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ロボット展最終日、居残り組は少しだけタフに

ロボット展最終日、居残り組は少しだけタフに

秋田県大ブース、かかしロボを修理中

 最終日に向け総仕上げ-。国際ロボット展は展示時間が終わった後が技術者の勝負時間だ。コーヒー片手に夜遅くまでロボットやプログラムコードと格闘している。準備日の28日からの4日間で、パフォーマンスが格段に上がるロボットは少なくない。

 1日夜7時半、展示時間が終わった後も、10社以上のブースでモーター音が響いている。最終日を前に用意してきたパフォーマンスをすべて出し切るためにロボットの調整が続いている。ロボットは実際に会場で使うと本質的ではない細かなバグがたくさん出てくる。

 ロボットを顧客に収めるときは調整時間を十分とれるが、展示会の設営は突貫工事になりがちだ。準備日はたった1日で、何台ものロボットを立ち上げなければならない。そのため夜も改良を繰り返し、初日、二日目、三日目と日を追うごとに展示内容がレベルアップしていく。

 大学のロボットブースも同様だ。芝浦工業大学のブースでは大学院生二人と学部生一人の三人が居残りでロボットと格闘している。芝工大大学院の池田貴政さんは「明日は完全なシステムを見せたい」と気を引き締める。

 芝工大は東京都立産業技術研究センターやロボットサービスイニシアチブ(RSi)などと合計6ブースで連携して、ロボットネットワークシステムを出展している。各ブースのセンサーで混雑状況や人数を計測し、接客ロボットの稼働状況をネットワークで共有する。

 アンケート集計ロボやレシピ提案ロボなど、それぞれのロボットは動くものの、ブース来場者の人数などデータの一部がサーバーに上がってこなかった。Wi-fiなど混雑する通信周波数帯を切り替えるなど、対策を試してきたが原因は他にあった。「通信エラーやサーバーの問題ではなく、データが送れていなかった。このプログラムがうまくいけば、他のブースのロボットに移植してシステムを完成させる」。
芝浦工大ブース、ネットワークのバグ探し


 秋田県立大学のブースでは齋藤敬准教授と学生3人がロボットを修理する。齋藤准教授は「かかしロボ『初代しろやぎ』は17年間動いている。明日はここ数年で最高のコンディションを見せられる」と目を細める。

 「しろやぎマークⅡ」は初日は一部完成しておらず、ペットボトルのフタと締結バンドで補強していた。一般展示時間が終わるとホームセンターに部材を買いに走って修理した。だが3日目に小学生が操縦したところ、伸縮アームを限界以上に伸ばしてしまい、アームが壊れた。最終日前夜も居残りが決まった瞬間だった。

 齋藤准教授は「親子ともに本当に申し訳なさそうにしていた。だが壊れる機械を子どもに渡した我々が悪い」と振り返る。

 ロボットは壊れる度にタフになる。新しい故障メカニズムを特定して対策するためだ。居残りで機体をなおし、結果的にコンディションは最高になった。

 ただ例年より来場者が増えてロボットたちは酷使気味だ。しかも最終日は一般の家族連れが中心になる。「最後は存分に動かして壊してもらいたい。ロボットに興味を持って、この分野に進む子どもが一人でも増えるなら本望」という。

 連日居残りした学生も収穫があったようだ。昼間は忙しくてブースから離れられないが、展示終了後は余裕ができる。今回のロボット展はAIやIoTを使って、異分野とロボットをコラボレーションさせる技術がトレンドの一つだった。

 4年生の榊原智之さんはデンソーの小型ロボ「コボッタ」に目を付けた。「研究室に一台ほしい。滅菌ブース内に設置して細胞実験の作業を自動化する」と斎藤准教授に所望する。研究室ではバイオとロボットの両方を研究してきた。うまく使いこなす自信も、やる気もある。

 初日と最終日で作業精度が向上していたり、新しい機能が追加されていたりと、会場のロボットは日々進化している。最終日には、四日間でスクラップビルドを繰り返し、少しだけタフになったロボットと技術者が、あなたを迎えてくれるかもしれない。
最高コンディションのかかしロボ「初代しろやぎ」と「しろやぎマークⅡ」(奥)
ニュースイッチオリジナル
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
今年は大学の居残り組が少なく、企業の居残り組が多かったです。パフォーマンスが日に日に向上していて素晴らしいなと思ってしまいます。ただ初日のパフォーマンスが低いわけではなく、自動化工程の連携範囲が広がっていたり、機能が追加されていたりと見所が増えています。社名が出せないのが残念です。でも大きなブースはだいたい誰かが頑張っています。

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