にできるようになり、減速機付きモーターと一体化することで、力覚の再現や伝達が可能となった。
(ロボテック=東京都中央区、03・3639・6123)
■地面に残留する切り株を切断除去するための装置=アクティオ(技術部副部長・小林宏氏ほか3人)
油圧駆動の回転式ホールソーを油圧ショベルのアーム先端に取り付けて、地表面や地上に残留した切り株や周辺根を切断する装置。人力に頼らない機械での工法で省人化が可能となり、安全性が向上する。切り株周辺根の切断速度が速くなり、切り株除去工事全体の工事期間が短縮されてコストダウンにつながる。樹木の植え替えが容易になり、街路樹再生が促進される。環境対策や景観美化に貢献できる。
(アクティオ=東京都中央区、03・6680・9254)
■テトラフルオロエチレン系融着構造体の製造法=厚木ヒューテック(代表取締役・小川克己氏ほか1人)
溶解して成形することが困難なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を、パーフロロアルキル基含有のPTFEを介在させて接着成形させる方法。複雑な3次元構造を持つPTFE製品の製造が可能になる。従来のブロックからの切り出しによる手法と比較して、材料と加工費が30%以下に削減できる。PTFEは高温高圧の粉末圧縮成形で加工する。新手法では低圧条件下でも接着が可能になるため、高温高圧条件を作るための高価な設備費が不要になる。
(厚木ヒューテック=神奈川県厚木市、046・242・4800
■日射強度を高精度かつ高速に測定する日射計=英弘精機(社長・長谷川壽一氏)
応答が早く精度が高い日射計。反応時間が従来の10分の1以下になり、環境変化と経年変化の影響を受けにくいため測定精度も高い。全天日射計のサーモパイルを使用し、光入射部の拡散部材の形状を工夫することで入射角エラーの影響を低減した。太陽光発電所での日射強度モニタリングの信頼性が向上する。従来の日射計は応答時間が長く、日射強度を高速で測定できないため、精度が不十分だった。
(英弘精機=東京都渋谷区、03・3469・6711)
■汚泥掻寄装置=フジワラ産業(社長・藤原充弘氏)
上下水道の沈殿池の池底に設置したレール上をかき寄せ羽根を取り付けた機体が走行して汚泥をピットに落とす。かき寄せ羽根は池底形状に合わせるのでかき寄せもれも少ない。ピット側への走行時はかき寄せ羽根を垂直に、戻り時には水平にして汚泥の乱れを防止する。従来と比べ構造がシンプルでメンテナンスの頻度が小さく運転コストも抑える。また、本体が池底にあるため地震やスロッシングと呼ばれる水の揺れにも強い構造となっている。
(フジワラ産業=大阪市西区、06・6586・3388)
■静電誘導プラズマ場中セラミックスの常温・高速成膜技術=渕田ナノ技研(社長・渕田英嗣氏ほか2人)
原料のセラミックス粒子を正電荷にさせて高速で吹き付けてプラズマを発生させ、低温(常温)でセラミックス成膜する技術。常温で結晶性を有する膜を作る事ができるため、絶縁体膜、誘電体膜、耐熱。耐腐食性膜などへの応用が期待される。結晶性を有するセラミックス成膜方法は、プラズマスプレー法や電子ビーム蒸着法などがあるが、約700度Cの高温で成膜する必要があった。
(渕田ナノ技研=千葉県成田市、0476・27・3933)
■拘束力に応じて選べるテクスチャを利用した加工装置=フレキシースクラム(代表取締役・董媛氏)
材料の表面にマイクロメートル単位のテクスチャリング加工をすることで、対象物への圧接時の摩擦抵抗を制御する拘束材。金型の耐摩耗性を従来の3万ショットから10万ショットへと向上させた。高品質で低コスト、短納期が可能になる。またプレス成形加工技術の確立により、自動車の車体や主要部品では既存素材と比較して約20%以上の軽量化が可能で、燃費の向上にもつながる。
(フレキシースクラム=愛知県弥富市、056・755・7505)
