「スマートホーム3.0」はいつやってくる?
各社が目指す住宅の将来像
IoT(モノのインターネット)技術の活用がさまざまな分野で進む中、住宅分野でもIoT化によって快適で安全・安心な住まいを実現しようとする動きが目立つ。クラウドコンピューティングや人工知能(AI)の発達により、膨大なデータの収集と高度な解析が可能になった。家電や建材、太陽光発電システムなどを単にネットワーク化するだけでなく、複数の機器を連動させることもできるようになってきた。米アマゾンの「エコー」やグーグルの「グーグルホーム」など、AIスピーカーの相次ぐ登場で、一般消費者もIoT化の利点がイメージしやすくなり、IoTを活用したサービスを商用化する動きも加速している。各社の取り組みを追った。
大和ハウス工業は主力の一戸建て住宅「ジーヴォΣ(シグマ)」にIoTサービスを搭載し、2018年上期に発売する予定。グーグルホームと家電コントローラー、ドアなどに取り付けるセンサー、見守り用のカメラなどをパッケージ化。さらにユーザーの希望に応じて電動カーテンや照明、テレビなどを音声認識で操作できるようセッティングして提供する。同社が機器同士の安全な連携を担保し、アフターサービスも含めて提供する。
サービスの特徴は生活者視点で暮らしのシーンをとらえ、利便性を向上することに主眼を置いた点。起床時の天候に応じて自動的にカーテンが開いたり照明が付いたり、グーグルホームに「おやすみ」と話しかけると自動でテレビが消えて消灯する、といった具合だ。
とはいえ、「やみくもに利便性向上を優先させるわけではない」(有吉善則取締役常務執行役員)。人ができることを機械にさせるだけでは意味がなく、「(高齢化などにより)住む人ができないこと、できなくなっていくことをサポートする」考えを示す。
現在は大阪府吹田市などの住宅展示場で、グーグルホームを活用したIoT住宅の実証実験を進めている。来場者にサービスを体感してもらい、使いやすさなどを検証し、サービス拡充に生かす。大友浩嗣取締役常務執行役員は「家電の制御だけでなく、住まいのエネルギー消費の最適化を含めた『IoT住宅』を考えている」と将来像を示す。
LIXILは玄関ドアや窓シャッターなどの建材とAIスピーカーを連携させるIoTシステムを18年4月に発売する。センサーや音声認識による機器類の自動制御、留守宅の見守り、建材や家電の遠隔操作などさまざまな機能で快適な暮らしを支援する。
同社は09年から人やモノ、家、社会がネットワークで結ばれた「住生活の未来」に関する研究に着手。13年には既存の一戸建て住宅を改修し、実証実験を重ねてきた。将来的には、トイレで人が倒れたのを検知して自動的に救急車を呼ぶ仕組みなど、地域と連携したサービスの提供も視野に入れている。
IoT化の流れは賃貸アパートにも及ぶ。レオパレス21はグラモ(東京都豊島区)と組み、グラモの家電制御機器をベースにした「レオリモコン」や、スマートロック「レオロック」を新築アパートに順次搭載している。
レオリモコンは住戸内に標準で備え付けられている家電などをスマートフォンから遠隔操作できる。レオロックはテンキーによる暗証番号入力のほか、スマートフォンによる施錠・解錠が可能。遠隔から暗証番号を割り振れるため、入居者変更の際もカギの受け渡しに手間取ることがなくなる。両機器の搭載により、施錠・解錠と家電や照明の制御を連動させることも可能だ。
1月にはグラモが開発中のAIスピーカーを新築全戸に標準装備する予定。賃貸アパートをIoT化する端末の設置数としては国内最大となる見通しだ。
ミサワホームとミサワホーム総合研究所(東京都杉並区)は、東京都渋谷区の住宅展示場内のモデルハウスに設置したIoT機器を公開している。一般消費者がIoT機器・サービスを体験する機会を設け、ニーズを探るほか、住宅でのIoT機器活用の安全性を検証する機会として役立てる。
住宅内の設備機器を、安全に連携させるには、機器同士をつなぐネットワークや指示系統を、あらかじめ整理しておく必要がある。
ところが、現在は標準規格がないため、機器への指示に優先順位を付けられず、指示が衝突して機器に不具合が発生したり、事故が起こったりする可能性がある。
そこで、産業技術総合研究所(産総研)と共同で、IoT住宅の機能安全に関する国際標準企画案の策定を進めてきた。
このほど、国際電気標準会議(IEC)において「IEC63168」の番号が付与され、日本発の国際標準規格として発行される見通しが立った。今後は、安全ガイドラインの策定にも力を入れていく。
「これまでは家庭に電力を供給していれば終わりだった。今は、家の中にいかに入り込むかが課題になっている」(大手電力幹部)。
電力供給事業は安定収益が見込める事業だったが、16年4月の電力小売り全面自由化以降、景色が一変した。長期的にも人口減が確実で、需要減少は避けられない。電力販売の減少を補う新たな収益源の開拓が重くのしかかる中、各社が注力するのがスマートホーム分野だ。
東京電力エナジーパートナーはソニーモバイルコミュニケーションズと住宅向けサービスを8月に開始。ソニーモバイルの機器を家庭に取り付けると、ドアの開閉やエアコンの稼働状況などをスマホに通知する。
中部電力も家庭のエアコンを自動制御し、電力使用量を抑制するための実証実験を都市再生機構(UR)などと始めた。
関西電力はインテルが実施する家庭向けIoTサービスの実証試験に参画。九州電力はAI搭載スピーカーの事業化を目指す。声で家電を操作できるほか、防犯機能も備える仕様を想定する。
