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病理診断、8K画像をAIで解析。シャープが実証試験

遠隔医療も視野に
病理診断、8K画像をAIで解析。シャープが実証試験

シャープはカイロスに8Kモニターを納入(カイロスの8K硬性内視鏡システム)

 シャープは2017年度内にも、フルハイビジョン(HD)の16倍の解像度を持つ「8K」画像を人工知能(AI)で解析し、がんなどの病理診断に生かす実証試験を始める。肉眼で見えない微細な組織の画像から病変を発見する。同社は実物に近い画像を再現できる8Kの用途をテレビだけでなく医療や防犯、品質検査といった産業用にも普及させる方針。19年度までに公共施設の監視やインフラ点検などにも提案する。

 シャープは9月末、内視鏡手術の一つである腹腔(ふくくう)鏡手術に使われる「8K硬性内視鏡システム」を手がけるカイロス(東京都千代田区)に、8Kモニターを10台納入した。同システムは8Kに対応した内視鏡。シャープにとって同モニターを本格的に受注した初案件となる。

 次の展開として大学などと連携して、医師支援用にディープラーニング(深層学習)などを使った病理診断の実現を目指す。また第5世代移動通信システム(5G)と8Kモニターを組み合わせた遠隔医療も視野に入れる。

 8Kは細胞単位の細かさで、組織の膨らみや色を表示できる。従来は肉眼で発見できなかった小さな腫瘍なども、8K画像とAIを使えば検出できると期待される。がん検診のほか、転移や病変取り残しの確認にも使える。

 シャープは中国で8Kテレビを発売し、日本でも12月に発売する。産業用ではAIと8Kモニターを組み合わせた新事業として、橋などに生じたわずかな歪みを検出したり、遠方の不審者を見分けたりできる8K画像の特徴を生かした提案をしていく。
日刊工業新聞2017年11月1日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
AIは医療や産業向けに応用を競う国際的な流れがある。AI自体は米国企業などが先行する中、シャープは8K画像を活用した提案によって差別化する。20年度にテレビ、モニターとAIや通信機器などを含めた8K関連の事業規模を3000億円に設定している。 (日刊工業新聞大阪支社・錦織承平、平岡乾)

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