■腰部と胸背部の体幹2点計測による簡便な歩行計測装置=マイクロストーン(社長・白鳥典彦氏ほか3人)
腰部と胸背部の2カ所にセンサーを装着する歩行計測装置。腰部と胸背部の2カ所に加速度センサーや角速度センサーをつけ、各センサーの動作軌跡から歩行バランス解析が可能になった。従来製品より低コストで、容易に計測できる。理学療法士による歩行指導の補助やエクササイズの提案に活用される。
(マイクロストーン=長野県佐久市、0267・66・0388)
■可搬式ゲート開閉装置=横川鉄工所(設計・管理部長・本間温夫氏)
水門の開閉作業に使う可搬式ゲート開閉装置。動力にはガソリンエンジンを用い、災害時の停電状態でも使用可能。従来品が40キログラム以上あったのに対して10キログラムと軽量化し、可搬性に優れている。ハンドルへの接続が容易で、使用時にはずれにくい。設置が治水目的のため、水門の開閉作業は悪天候の中で行われることが想定される。可搬性に優れ電力不要のため、労力軽減と作業時間の短縮を可能にした。
(横川鉄工所=高知市、088・831・1786)
■金型の加熱構造=リナシメタリ(代表取締役・中村克昭氏)
鍛造・板成形などの熱温間加工の金型を400度C以上に加熱し、加工性を向上させる装置。コイルヒーターを板状のベースに埋め込んだものを多層化し、加工時の大きな圧力に耐えつつ、大きな熱量を金型に供給できる。また、短時間での金型昇温が可能で、高い温度安定性がある。ヒーターを埋め込んだダイセット内に金型を置くため、交換作業も容易になり、作業環境を改善した。
(リナシメタリ=福岡市中央区、092・716・7166)
■泡によるコスト削減と環境負荷減の高効率集塵機=田辺塗工所(代表取締役・田辺直氏)
塗装ミストや揮発性有機化合物といった工業塗装で排出される物質の集塵媒体を従来の水から泡に変えた集塵装置。泡の吸着力によって、塵埃(あい)の放出量が従来の半分に軽減する。機体の水平平行の吸引方法により、作業者の溶剤被ばくを25%以下にまで低下させる。さらに、廃水処理費や消費電力は80%、溶剤量は10%削減できる。
(田辺塗工所=新潟市東区、025・273・0011)
■側溝をV字型とした清掃容易なグレーチング=ポラリス(社長・堀義昭氏)
食品工場の排水溝にかぶせる格子状のふた「グレーチング」と排水溝側部に傾斜をつけることで隙間を作り、衛生管理がしやすい構造にした。また、グレーチングに枠がなく、隙間を空けた構造のため、小さなゴミがグレーチング周囲にたまらずに排水溝にすべり落ちやすくなった。従来品は排水溝の開口部と直角形状で、隙間や角部分にゴミが詰まりやすく、掃除しにくく、衛生上の課題があった。
(ポラリス=大分市、097・560・0541)
■永久磁石を使用せず高効率な発電機能を実現するモーター=リージック(代表取締役・松延俊美氏)
高効率な発電機能を実現した磁石を必要としないモーター「スイッチト・リラクタンス(SR)モーター」の制御技術。モーターのコイルに流れる電流を監視し、電流の大きさが発電動作により設定値を上回った時点でコイル内に蓄積した発電エネルギーを電源に回生する。回生動作によるコイル電流低下が発生した時点で発電動作に戻し、発電・回生動作を繰り返し維持させる。従来に比べ簡素な回路で力行・回生動作を制御するためエネルギー損失が少ない。
(リージック=千葉県船橋市、047・437・3901)
■フライアッシュの加熱焼成装置及び焼成方法=リュウクス(代表取締役・謝花一成氏ほか3人)
火力発電所など石炭を燃焼する際に生じる灰の一種「フライアッシュ」(FA)から未燃炭素を加熱除去した高品質FAを製造する装置。加熱除去に高周波加熱法を用いて迅速性を向上させ、酸素供給やエネルギーバランスを調整して生産能力の向上と安定を実現した。また、エネルギー効率を改善して装置を小型化し、装置導入コストも低減した。
