災い転じて福となすか!?動きだす「FUKUSHIMA」ロボット拠点構想

地元に残った製造業に期待感。廃炉や山林開催、無人飛行まで

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協栄精機の加工現場
 政府は3月31日、福島県浜通り地域での災害対応ロボットの研究・実証拠点整備を中心としたイノベーション・コースト構想の中間整理報告書をとりまとめた。必要な実証拠点の機能や施設仕様案を示したほか、民間企業などの実証ニーズ把握や規制改革、情報発信などの施策を盛り込んだ。報告書ではそのほかに、人材育成を担う産学官の共同研究拠点整備やリサイクル産業集積の方向性を明記。今後の推進会議で同構想の具体化を図る。

 報告書では災害対応ロボットの研究・実証拠点に求める機能として、県内企業への技術支援や開発品の販路開拓、県外企業との連携支援、製品の各種試験、組み立て・調整、関係者の交流などを列記。その上で、別途検討されてきたロボット技術開発の共同研究施設と一体で整備する案と別拠点とする案を併記した。

 施設の仕様は2案を提示。無人航空機に絞った実証拠点では、ロボットの組み立てなどを行う調整ピットや数キロメートル四方の空域、管制塔などを備える。もう一方の案は無人航空機に加えて陸上ロボットも対象に含めて、数百メートル四方の土地を確保するとした。拠点の整備時期は地元自治体などと相談して、今後詰める。

 経済産業省や国土交通省、公的研究機関は新たな実証拠点を活用して、今後普及の見込める無人航空機を中心に、規制や認証方法などの検討・実施を目指す。拠点への事業誘致を図るため、情報発信やロボットコンテストも開催する。

日刊工業新聞2015年04月01日 2面

■地元企業の期待も大きく■

 産業基盤を再構築する―。福島県では東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故で多くの中小企業が仕事を失った。だが新たな産業集積の形成に向けて活気を取り戻しつつある。その一つがロボット産業だ。廃炉作業向けの遠隔操作ロボ技術に加え、津波や山火事などの自然災害対応ロボも視野に入れて複数の産学連携が活動を展開している。

 「廃炉は40年間は続くビッグビジネス。多くの中小企業がロボ事業に参入できれば地域全体が活性化する」。協栄精機(福島県南相馬市)の佐藤正弘社長はこう意気込む。協栄精機は原発事故の被災12市町村の企業を核にした産学連携による製品開発「災害対応ロボット産業集積支援事業」を活用し、日本オートマチックマシン(東京都大田区)、タカワ精密(福島県南相馬市)と小型水中ロボットの開発に取り組む。上昇・下降にプロペラを使わず、水底の泥を巻き上げず調査できるため高精度にデータ収集できる。佐藤社長は「水中ロボ開発をきっかけにして独自製品も開発し、最終的に廃炉ビジネスへの展開を考える」と展望を描く。
 
 会川鉄工(福島県いわき市)などは、山林火災対応ロボットの開発に取り組む。山林など道路が整備されていない場所での消火作業用に、遠隔操作でひっくり返らないように制御する装置を開発する。会川文雄社長は「遠隔操作技術を廃炉や介護関係などのロボ開発につなげたい」と強調する。

 震災後、原発事故で農林業、水産業は立ち行かなくなったものの、製造業は残った。そこで県では災害対応ロボの研究開発組織が相次いで立ち上がった。南相馬ロボット産業協議会(福島県南相馬市)は2011年12月に設立。五十嵐伸一副会長(日本オートマチックマシン機械事業部知的財産管理兼研究開発室ゼネラルマネージャー)は「金属加工に強みのある企業がまとまり、未来志向型のロボ産業を集積したい」と目を輝かせる。

 福島県廃炉・除染ロボット技術研究会(福島県郡山市)は13年6月設立。大手プラントメーカーなどとの連携、情報共有が目的だ。公設試験研究機関である福島県ハイテクプラザの大河原薫副所長は「これからも全面的にバックアップする」と意欲的だ。ロボ技術の研究開発組織「いわきロボット研究会」(いわき市)も14年4月に設立し、会長に会川鉄工の会川社長が就いた。

 県にロボ産業を集積させるためには乗り越えねばならない課題もある。地元からは「ロボ関連を手がける企業を優遇する特区のような仕掛けも必要だ」「共同受注の仕組みも検討」といった声もある。集積への道は始まったばかりだ。

日刊工業新聞2014年10月16日 列島ネット面(一部加筆修正)

COMMENT

政年佐貴惠
名古屋支社編集部
記者

「米国が軍事演習場をロボット実証の場として活用するのに対し、日本は福島をその一大拠点にしよう」という構想は、東日本大震災直後から出ていた意見だ。単なるハコものにしないためにも、規制緩和の検討を含め、柔軟に議論を進めてほしい。

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