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ロボットが医師代わりになる未来はすぐそこに

国内でも手術支援ロボットが浸透
ロボットが医師代わりになる未来はすぐそこに

オリンパスの手術支援ロボット

 「患者の負担を軽減する低侵襲な治療の実現には、ロボットの活用が不可欠だ」。消化器内視鏡の世界シェア7割を握るオリンパス。笹宏行社長は、医療機器の高度化に向けてロボット技術に大きな期待を寄せる。

 【後塵拝す】
 オリンパスは現在、消化器内視鏡と多関節処置具を組み合わせた手術支援ロボットシステムを開発中。体内挿入した多関節処置具を医師がモニターを見ながらスティック操作で動かす。がんなどの病変部を切除する低侵襲手術が容易になり、手術時間も短縮できる。開腹せずに体内観察できる消化器内視鏡は世界に普及した日本発の数少ない医療機器であり、ロボット化も海外企業が簡単に入り込めないアドバンテージエリアだ。

 世界の医療現場では米インテュイティブサージカルの腹腔鏡手術支援ロボ「ダヴィンチ」が3000台以上稼働。日本でも既に約200台が導入され、国内企業は大事なユーザーを奪われた。ダヴィンチは日本製の部品が多く使われていることから、“医療界のiPhone(アイフォーン)”と例えられるが、国内企業はモノづくりではもちろん、アイデアで負けた訳でもない。

 医療機器分野では先進機器の許認可に時間がかかり、欧米に比べ市場導入が大幅に遅れる「デバイスラグ」が課題だった。ロボット大国と呼ばれる日本だが、医療ロボで後塵(こうじん)を拝したのはそれが一因だ。

 【潮目変わる】
 医療機器はユーザーである医療従事者のニーズを的確に反映し、さらに現場で改良を繰り返さなければ競争力は高まらない。国内企業はお膝元の市場でそれができなかった。実用化時期が見えなければ、資金繰りが厳しい中小企業やベンチャー企業にとって事業継続が難しく、ロボット技術を持つ企業の参入も活発化しない。

 国内では今、その潮目が変わろうとしている。デンソーは手術時に医師の手を支え、震えや疲れを軽減する手術支援ロボ「アイアームス」の販売を4月に始めた。手術中の医師の動作をセンサーで感知し、ロボットアームが追従してサポートする仕組みだ。

 【審査を簡素化】
 その他にも産学連携による手術ロボの研究開発は多数進められ、今後相次ぎ産声があがる。国が医療機器を成長産業と位置づけ、先進機器の評価体制や治験実施体制を強化する。薬事法も改正され、医薬品・医療機器等法が2014年11月に施行されたのも追い風だ。審査時間の短縮と手続きの簡素化で、医療機器メーカーは「海外ではなく国内に先行投入しやすくなる」と口をそろえる。

 世界に先駆けて超高齢社会に突入する日本。25年には高齢化率が30%を超える。患者や要介護者が増える一方、医師、看護師、介護者の減少も懸念される。全国で格差なく医療の質を維持していくには医師、看護師、介護者を支援するロボットの導入が欠かせない。
(2015年06月23日 総合1)
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
ロボットと共生する社会の連載、最終回となる5回目です。手術支援ロボットは皮肉にもダ・ヴィンチの普及で製品に対する理解と認知、市場形成が進みました。今回の薬事法改正は日本での医療ロボット製品化を後押しするきっかけとして期待がかかります。ただビジネスを加速するには、手術対象となる疾病の拡大や制度改革などがまだまだ必要となりそうです。

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