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ヒトの胎盤になる幹細胞を作製、不妊治療に期待かかる

 東北大学大学院医学系研究科の有馬隆博教授らは、ヒトの胎盤に分化できる幹細胞(TS細胞)を作製した。胎盤を構成する細胞内で機能している遺伝子を網羅的に解析し、細胞の増殖制御因子を特定することで成功した。ヒト胎盤の発生や機能の研究に役立つほか、生殖医療や再生医療などへの応用が期待される。成果は米科学誌ステム・セル・リポーツ電子版で公開された。

胎盤を構成する細胞のうち「トロフォブラスト」は高い増殖能と多分化能を持つ。研究チームは、この細胞の遺伝子を網羅的に解析し、生体内で増殖を制御している因子を特定した。この情報をもとに培養条件を設定し、この細胞からヒトTS細胞を作製した。

作製したヒトTS細胞は、5カ月以上に渡って培養でき、長期培養後もホルモン分泌や栄養・ガス交換の機能や、子宮内で母体の血管の再構築を行う細胞への分化能があった。

ヒトTS細胞は、現在iPS細胞(人工多能性幹細胞)で進められているような、他人の細胞を使う「他家移植」用の細胞ストックと同じコンセプトの活用法も可能という。
                  


日刊工業新聞2017年12月18日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
有馬教授によると、「着床障害や不妊症、流産の生殖医療領域で活用が期待される。人工的に胎盤が作れれば胎児に影響をあたえる化合物や薬剤のスクリーニングなどにも応用可能だ」という。

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