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沖縄県は「医療・バイオ」を成長産業に育てられるか!?

行政主導で県内学術機関の技術を掘り起こし。実用化にこだわる
 【那覇】沖縄県は、沖縄科学技術大学院大学など県内学術機関が持つ科学技術の事業化に乗り出す。医療やバイオなど成長分野の技術シーズを抱える一方で、県内経済への波及効果は限定的。県主導で全国の企業とマッチングさせ、技術移転や実用化といった”出口志向“の研究に導く。1件当たり年5000万円と高額の補助金を充て、企業誘致にもつなげる。

 2015年度に沖縄科技大や琉球大学、沖縄工業高等専門学校のシーズ集を制作。それを基にコーディネーターが年約20件の産学共同研究を構成する。一部研究は県が基礎研究として委託する形で支援。実用化有望な研究を絞り込み、2年目に事業化への応用研究に移す。ここで県が助成し事業化を実現する。

 15年度は委託研究に5件を採択する。19年度までに約30件の基礎研究を実施。うち6件ほどを応用研究に進める考え。県外企業も対象にして市場規模や保有技術面で選択肢を増やし、事業化に近づきやすくする。

 企業分野を設定せずに間口を広げる一方、応用研究では補助要件に県内への拠点設置を掲げる。研究拠点や製造拠点の誘致につなげ、投資を呼び込む。県中部の「国際物流拠点産業集積地域」への製造業誘致など科学技術を経済振興に直結させる狙いがある。県は特区制度による優遇税制や那覇空港の国際物流ハブ拠点化を優位性として製造業者に立地をアピールしている。賃貸工場やインキュベート施設整備も進む。

存在感増す沖縄経済−発信力強めて東アジアのハブへ


 太平洋戦争中、民間人だけで20万人以上が犠牲となった沖縄戦が終結して70年が過ぎた。終戦後も米国統治など幾多の苦難を経験した沖縄が、アジアを中心とする新興国経済の台頭を受けて存在感を増している。

 沖縄を中心に世界地図を眺めると1000キロメートル圏内に中国・上海や台湾が、1500キロメートル圏内に東京や韓国・ソウルなどが並ぶ。航空機や高速船による長距離輸送が活発化する中で、沖縄の地理的条件は東アジアのハブ(中核)となる可能性を秘めている。

 製造業には縁遠いと思われがちな環境も、大きく変わりつつある。特に注目されるのは産業振興策の柱である経済特区。地元自治体は特区の利点を生かした企業誘致を熱心に進めている。名護市の「経済金融活性化特別地区」や、那覇・うるまなど複数市にまたがる「国際物流拠点産業集積地域」など、メニューは豊富だ。これらの施策を利用した県外からの企業進出も活発化。ANAホールディングスや三菱重工業による航空機整備事業や、ヤマト運輸の生鮮食品輸出拠点は好例だ。

 一方、ユニークな取り組みとして注目されるのが再生医療。2013年度から先端医療産業開発拠点形成事業を実施しており、中でも再生医療産業の集積・育成に力を注いでいる。長寿社会として知られる沖縄にあって、医療クラスター形成やバイオベンチャー創出は目玉事業の一つ。

 豊富な人材も沖縄の特徴だ。県内には工業系の高等学校と高等専門学校が10校あり、大学も含めると年間数千人の理工系人材を輩出する。しかし流通や観光、農水産業が中心の従来の産業構造では雇用の受け皿になれず、人材の県外流出に歯止めがかからない。製造業の進出は、そうした面からも地元に歓迎されている。

 日刊工業新聞社は1日、那覇支局を開設した。沖縄の発展がわが国の、ひいては東アジア地域の発展につながると考えたからだ。モノづくりの基盤としての沖縄が、これまで以上に魅力を発信することで、日本経済の再生の一助になることを期待する。
 (2015年07月01日付社説)
日刊工業新聞2015年07月01日1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
日刊工業新聞は那覇支局を開設、「ニュースイッチ」ファシリテーターの三苫氏が支局長に就任しました。今後は沖縄情報をさらに充実させていく予定です。

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