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経営者は遊び心を持て!空飛ぶ怪鳥・松本謙一の人間学

サクラグローバルホールディング会長、初めての経営論
 サクラグローバルホールディングの会長として、1973 年(昭和 48年)から 44 年間、経営の第一線に立ち続けてきた松本謙一氏。その経営者としての数々の経験や、そこから導き出された人間学、さらに生き様にいたるまで、松本氏を知る人たちへの取材も交えて書き上げた「経営者は遊び心を持て~空飛ぶ怪鳥・松本謙一の人間学~」が発刊された。

 必ずしも順調な日々ばかりでなかった自らの生い立ち、業界の先駆けとなった海外進出、巨大企業との提携・買収交渉など、これまで語られることのなかった医療機器業界の歴史に関する貴重な証言の数々が盛り込まれている。
 
 松本会長が本の冒頭で記した文を紹介する。

 そろそろ本を出版して、己の考え方や経験を書き残しておいてはどうかと、以前からしばしばお勧めを受けていた。しかし、まだまだ自分にはやりたいことがある。各方面からの様々な依頼も次から次で、手帳は何ヶ月も先まで黒字、赤字、青字、緑字でびっしり。とても自分事を本にする気にはなれなかった。第一、自慢噺の羅列ととられるのは、何にもまして嫌だった。

 ところが数ヶ月前、ふと思い直した。その動機を箇条書きにする。

一、歴史は「ヒト・モノ・カネ(経営の三要素)」では買えないものであることに、あらためて気づいたこと。

二、直近の時流に則した、今の自分なりの「キーワード」を残しておきたかったこと。
①持続的成長(Sustainable Growth)
②多様性に対応した戦略(Strategy to meet with Diversification)

三、先人の築いた道が未来への道を切り拓くために不可欠なことを示したかったこと。


 この本を通じて、これら三点をご理解いただければ、幸いに思う。
「経営者は遊び心を持て~空飛ぶ怪鳥・松本謙一の人間学~」


不変と革新


 サクラグローバルホールディング(東京都中央区)は、医療現場の感染防止に寄与する洗浄・滅菌事業と、がん診断の迅速化・効率化につながる病理診断事業が2本柱。日本の医療機器産業の“草分け的存在”として、世界に良質な医療機器を供給。「医療産業の振興と発展」という社会的使命を担ってきた。

 明治4年(1871年)、東京・日本橋で創業したのが始まり。ただ前身をさかのぼると、今から約400年以上も前、泉州堺の薬種商が源流とされる。業祖・松本久左衛門氏から数えて、17代目となる松本謙一会長は「経営者の先見性があった。時代や社会の動きに的確に対応してきた」と推察する。

 連綿と受け継がれてきたことに「顧客を大事に、従業員を大事にする」という経営哲学がある。人を大切にするという思いが、多様な医療機器を生み出す原動力だ。

サクラグローバルホールディングの事業

 社会構造の変化に合わせて、事業体も変えてきた。顕微鏡の国産化というニーズを受けて、1914年に国産初の顕微鏡「エム・カテラ」を商品化。その後、顕微鏡事業は74年に撤退することとなるが、約60年間で培ったノウハウが、今の病理診断、病理標本作製の基礎となっている。

 社是として心がけているのはステークホルダーである現場との関わりだ。「世の中のニーズは移り変わっている。現場が何に困っているかは、現場に行かなければわからない。いかに感性を磨いて対応するか。何事もやってみなければわからない」(松本会長)。

 松本会長は「メディカルデバイス(医療機器)だけでなく、本来の医療技術を生かし、産業関連分野にも躍進する新しいヘルスケア企業像を目指す」と意気込む。医療機器の国産化の夢とともに創業した同社。トータルな健康産業への脱皮という夢への挑戦は続く。
≪企業概要≫
今から約400年前、泉州堺の薬種商が源流。1871年に薬種商「いわしや松本市左衛門店」で医療機械の専門組織が創設され、これが現サクラグローバルホールディングの創業となる。1914年には国産初の顕微鏡を開発。新規事業への参入や企業のM&A(合併・買収)にも積極的で、日米欧3極を軸に新興国地域への展開も推進する。09年から今の持ち株会社制を採用し、洗浄・滅菌装置を手がける「サクラ精機グループ」と、病理診断を手がける「サクラファインテックグループ」を中心とする事業体で構成する。

2016年8月4日

矢島俊克
矢島俊克 Yajima Toshikatsu 出版局書籍編集部 編集
医療機器業界は新興国の成長や新規参入の動きなど業界の動向が目まぐるしい。半世紀近くにわたり、第一線で業界を見続けてきたのが松本会長だ。本書「経営者は遊び心を持て ~空飛ぶ怪鳥・松本謙一の人間学~」でも松本会長の金言が盛り込まれている。

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