(リュウクス=沖縄県うるま市、098・939・1181)
【発明大賞 本賞】
■半導体工場における配管型反応生成物捕集機器=大成技研(代表取締役・斉藤義貴氏)
うず溝構造を利用した排ガス用の微粒子捕集フィルター。半導体製造装置(CVD)などから排出されるガスから微粒子を捕集する。装置内部にうず溝構造を設け、排ガス中に含まれる微粒子を遠心力で分離する。従来の除去方法は、操業を停止して、分解するといったメンテナンスが必要であった。さらに、微粒子そのものの影響で真空ポンプの寿命が短くなるという課題があった。
開発した捕集器は圧力損失が小さく、フィルターの目詰まりが小さく長寿命という特徴がある。さらに、うず流旋回吸着と高機能フィルターによって1マイクロ―300マイクロメートルという幅広い粒子径の粉じんを捕集できる。
(大成技研=東京都足立区、03・3858・8701)
【発明大賞 東京都知事賞】
■粒状体地盤コアバーレル=基礎地盤コンサルタンツ(社長・岩﨑公俊氏ほか1人)
土木・建築構造物の建設に必要な地盤調査時、砂れき地盤など崩壊しやすく取り出すことが困難な地盤で、原地盤状態を乱さずにサンプルを採取する技術。地質観察や強度情報を得る室内土室試験の試料採取を目的に使われる。
従来手法では、サンプリング時に試料表面や細粒土を消失してしまっていた。本技術は、潤滑剤として高粘性流体を使うことで、原地盤状態を乱さずに試料の採取が可能である。水溶性ポリマー溶液を使って試料表面を保護し、崩壊しやすい砂れき地盤の採取が可能になった。
(基礎地盤コンサルタンツ=東京都江東区、03・6861・8800)
【発明大賞 日本発明振興協会会長賞】
■眼鏡レンズの染色方法=ニデック(コート事業部研究開発部副主席技師・犬塚稔氏)
厚みの異なるレンズに高い再現性で着色する技術。昇華性染料をインクジェットプリンターで転写紙に印刷し、レンズに転写して染色する。色の再現性が高く、安定して目的の色を出すことができる。さらに、プリンターを使うことでインク量の調整が可能なため廃液が減り、環境にも良い。
従来は、レンズを染料を融解した染料液に浸漬して着色していたが、レンズの厚みが異なると色の再現性が低くなるため、熟練者が一つ一つ色修正する必要があった。
(ニデック=愛知県蒲郡市、0533・67・6611)
【発明大賞 日刊工業新聞社賞】
■ダイレクトタッチ型メタルダイヤフラム弁=フジキン(革新設計課参事・谷川毅氏ほか2人)
高速で開閉し、ガスの流量の精密な制御をするダイヤフラム弁について、形状と素材を改良して耐久性を向上させた。素材を複数のステンレス鋼板とニッケル・コバルト合金薄板との積層体で形成し、形状および構造に特徴を持たせることで、一定の流量を保つことができる。
従来は一定流量を維持するためにダイヤフラムを大きく変形させて流路断面積を確保していたが、高速で開閉を行う場合には負荷がかかり、破損の恐れがあった。
(フジキン=大阪府柏原市、072・977・4661)
【発明功労賞 (50音順)】
■錘部材とマグネットを使用した高性能水道メーター=柏原計器工業(開発部マネージャー・小川義典氏ほか3人)
高精度で耐久性が高く、低価格な乾式直読水道メーターと、電子式水道メーターの多機能性を融合した水道メーター。メーターの羽根車の回転軸に振動を抑制する錘を設けて誤差を軽減し、さらにメーターの針の指示をデジタルデータへ変換する。低流量域でも高い精度で計測できる。
人が行っていた検針業務が無線通信で可能になる。IoTを活用した次世代インフラの実現に貢献する。クラウド活用でマンションの水道使用量の管理も可能になる。
(柏原計器工業=大阪府柏原市、072・973・0601)
■紙粉除去装置を組み込んだ段ボール製造システム=三和紙器(会長・青山健祐氏)
