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安全な製造現場とは?潜む危険を体験できる「出張教室」が話題に

「絶対に手を出さない」―機械に体が引っ張られる感覚や衝撃の強さを味わえる
安全な製造現場とは?潜む危険を体験できる「出張教室」が話題に

機械への巻き込まれ事故などを体感する王子コンテナーの新入社員ら

 真岡製作所(栃木県真岡市)が展開する、製造現場の潜在的危険を体験できるサービスの利用者が伸びている。企業・団体を対象とした「出張体感サービス」で、利用者は初年度の2013年度が800人、14年度が1400人超、15年度は2000人を突破する見通し。顧客は中・四国や東北地方などに広がり、自社製の安全体感装置やゲーム感覚の体感教育が人気の一因とみられる。
 
 段ボールメーカー、王子コンテナー(東京都中央区)が都内で開いた新入社員向け体感教育に、真岡製作所の指導員が駆け付けた。作業服やシャツ姿の男女計28人が全国から集まり、「Vベルト・ローラーチェーン巻き込まれ」「搬送ベルトコンベア巻き込まれ」「エアシリンダー残圧挟まれ」の三つを体感した。

 ベルトなどに体が巻き込まれると、骨折や手の切断につながりかねない。指に見立てた割り箸や、腕の代わりに厚紙を挟んだ治具を用いて、体が引っ張られる感覚や衝撃の強さを味わった。「絶対に手を出さない」「油の漏れがあったら機械を必ず止める」「行動は一呼吸置いてから」などと指導した。

 王子コンテナーは全従業員を対象に安全体感教育を進めている。「労災ゼロへの取り組みを徹底するため、新入社員には入社2カ月たつタイミングが最適と考えた」(技術本部安全部)。

 産業界では安全の重要性が叫ばれながらも労働災害が減少していない。厚生労働省がまとめた14年の労災による死亡者数(速報値)は前年比2・6%増、死傷者も同1・2%増。死傷者が業種別で最も多い製造業では、機械などによる挟まれや巻き込まれが多い。

 真岡製作所は自動車用鋳鉄部品メーカーで、グループ企業のMC興産が出張体感サービスと「安全体感技塾」を手がける。同塾利用者は10年からの累計で約4000人。危険に関する全55項目のうち最大12項目を選び体感教育が受けられる。大企業の同様のサービスより価格が手頃なのが特徴だ。

 通常は顧客企業の従業員が同社で教育を受けるが、出張体感の利用者増は時間、コストの節約や現場に即した指導への期待が要因のようだ。従業員の世代交代や安全活動のマンネリ化、個社の取り組みの限界などが指摘される中、安全確保には「機械の癖をつかみ人の感性を磨くことが重要」(MC興産)という。
日刊工業新聞2015年06月26日 列島ネット面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
 以前、ローラー状の機械への「巻き込まれ」を体感したことがある。動いた設備に細長い棒を差し込むのだが、棒が吸い込まれるようにものすごい勢いで引っ張られて、体が前につんのめった。あまりの威力に冷や汗をかいたのを思い出した。  製造現場では通常の操業ではなく、設備の点検・整備といった「非定常作業」時に設備に設備を止めなかったことから「挟まれ」「巻き込まれ」るケースが多く、それが重大災害を引き起こしている。安全な製造現場の構築は製造業の「製造実力」に直結する。そのためにKY(危険予知)の周知徹底が欠かせない。

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