FIT制度の思わぬ余波。製紙業界に国産原料値上がりが直撃!

バイオマス発電所が稼働し、木質バイオ原料の奪い合いが起きる

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製材残材の供給が減り、間伐材はバイオマス発電の燃料チップと競合するようになった
 製紙業界の原料調達が円安による輸入材のコストアップに加え、国産材でも値上がりに見舞われている。2014年春の消費増税後、新設住宅着工戸数とともに製材需要が落ち込んで端材の供給が減り、間伐材など未利用材も全国各地で稼働し始めた木質バイオマス発電所の燃料チップ用途と競合するようになったためだ。製紙各社は足元で円安分を何とか製品価格に転嫁し、収益を確保している状況だけに、厳しいダブルパンチとなっている。

 日本製紙連合会がまとめた14年のパルプ材入荷量は前年比4・1%増の1631万9682トン(絶乾重量)で、輸入材比率は同2・2ポイント増の69・9%と3年ぶりに上昇した。ここ数年の円安で、製紙各社は国内調達比率を徐々に高めてきたが、11年の70・6%にる水準まで逆戻りした格好。国内調達が滞り、割高となった輸入材に依存せざるを得ない状況がうかがえる。直近の5月は、速報ベースで輸入材比率72・0%となっている。

 国産材の需給タイト化は、農林水産統計の木材価格に現れている。同統計によると、チップ向け針葉樹原木価格は1立方メートル当たり全国平均で4月に前月比200円高の5100円を記録。翌5月も同100円高の5200円と続伸した。

 特徴的なのは地域によって急激な値動きがあること。例えば秋田県の価格は4月に同500円高の5400円、5月に同400円高の5800円。また、島根県は4月が同1100円高の7100円、5月が同200円高の7300円で、昨夏には8000円台だったこともある。宮崎県の5月は値動きなしの6700円だが、4月は同2200円高と急騰している。

 製紙連はこの原因について、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)により相次いで立ち上がる木質バイオマス発電所の立地と相関があるとみる。木質バイオマス発電では促進策として、15年度から出力2000キロワット未満の発電設備について未利用材を使う場合、1キロワット時当たり40円で買い取る新カテゴリーも設けられた。

 さらに地域振興の観点で多くの地元自治体がバイオマス発電所の未利用材調達に対し、1立方メートル当たり1000―3000円の搬出費補助を実施していることを問題視。「実際は未利用材と既存用途材の木材を必ずしも厳密に区分せずに適用され、木材価格の高騰を招いている」(製紙連)とする。

 FITの木質バイオマス発電に関しては、使用材によって電力買い取り単価が異なることもあり、林野庁は「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」を制定。その中には「既存利用に影響を及ぼさないよう適切に配慮していく必要がある」と記されている。

 だが、製紙業界を所管する経済産業省は「チップ材の需給逼迫(ひっぱく)は一部の地域に限られている」(紙業服飾品課)、林野庁は「(ガイドラインに触れるような)大きな混乱はない」(木材利用課)と様子見状態。当面、製紙業界は徹底したコストダウンを進める自助努力しか策はないようだ。

日刊工業新聞2015年06月26日 素材・ヘルスケア・環境面

COMMENT

村上毅
編集局ニュースセンター
デスク

 最近、食品などとともに、紙の値上げ記事をよく見かける。その背景に原料調達価格の高騰がある。FIT制度を追い風に、木質バイオマス発電の操業ラッシュにある。発電設備を安定的に操業するために原料の確保は不可欠。間伐材など未利用資源だけでは足りない状況で、原料の奪い合いが起きているようだ。

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