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化学業界で屈指の業績、東ソーの強さはとてもシンプルだった

山本社長インタビュー。ニッチ戦略と安定操業
化学業界で屈指の業績、東ソーの強さはとてもシンプルだった

山本寿宣氏

 ―2018年の世界経済をどう予想しますか。
 「景気は悪くない。需要は堅調だ。政治的混乱から生じる経済環境への影響が一番気になるところだ。加えて、中国の環境規制が今後どのような形で現れるかが焦点だ。中国の中央政府は雇用問題も抱えているので、経済が停滞するようなやり方は避けたいはずで、雇用と環境問題を両立させなければならない。それがうまくいかないと、どちらへ転ぶか分からない」

 ―18年度の事業方針は。
 「(石油化学などの)『コモディティー』は基盤固めで、人材を含めて効率化のための投資を行う。(高機能材料などの)『スペシャリティー』はおかげさまで(自動車排ガス浄化触媒用途の)ハイシリカゼオライトや(歯科材料の)ジルコニア、(分離精製剤)トヨパールなどの需要が旺盛なので、積極的な投資を継続する。また、研究員を海外へ送り始めており、産学官の研究も進めている。その中でいろいろな題材を見つけて、うまくいけばM&A(合併・買収)につなげる」

 ―ハイシリカゼオライト事業はこれまでディーゼル車向けがけん引役となり、国内外で能力増強を進めています。ただ最近、世界的にディーゼル車への逆風が強まっています。
 「25年頃までは引き続き需要増加の動きだ。それ以降にEV(電気自動車)などが出てくる問題はあるが、トラックやバスは引き続きディーゼル車で変わらない。従来の車も使用するのですぐになくなることはない。ただ、EVの流れは止めることはできないから、我々としてどうするかという課題はある」

 ―化学業界で屈指の業績(17年度上期の売上高営業利益率13・9%)を上げています。
 「約30年前にバブルがはじけて3年間赤字を出して、立ち直るために苦労した。赤字で将来性のない事業は全部やめてきた。今は赤字の事業がほとんどない。(11年の)塩ビの事故以来トラブルのない操業を徹底しているので、他社のトラブルで製品価格が高止まりしている。それらが大きく功を奏した」

【記者の目】
 幸か不幸か同業他社より早く選択と集中を強いられた結果、今や指折りの高収益企業となった。総合化学の一角だが、実際はニッチ戦略が好業績の秘訣(ひけつ)。一方で、今後の課題もまたニッチゆえのジレンマだ。EVなど大きな産業構造の変化で市場自体が縮小・消失しかねない。研究開発とM&Aに一層力を注ぎ、常に勝てる市場を探し続けなければならない。
(鈴木岳志)
日刊工業新聞2018年1月16日
鈴木岳志
鈴木岳志 Suzuki Takeshi 編集局第一産業部 編集委員
化学業界で高収益企業の代表格と言えば信越化学工業だが、それに次ぐ勢いだ。2017年3月期の売上高営業利益率は15.0%だった。総花的にならず、勝てる市場に絞って重点投資する姿勢が奏功している。ただ、それだけでなく、製造業に必須な安心・安全の取り組みが高収益の秘訣となっている。化学プラントの設備トラブルは最近も多く、供給減が市況高を引き起こす。同業他社のトラブルを横目に、安定操業で良好なスプレッド(利ザヤ)を享受できる。安心・安全こそが最高の稼ぎ頭と言える。

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