グーグル、今度は手術支援ロボを開発、ダヴィンチを脅かすか?
手術支援ロボの導入負担の軽減に期待
グーグル(Google)が手術支援ロボットの開発に乗り出す―。
ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は3月26日(米国時間)、同社傘下の外科用医療機器メーカーであるエチコン(Ethicon)とグーグルが手術支援ロボットの共同開発に関して戦略的提携を結んだと発表した。現在、臨床応用されている手術支援ロボットは、米インテュイティブ・サージカル(Intuitive Surgical)の「ダヴィンチ(da Vinci Surgical System)」(写真)のみ。今回の提携がダヴィンチを脅かし、手術支援ロボットの導入負担の軽減につながるかが注目される。
共同開発するのはダヴィンチと同様、内視鏡手術を支援するシステム。身体の数か所に穴をあけ、そこに内視鏡カメラや鉗子を差し込んで行う低侵襲手術となるため、患者への負担が小さい。
協業の期間や具体的な開発内容は明らかにしていないが、J&Jは、最先端のロボット技術と画像処理技術およびデータ解析技術の統合により、新たな外科ロボット支援システムの提供につなげるとしている。
わが国では、J&Jが2009年11月に、ダヴィンチの日本国内の製造販売認証を取得して以来、手術支援ロボットの利用例が増えている(なお販売代理店は医療機器販売のアダチ)。医師の手による腹腔鏡(ふくくうきょう)手術では、鉗子は直線的な動きや円方向の動きしかできないのに対し、ダヴィンチでは人間の手首に相当する自由度を鉗子が備えており、より精密な手術が行えるからである。特に、神経の温存がきわめて難しいとされる前立腺がん全摘手術での適用例が多く、米国では7割以上がなされており、わが国でも同様に100件以上の実績がある医療機関もある。
日本ロボット工業会が取りまとめた「ロボット産業需給動向2014年版」によると、「医療ロボット」の出荷台数は100台、出荷金額は243億円となっており、国内サービスロボット市場において最大規模に成長している。
ただし、ダヴィンチの導入負担は大きく、減価償却は厳しいとする医療機関は少なくない。
2009年に当時の最新モデルを導入した藤田保健衛生大学によると、ダヴィンチ本体に約2億5000万円(3億円ともいわれることがある)、年間保守料に約2500万円、認定(サーティフィケーション)トレーニングに1人当たり約200万円をかけている。通常、トレーニングは4人1組(外科医2名、看護師1名、臨床検査技師1名)で受けるため、計1000万円を要している。加えて、鉗子などの手術器具〔エンドリスト(EndoWrist)と呼ばれる〕はセミジスポ(使い捨て)となっており、10回使用すると交換しなければロボットアームが動作しない。その交換にも相当な費用を要する。
このようにダヴィンチ本体の販売に加え、教育訓練および保守サービスでも収益を上げる強気なビジネスモデルが成立しているのは、臨床応用されている唯一の手術支援ロボットだからである。今回の提携がその存在を脅かし、結果、導入負担の軽減につながるのでは―。そう期待を込める医療関係者は多い。
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