段ボールの製造・加工時に発生する紙粉を自社開発した特殊ブローと吸引で安定的に除去するシステム。重なった段ボールを立てることで適度な隙間を作り、振動させながら送風機で吹き飛ばす。生産された段ボール箱が装置内に自動的に搬送される。製造ラインのひとつの工程として設置可能なため、生産性を落とすことなく除塵ができる。
段ボール箱の原料は90%以上が古紙で繊維が短く、紙粉がでやすい。食品や医薬品業界などでは、衛生的観点から紙粉除去の必要性が高まっていた。
(三和紙器=兵庫県尼崎市、06・6492・6111)
■白煙を排出する煙突の排ガス中のばいじん濃度連続測定器=田中電気研究所(社長・田中敏文氏)
ボイラーや焼却炉から排出される排ガス中のばいじんを連続的にモニタリングできる計測器。石炭発電所やバイオマスボイラーなどの排煙脱硫装置出口は水分ミストを含んだ排ガスになる。この排ガス中の水分ミストを瞬間的に気化させて白煙とダストを分離し、ばいじんだけを測定する。
水分ミストの影響を受けるとガス中のばいじんだけを測定することが困難だった。また、従来の吸引式ダスト計が130キログラムなのに対し、本装置は30キログラムと小型軽量化した。
(田中電気研究所=東京都世田谷区、03・3425・2381)
■衝撃吸収性と通気性を向上させたヘルメット=谷沢製作所(常磐谷沢製作所茨城工場工場長・崔成根氏ほか3人)
衝撃吸収性を損なわずに通気性を確保した産業用ヘルメット。内装に衝撃吸収部材として従来使われていた発泡スチロールの代わりに樹脂で成形した構造体を用いたことで、衝撃吸収性と通気性を両立した。
六角形と円筒形状を複合化した樹脂製ブロックで作った集合体を、衝撃吸収部材としてハンモックに形成した。高い断熱効果を持つ発泡スチロールを使わないことで、従来品と比較してヘルメット内の温度と湿度の上昇が抑えられた。
(谷沢製作所=東京都中央区、03・3552・5581)
■基板検査装置および基板検査方法=日本電産リード(開発本部開発1部課長代理・高原大輔氏ほか1人)
半導体パッケージ基板、プリント基板などの配線の抵抗値を検査する検査装置。検査したい端子を組み合わせて選択し、基板の端子に多点のスキャナーを接触させて同時に検査できるため、配線1本ごとの検査に比べて検査時間の短縮につながる。従来手法より2・7倍の速度で検査することができる。
情報通信機器やモバイル機器、家電製品や自動車など、幅広い商品に使われるプリント基板の、高速な品質検査が可能になる。
(日本電産リード=京都市右京区、075・315・8001)
■低ノイズで連続波長掃引可能な波長可変半導体レーザー(室清文氏)
回折格子から一次光を取り出すことができる「“転置”Littman配置」を採用し、出力や波長可変域の減少を起こさない高スペクトル純度の波長可変半導体レーザー。従来の半導体レーザーにおけるレーザーチップからの自然放射光ノイズによる、レーザー光のスペクトル純度劣化を改善した。
さらにレーザーチップの屈折率変化によるモード跳びを抑制する方式で連続波長掃引域を拡大し、高効率なファイバー結合を得ることで実用性を高めた。分光計測の分野での応用が期待できる。
(室清文氏〈スペクトラ・クエスト・ラボ〉=千葉市中央区、043・305・5563)
■出力軸トルク測定機能付きギヤードサーボモーター=ロボテック(社長・吉本喬美氏ほか3人)
実測トルク値による制御が可能なサーボモーター。回転軸に設けたひずみゲージでトルクを検出するトルクセンサーは、検出信号を取り出すことと回転軸側に電源を供給することが従来困難とされていた。回転軸に設けた基板から検出信号をデジタルで光学的に送信し、スペース効率とサイズを追求した非接触給電方式で回転軸側の基板へ電源を供給することによって、高精度なトルク測定が容易にできるようになり、減速機付きモーターと一体化することで、力覚の再現や伝達が可能となった。
(ロボテック=東京都中央区、03・3639・6123)
