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どうなるの?商工中金の完全民営化

4年後に実行判断、ビジネスモデル確立検証
どうなるの?商工中金の完全民営化

昨年11月の初会合。世耕弘成経産相(左)と座長の川村大和総研副理事長

 不正融資問題を起こした商工中金の今後の姿について、経済産業省の有識者会議「商工中金の在り方検討会」(川村雄介座長=大和総研副理事長)は11日、第7回会合を開き、4年後に完全民営化への移行を判断すべきだとした提言をまとめた。完全民営化は、4年間の改革期間の後、新たなビジネスモデルなどが確立されたかを検証して判断するよう求めた。

 ビジネスモデルのあり方については、地域金融機関と連携・協業しながら、政府系金融機関として役割を発揮すべきだとした。その手法として、企業に対する課題解決型の提案や、きめ細かな経営改善など金融機関本来の機能の強化とともに、融資業務と出資業務の中間に相当するミドルリスク業務などの取り組みを挙げた。

 問題となった危機対応業務については、現行業務から災害対応を除き全面撤退し、政府が経済「危機」と認定した危機事象「デフレ脱却等」を廃止すべきだとした。

 加えて今後の政策目的を「真の危機時における流動性供給」に絞り込み、その原則的な時限を1年(延長しても2年)とするなど抜本的な見直しを提言した。

 ガバナンス強化については、代表取締役や過半以上の社外取締役などを含めた外部人材の積極登用や、外部に独立性の高い第三者委員会を設置することなどを盛り込んだ。

 会合で神戸大学経済経営研究所の家森信善教授は「モデル転換型の民営化によって、中小企業や地域経済にとってプラスになる」とした。

 提言の取りまとめを受け、世耕弘成経産相は同日の会見で「地域金融改革の先兵として、今後4年間全力で注力させるという提言は非常に有益だ」との認識を示した。

 また、商工中金が今後取り組む改革に向けて「しっかりと監督していく」との意気込みを示した。次期社長については「方向性に沿ったふさわしい人物を、民間(出身者で)経験がある方からできるだけ早期に選定したい」と述べるにとどめた。
               
日刊工業新聞2018年1月12日
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
そもそも小泉政権の時に完全民営化が決まっていた政府系金融機関を、危機対応を理由に延期し続けてきた政府与党の方針には疑問を持たざるを得ない。危機対応融資は、信用保証制度の拡充などの工夫があれば民間で十分可能だ。政府系金融機関や官民ファンドが跋扈し、市場の規律を持たない投融資が行われている限り、東京が一流の金融センターになるのは無理だ。

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