“衛星IoT”でダムにアンテナ、携帯電話網を代替

スカパーJSATが新規事業の創出を加速

 スカパーJSATが新規事業の創出に向けた取り組みを加速している。キーワードは「衛星IoT」だ。衛星通信を活用し、携帯電話の電波が届かない地域のIoT(モノのインターネット)需要を開拓する。主力の有料多チャンネル放送事業は動画配信市場の台頭などにより、逆風にさらされている。その中で新たな事業の柱を構築し、成長軌道に乗せる。

 6月、宮城県西都市の立花ダムに衛星通信用のアンテナが置かれた。スカパーJSATの衛星通信を活用し、ダムの上流に運んだ端末と通信する実証実験をIoTベンチャーのソラコム(東京都世田谷区)と実施。携帯電話の電波が届かない地域での通信に成功した。この仕組みを活用すれば、ダム管理に必要な雨量や水位のデータなどを遠隔で収集できる。

 実証実験ではソラコムのIoT通信サービスと衛星通信を接続した。ソラコムのサービスは、ゲートウエーで各端末の情報を受け取り、携帯電話網経由でソラコムのIoT通信プラットフォーム(基盤)に送信する。その携帯電話網を衛星通信に置き換えた。

 スカパーJSAT衛星技術本部サービス技術部の内山浩部長代行は「(衛星通信とソラコムのサービスの連携に)技術的な課題はないことが確認できた」と強調。その上で「早期に事業モデルを構築したい」と力を込める。

 ソラコムの玉川憲社長も「携帯電話網の届かない山間部などでIoTに取り組みたいという声は多数聞いている。衛星でカバーできれば魅力的なサービスが提供できる」と商用化に乗り気だ。

 一方、課題はコストだ。衛星通信は専用アンテナなどの費用が必要となり、費用対効果の合う需要先を見つけるのは難しい。ただ玉川ソラコム社長は「具体的な対策はこれから検討するが、避けられないコストを整理して工夫すれば対応できるはずだ」と自信を見せており、商用化を急ぐ構えだ。

 スカパーは7月1日付で社内の全部門に、新規事業に取り組む部署を立ち上げた。新規事業の開発を加速する中で、外部のベンチャーとの連携も積極化している。

 例えば米カイメタと提携し、消防車など緊急車両向け衛星通信サービスの提供を模索している。車体の上部表面などにカイメタが開発した平面アンテナを設置し、地上の通信網が停止した被災地などで車内から通信できるサービスを提供する予定だ。
(文=葭本隆太)

日刊工業新聞2017年10月9日

日刊工業新聞 記者

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10月10日
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スカパーJSATの内山部長代行は新規事業の創出に向けて「良い企画は迅速に商用化するベンチャーの姿勢に学ばなくてはいけない」と漏らす。主力の有料多チャンネル放送事業の事業環境は厳しさを増しており、成長の維持には新たな事業の柱が求められている。それを構築する上でスピード感は欠かせない。
(日刊工業新聞第一産業部・葭本隆太)

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