【考案功労賞 (50音順)】
■地面に残留する切り株を切断除去するための装置=アクティオ(技術部副部長・小林宏氏ほか3人)
油圧駆動の回転式ホールソーを油圧ショベルのアーム先端に取り付けて、地表面や地上に残留した切り株や周辺根を切断する装置。人力に頼らない機械での工法で省人化が可能となり、安全性が向上する。切り株周辺根の切断速度が速くなり、切り株除去工事全体の工事期間が短縮されてコストダウンにつながる。樹木の植え替えが容易になり、街路樹再生が促進される。環境対策や景観美化に貢献できる。
(アクティオ=東京都中央区、03・6680・9254)
■テトラフルオロエチレン系融着構造体の製造法=厚木ヒューテック(代表取締役・小川克己氏ほか1人)
溶解して成形することが困難なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を、パーフロロアルキル基含有のPTFEを介在させて接着成形させる方法。複雑な3次元構造を持つPTFE製品の製造が可能になる。従来のブロックからの切り出しによる手法と比較して、材料と加工費が30%以下に削減できる。PTFEは高温高圧の粉末圧縮成形で加工する。新手法では低圧条件下でも接着が可能になるため、高温高圧条件を作るための高価な設備費が不要になる。
(厚木ヒューテック=神奈川県厚木市、046・242・4800
■日射強度を高精度かつ高速に測定する日射計=英弘精機(社長・長谷川壽一氏)
応答が早く精度が高い日射計。反応時間が従来の10分の1以下になり、環境変化と経年変化の影響を受けにくいため測定精度も高い。全天日射計のサーモパイルを使用し、光入射部の拡散部材の形状を工夫することで入射角エラーの影響を低減した。太陽光発電所での日射強度モニタリングの信頼性が向上する。従来の日射計は応答時間が長く、日射強度を高速で測定できないため、精度が不十分だった。
(英弘精機=東京都渋谷区、03・3469・6711)
■汚泥掻寄装置=フジワラ産業(社長・藤原充弘氏)
上下水道の沈殿池の池底に設置したレール上をかき寄せ羽根を取り付けた機体が走行して汚泥をピットに落とす。かき寄せ羽根は池底形状に合わせるのでかき寄せもれも少ない。ピット側への走行時はかき寄せ羽根を垂直に、戻り時には水平にして汚泥の乱れを防止する。従来と比べ構造がシンプルでメンテナンスの頻度が小さく運転コストも抑える。また、本体が池底にあるため地震やスロッシングと呼ばれる水の揺れにも強い構造となっている。
(フジワラ産業=大阪市西区、06・6586・3388)
■静電誘導プラズマ場中セラミックスの常温・高速成膜技術=渕田ナノ技研(社長・渕田英嗣氏ほか2人)
原料のセラミックス粒子を正電荷にさせて高速で吹き付けてプラズマを発生させ、低温(常温)でセラミックス成膜する技術。常温で結晶性を有する膜を作る事ができるため、絶縁体膜、誘電体膜、耐熱。耐腐食性膜などへの応用が期待される。結晶性を有するセラミックス成膜方法は、プラズマスプレー法や電子ビーム蒸着法などがあるが、約700度Cの高温で成膜する必要があった。
(渕田ナノ技研=千葉県成田市、0476・27・3933)
■拘束力に応じて選べるテクスチャを利用した加工装置=フレキシースクラム(代表取締役・董媛氏)
材料の表面にマイクロメートル単位のテクスチャリング加工をすることで、対象物への圧接時の摩擦抵抗を制御する拘束材。金型の耐摩耗性を従来の3万ショットから10万ショットへと向上させた。高品質で低コスト、短納期が可能になる。またプレス成形加工技術の確立により、自動車の車体や主要部品では既存素材と比較して約20%以上の軽量化が可能で、燃費の向上にもつながる。
(フレキシースクラム=愛知県弥富市、056・755・7505)
■腰部と胸背部の体幹2点計測による簡便な歩行計測装置=マイクロストーン(社長・白鳥典彦氏ほか3人)
