米カリフォルニア州シリコンバレーにあるEl Camino Hospital。ここは先進的な取組みを行う病院として知らている。エントランスを抜けると、まるでホテルのように高級感があふれ落ち着いた空間が広がる。中庭からは光が差し込み、患者も医師もスタッフもゆったりと過ごしている。ちなみに中庭の他に病院エントランス脇には「Meditation garden（瞑想の庭）」という珍しい名前のついた庭も。病院内には「Meditation room（瞑想部屋）」もあり、静かにくつろげる場所がたくさん用意されている。

　さぞ高所得者向けの病院なのだろうと思い、案内してくれた広報担当のジェニファー・スリフト（Jennifer Thrift）さんに尋ねてみると「そんなことはなく、すべての人に開かれている病院」なのだと笑顔で答えてくれた。エントランスを抜けスタッフ専用エリアに入ると、打って変わって普通の病院のように機能的で清潔感のある造りになった。床の色で患者エリアと従業員専用エリアを分けているという。

　案内してもらいながら歩いていると、一台のロボットが走ってきた。Aethon社の運搬ロボット、ＴＵＧだ。オフィス用複合機に似ている形と大きさ。速度は人がゆっくり歩いているくらいで、とても静かに走る。障害物があると止まり、避けて走行する。少し意地悪してＴＵＧの前に急に飛び出してみたが、しっかり止まる。エレベーターも自律操作で乗れ、ドアも開けることができる。

　ＴＵＧは２００９年より導入され、現在１９台が稼働している。薬や医療機器、試料からリネンや食事、廃棄物までも運搬する。セキュリティーキーがついており、開け閉めできるのは担当者のみ。運搬する場合は操作モニターで使用するＴＵＧを選択し、行き先を設定して「go」ボタンを押すのみと簡単だ。充電が切れそうになれば自分でドッグに戻り充電する。導入から6年が経過しているが、大きなトラブルなどはないという。

　「ＴＵＧの評判はとても良く、海外からも視察が来ます。また、病院内のスタッフもＴＵＧを使用することで運搬のために広い病院内を動き回ることがなくなりました」とジェニファーJenniferさんは話す。

　また、同病院ではＴＵＧのほかに手術ロボット「daVinci」も導入しているほか、「Vocera」という通信機器を使用しスタッフ間のコンタクトを円滑にしている。BOCERを胸に付け、ボタンを押しながらマイクに向かって連絡したい相手の名前を告げると、相手を自動で呼び出してくれる。作業をしながらでもすぐに連絡でき、ハンズフリーで会話もできるため重宝されている。

　ロボットを病院で導入すると聞くと、どうしても冷たいイメージが付きまとう。しかし同病院では運搬作業はロボットに任せ、余裕ができた分人間は他の作業に注力でき、ホスピタリティ向上につながっていた。さらにロボットが本当に自然に生活の一部に溶け込んでいた。これはロボットの動きが穏やかであるとともに、人間の環境を大きく変えることなく使用できているからだろう。