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イオンが地域の農業技術伝承―メロンで成功 ブドウ、イチゴで実証開始

特有の栽培技術や品種に新たな息吹
 イオンの子会社で農業事業を展開するイオンアグリ創造は果樹の生産技術や品種の継承を本格化する。今年から兵庫県三木市でブドウの生産技術の継承、島根県安来市で、イチゴの品種の継承に向けて地元生産者と共同で実験生産を始める。地域に根差した生産技術や地域が開発した品種は生産者が減少し、生産が途絶える例も少なくない。イオンアグリが技術や品種を受け継いで地域とともに生産して、地域の重要な資産を残す取り組みだ。
 
 イオンアグリは北海道三笠市の「三笠農場」でメロンの生産を手がけている。同地もかつてはメロン栽培が盛んだったが、現在は数軒の生産農家を残すだけになっているという。一方、同社が三笠農場で地域と協力してメロンを生産し、イオン三笠店で販売したところ、同店のメロン販売が3倍に増加するなど、地域での生産と店舗での販売でシナジーを生んでいる。
 
 こうした実績を生かし、今年から兵庫県三木市で地元から生産技術の供与を受けてブドウの生産を開始する。島根県安来市では島根県が品種を登録しているイチゴの実験生産も始める。安来市で生産するイチゴは、今後三重県いなべ市の「三重いなべ農場」で計画しているイチゴ生産の実験的な役割をもたす。
 
 イオンは全国19カ所の農場で青果物を生産している。これまで生産した青果物はセンターに納入し、店舗に配荷するやり方が中心だったが、最近では農場の近くの店舗に直接納入する量を増やしている。今後は“地産地消”をさらに増やしたい意向で、地域に埋もれていたり、生産が途絶えそうな生産技術や品種にもスポットを当てる。 

日刊工業新聞2015年04月03日 建設・エネルギー・生活面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
地域の途絶えそうな生産技術や品種をイオンアグリ創造が伝承し、若い農業者に引き継げればと話しています。

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