東電EPが2000万人の顧客を抱えるように電力会社の顧客基盤は厚い。取り組みは始まったばかりだが、家庭の景色を一変させる可能性を秘める。
課題はITというスピード重視の世界でどう立ち回るか。スピードよりも安全性が重視されてきた電力会社にとっての障壁となりそうだ。
大和ハウス工業/できないことをサポート
大和ハウス工業は主力の一戸建て住宅「ジーヴォΣ(シグマ)」にIoTサービスを搭載し、2018年上期に発売する予定。グーグルホームと家電コントローラー、ドアなどに取り付けるセンサー、見守り用のカメラなどをパッケージ化。さらにユーザーの希望に応じて電動カーテンや照明、テレビなどを音声認識で操作できるようセッティングして提供する。同社が機器同士の安全な連携を担保し、アフターサービスも含めて提供する。
サービスの特徴は生活者視点で暮らしのシーンをとらえ、利便性を向上することに主眼を置いた点。起床時の天候に応じて自動的にカーテンが開いたり照明が付いたり、グーグルホームに「おやすみ」と話しかけると自動でテレビが消えて消灯する、といった具合だ。
とはいえ、「やみくもに利便性向上を優先させるわけではない」(有吉善則取締役常務執行役員)。人ができることを機械にさせるだけでは意味がなく、「(高齢化などにより)住む人ができないこと、できなくなっていくことをサポートする」考えを示す。
現在は大阪府吹田市などの住宅展示場で、グーグルホームを活用したIoT住宅の実証実験を進めている。来場者にサービスを体感してもらい、使いやすさなどを検証し、サービス拡充に生かす。大友浩嗣取締役常務執行役員は「家電の制御だけでなく、住まいのエネルギー消費の最適化を含めた『IoT住宅』を考えている」と将来像を示す。
LIXIL・レオパレス21/留守宅見守り・スマホで施錠&解錠
LIXILは玄関ドアや窓シャッターなどの建材とAIスピーカーを連携させるIoTシステムを18年4月に発売する。センサーや音声認識による機器類の自動制御、留守宅の見守り、建材や家電の遠隔操作などさまざまな機能で快適な暮らしを支援する。
同社は09年から人やモノ、家、社会がネットワークで結ばれた「住生活の未来」に関する研究に着手。13年には既存の一戸建て住宅を改修し、実証実験を重ねてきた。将来的には、トイレで人が倒れたのを検知して自動的に救急車を呼ぶ仕組みなど、地域と連携したサービスの提供も視野に入れている。
IoT化の流れは賃貸アパートにも及ぶ。レオパレス21はグラモ(東京都豊島区)と組み、グラモの家電制御機器をベースにした「レオリモコン」や、スマートロック「レオロック」を新築アパートに順次搭載している。
レオリモコンは住戸内に標準で備え付けられている家電などをスマートフォンから遠隔操作できる。レオロックはテンキーによる暗証番号入力のほか、スマートフォンによる施錠・解錠が可能。遠隔から暗証番号を割り振れるため、入居者変更の際もカギの受け渡しに手間取ることがなくなる。両機器の搭載により、施錠・解錠と家電や照明の制御を連動させることも可能だ。
1月にはグラモが開発中のAIスピーカーを新築全戸に標準装備する予定。賃貸アパートをIoT化する端末の設置数としては国内最大となる見通しだ。
ミサワホーム/機器連携の安全追求
ミサワホームとミサワホーム総合研究所(東京都杉並区)は、東京都渋谷区の住宅展示場内のモデルハウスに設置したIoT機器を公開している。一般消費者がIoT機器・サービスを体験する機会を設け、ニーズを探るほか、住宅でのIoT機器活用の安全性を検証する機会として役立てる。
住宅内の設備機器を、安全に連携させるには、機器同士をつなぐネットワークや指示系統を、あらかじめ整理しておく必要がある。
ところが、現在は標準規格がないため、機器への指示に優先順位を付けられず、指示が衝突して機器に不具合が発生したり、事故が起こったりする可能性がある。
そこで、産業技術総合研究所(産総研)と共同で、IoT住宅の機能安全に関する国際標準企画案の策定を進めてきた。
このほど、国際電気標準会議(IEC)において「IEC63168」の番号が付与され、日本発の国際標準規格として発行される見通しが立った。今後は、安全ガイドラインの策定にも力を入れていく。
大手電力各社/スマートホームに期待
「これまでは家庭に電力を供給していれば終わりだった。今は、家の中にいかに入り込むかが課題になっている」(大手電力幹部)。
電力供給事業は安定収益が見込める事業だったが、16年4月の電力小売り全面自由化以降、景色が一変した。長期的にも人口減が確実で、需要減少は避けられない。電力販売の減少を補う新たな収益源の開拓が重くのしかかる中、各社が注力するのがスマートホーム分野だ。
東京電力エナジーパートナーはソニーモバイルコミュニケーションズと住宅向けサービスを8月に開始。ソニーモバイルの機器を家庭に取り付けると、ドアの開閉やエアコンの稼働状況などをスマホに通知する。
中部電力も家庭のエアコンを自動制御し、電力使用量を抑制するための実証実験を都市再生機構(UR)などと始めた。
関西電力はインテルが実施する家庭向けIoTサービスの実証試験に参画。九州電力はAI搭載スピーカーの事業化を目指す。声で家電を操作できるほか、防犯機能も備える仕様を想定する。
東電EPが2000万人の顧客を抱えるように電力会社の顧客基盤は厚い。取り組みは始まったばかりだが、家庭の景色を一変させる可能性を秘める。
課題はITというスピード重視の世界でどう立ち回るか。スピードよりも安全性が重視されてきた電力会社にとっての障壁となりそうだ。
日刊工業新聞2018年1月4日