デフォルト・ユーロ離脱懸念で株価下落。「ギリシャ問題」日本への影響は?
火種はまだくすぶり続けているが、金融危機につながる可能性は低い
ギリシャの瀬戸際外交が続いている。債権団との合意ができない状態が続いているが、地政学的にも重要な位置にあるギリシャが離脱すればユーロ圏の崩壊の一歩になる。不透明感が増すが、ギリシャのユーロ残留、離脱いずれの決着でも、日本など世界を巻き込んだ金融危機につながる可能性は低そうだ。
「ギリシャのリスクが直接的に日本の金融、あるいは金融システムに及ぶということはないと思う」。全国銀行協会の佐藤康博会長(みずほフィナンシャルグループ社長)は会見でこう語った。国外からギリシャへの融資残高は米独英で8割超を占め、日本の金融機関の抱えるリスクは小さい。
ギリシャが抱える債務案件のうち、民間向けで初となるのが7月14日のサムライ債(円建て外債)の償還。市場関係者は「発行額が小規模な上に、日本の金融機関は欧州危機などを経て売却したところも多い」と指摘する。デフォルトの場合でも影響は軽微だ。
29日、東京株式市場は全面安の展開になったように、リスク回避から金融市場が揺さぶられる状況はしばらく続く。ただ、「一時的なもので、株価がこれ以上大きく値崩れする可能性は小さい。為替も1ドル120円よりも円高ドル安が進むことはないだろう」との見方が市場では支配的だ。
震源地の欧州各国も危機対応を進める。前回の欧州債務危機を受け、ユーロ圏内での資金支援の枠組みや国債市場への介入の仕組みなどセーフティーネットを整備。ギリシャが離脱する結論を出しても、欧州各国は影響を極小化する体制を整えてきた。ECBが追加緩和に踏み切る余地もある。
とはいえ、現時点ではギリシャ離脱の可能性は低い。「ギリシャとEUを比べればEU側のデメリットが大きすぎる」(邦銀関係者)ためだ。離脱すれば、ユーロ圏は融資の焦げ付き、地政学的不安を抱えることになってしまう。中期的に財政基盤が弱い南欧諸国の離脱にもつながりかねない。欧州単一通貨構想が頓挫しかねず、ユーロ瓦解の一歩になる。
政権交代の可能性はちらつくが、EU側が譲歩し、支援枠組みを維持したまま、ギリシャはEUに残留することが現実的な着地点だろう。
29日の東京株式市場は、ギリシャの債務不履行(デフォルト)・ユーロ圏離脱の懸念が重しとなり、大幅下落となった。日経平均株価の終値は今年最大幅の下落である前日比596円20銭安の2万109円95銭。ギリシャのユーロ圏離脱やデフォルトが現実味を帯びてきたことで投資家の心理は悪化。株式市場は不透明感を増しつつある。
日経平均株価は取引開始から先週末比400円超のマイナスでスタート。ギリシャ問題により為替相場が円高に振れたことや、5月の鉱工業生産指数が市場予想を下回ったこともあり、下落幅は一時600円超に拡大。先週一週間で株価が大幅に上昇し、やや過熱感が漂っていたこともマイナスに作用した。
ただ、ギリシャ問題の世界金融市場に与える影響について、証券業界では楽観視する意見が多い。「ギリシャ問題が表面化した5年前と違い欧州連合(EU)は対応力を強化した。市場にはデフォルトの可能性が織り込まれている」と見るからだ。ある証券業界関係者は「仮にギリシャがユーロから離脱しても、これを“奇貨”としてEUが強固になれば、むしろユーロの買い戻しや欧州株の上昇につながる」と述べる。
ただ「市場への織り込みが進んでいる」と言われていたギリシャ問題が、今回大きな株価下落を導いたことも事実だ。実際にギリシャがデフォルト・ユーロ離脱となった時に市場は落ち着いていられるのか―。火種はまだくすぶり続けている。
「ギリシャのリスクが直接的に日本の金融、あるいは金融システムに及ぶということはないと思う」。全国銀行協会の佐藤康博会長(みずほフィナンシャルグループ社長)は会見でこう語った。国外からギリシャへの融資残高は米独英で8割超を占め、日本の金融機関の抱えるリスクは小さい。
ギリシャが抱える債務案件のうち、民間向けで初となるのが7月14日のサムライ債(円建て外債)の償還。市場関係者は「発行額が小規模な上に、日本の金融機関は欧州危機などを経て売却したところも多い」と指摘する。デフォルトの場合でも影響は軽微だ。
29日、東京株式市場は全面安の展開になったように、リスク回避から金融市場が揺さぶられる状況はしばらく続く。ただ、「一時的なもので、株価がこれ以上大きく値崩れする可能性は小さい。為替も1ドル120円よりも円高ドル安が進むことはないだろう」との見方が市場では支配的だ。
震源地の欧州各国も危機対応を進める。前回の欧州債務危機を受け、ユーロ圏内での資金支援の枠組みや国債市場への介入の仕組みなどセーフティーネットを整備。ギリシャが離脱する結論を出しても、欧州各国は影響を極小化する体制を整えてきた。ECBが追加緩和に踏み切る余地もある。
とはいえ、現時点ではギリシャ離脱の可能性は低い。「ギリシャとEUを比べればEU側のデメリットが大きすぎる」(邦銀関係者)ためだ。離脱すれば、ユーロ圏は融資の焦げ付き、地政学的不安を抱えることになってしまう。中期的に財政基盤が弱い南欧諸国の離脱にもつながりかねない。欧州単一通貨構想が頓挫しかねず、ユーロ瓦解の一歩になる。
政権交代の可能性はちらつくが、EU側が譲歩し、支援枠組みを維持したまま、ギリシャはEUに残留することが現実的な着地点だろう。
「表面化した5年前と違いEUは対応力を強化した。市場にはデフォルトの可能性が織り込まれている」(証券業界)
29日の東京株式市場は、ギリシャの債務不履行(デフォルト)・ユーロ圏離脱の懸念が重しとなり、大幅下落となった。日経平均株価の終値は今年最大幅の下落である前日比596円20銭安の2万109円95銭。ギリシャのユーロ圏離脱やデフォルトが現実味を帯びてきたことで投資家の心理は悪化。株式市場は不透明感を増しつつある。
日経平均株価は取引開始から先週末比400円超のマイナスでスタート。ギリシャ問題により為替相場が円高に振れたことや、5月の鉱工業生産指数が市場予想を下回ったこともあり、下落幅は一時600円超に拡大。先週一週間で株価が大幅に上昇し、やや過熱感が漂っていたこともマイナスに作用した。
ただ、ギリシャ問題の世界金融市場に与える影響について、証券業界では楽観視する意見が多い。「ギリシャ問題が表面化した5年前と違い欧州連合(EU)は対応力を強化した。市場にはデフォルトの可能性が織り込まれている」と見るからだ。ある証券業界関係者は「仮にギリシャがユーロから離脱しても、これを“奇貨”としてEUが強固になれば、むしろユーロの買い戻しや欧州株の上昇につながる」と述べる。
ただ「市場への織り込みが進んでいる」と言われていたギリシャ問題が、今回大きな株価下落を導いたことも事実だ。実際にギリシャがデフォルト・ユーロ離脱となった時に市場は落ち着いていられるのか―。火種はまだくすぶり続けている。
日刊工業新聞2015年06月30日 2面