腰部と胸背部の2カ所にセンサーを装着する歩行計測装置。腰部と胸背部の2カ所に加速度センサーや角速度センサーをつけ、各センサーの動作軌跡から歩行バランス解析が可能になった。従来製品より低コストで、容易に計測できる。理学療法士による歩行指導の補助やエクササイズの提案に活用される。
(マイクロストーン=長野県佐久市、0267・66・0388)
■可搬式ゲート開閉装置=横川鉄工所(設計・管理部長・本間温夫氏)
水門の開閉作業に使う可搬式ゲート開閉装置。動力にはガソリンエンジンを用い、災害時の停電状態でも使用可能。従来品が40キログラム以上あったのに対して10キログラムと軽量化し、可搬性に優れている。ハンドルへの接続が容易で、使用時にはずれにくい。設置が治水目的のため、水門の開閉作業は悪天候の中で行われることが想定される。可搬性に優れ電力不要のため、労力軽減と作業時間の短縮を可能にした。
(横川鉄工所=高知市、088・831・1786)
■金型の加熱構造=リナシメタリ(代表取締役・中村克昭氏)
鍛造・板成形などの熱温間加工の金型を400度C以上に加熱し、加工性を向上させる装置。コイルヒーターを板状のベースに埋め込んだものを多層化し、加工時の大きな圧力に耐えつつ、大きな熱量を金型に供給できる。また、短時間での金型昇温が可能で、高い温度安定性がある。ヒーターを埋め込んだダイセット内に金型を置くため、交換作業も容易になり、作業環境を改善した。
(リナシメタリ=福岡市中央区、092・716・7166)
【発明奨励賞】
■泡によるコスト削減と環境負荷減の高効率集塵機=田辺塗工所(代表取締役・田辺直氏)
塗装ミストや揮発性有機化合物といった工業塗装で排出される物質の集塵媒体を従来の水から泡に変えた集塵装置。泡の吸着力によって、塵埃(あい)の放出量が従来の半分に軽減する。機体の水平平行の吸引方法により、作業者の溶剤被ばくを25%以下にまで低下させる。さらに、廃水処理費や消費電力は80%、溶剤量は10%削減できる。
(田辺塗工所=新潟市東区、025・273・0011)
■側溝をV字型とした清掃容易なグレーチング=ポラリス(社長・堀義昭氏)
食品工場の排水溝にかぶせる格子状のふた「グレーチング」と排水溝側部に傾斜をつけることで隙間を作り、衛生管理がしやすい構造にした。また、グレーチングに枠がなく、隙間を空けた構造のため、小さなゴミがグレーチング周囲にたまらずに排水溝にすべり落ちやすくなった。従来品は排水溝の開口部と直角形状で、隙間や角部分にゴミが詰まりやすく、掃除しにくく、衛生上の課題があった。
(ポラリス=大分市、097・560・0541)
■永久磁石を使用せず高効率な発電機能を実現するモーター=リージック(代表取締役・松延俊美氏)
高効率な発電機能を実現した磁石を必要としないモーター「スイッチト・リラクタンス(SR)モーター」の制御技術。モーターのコイルに流れる電流を監視し、電流の大きさが発電動作により設定値を上回った時点でコイル内に蓄積した発電エネルギーを電源に回生する。回生動作によるコイル電流低下が発生した時点で発電動作に戻し、発電・回生動作を繰り返し維持させる。従来に比べ簡素な回路で力行・回生動作を制御するためエネルギー損失が少ない。
(リージック=千葉県船橋市、047・437・3901)
■フライアッシュの加熱焼成装置及び焼成方法=リュウクス(代表取締役・謝花一成氏ほか3人)
火力発電所など石炭を燃焼する際に生じる灰の一種「フライアッシュ」(FA)から未燃炭素を加熱除去した高品質FAを製造する装置。加熱除去に高周波加熱法を用いて迅速性を向上させ、酸素供給やエネルギーバランスを調整して生産能力の向上と安定を実現した。また、エネルギー効率を改善して装置を小型化し、装置導入コストも低減した。
(リュウクス=沖縄県うるま市、098・939・1181)
日刊工業新聞2018年3月8日