目覚ましなしでも起きられる?光環境で体内時計調節

照明制御プログラム研究

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実験用に試作した照明
 人の体内には時計がある。脳は目から入った光を感じてその時計を調節し、睡眠や起床のリズムを制御する。例えば夜に光を多く浴びると体内時計が狂って不眠症の要因になるなど、光環境は睡眠の質に大きく影響する。早稲田大学理工学術院の岡野俊行教授は、照明を制御して適切な光環境を作り出し、快適な睡眠を促す方法を研究している。

 「目覚ましなしで起きられる照明を作りたい」。岡野教授は研究の目標をこう語る。光生物学が専門で体内時計の仕組みなどを20年以上研究してきた。その研究で蓄積した知見を生かして、寝る前や睡眠中に体内時計を調節できる光環境を調査。健康機器メーカーと共同で、自然に眠くなり、自然に目が覚めるような照明の製品化を目指している。

 2014年には人を対象に実験を始めた。明るさや色合いなどが変えられる個人用の発光ダイオード(LED)照明を試作。これを使い、照明をどのように変化させれば人がくつろぎ、睡眠に誘導できるかを検証している。被験者は早大生。夕方に集めて、読書などの夜の過ごし方を再現してもらう。試作した照明を近くに置き、明るさなどを変えたときの脳の状態を測定する。夜になると脳内で多く分泌されるメラトニンの量や脳波を計測。被験者の主観も聞き取り、リラックスの度合いを分析する。

 1年半程度の実験で約20人分のデータを蓄積した。その結果、照明を暗くする場合、わずかでも時間をかけるとリラックス効果が得られることが分かってきた。岡野教授は、「人は明るいよりも暗い方が当然眠くなる。ただ、暗い状態にどう移行させるかで違いが出る。照明の明るさを半分にするときに10秒でも時間をかけると、一気に暗くする場合に比べて付加的なリラックス効果が生まれる」と研究成果を強調する。

 今後は睡眠中や起床時の実験を行い、朝の快適な起床を誘導する光環境も検証していく。延べ100人以上のデータを集めて、照明制御のプログラムを確立し、照明機器の設計につなげる。試作機と同様に、枕元に置くような個人用の照明として実用化させる方針だ。

 一方、家電機器を制御して電力消費の抑制などを促す家庭用エネルギー管理システム(HEMS)の普及が進んでいる。開発した照明制御プログラムは同システムへの実装が見込まれる。
 HEMSは家電の利用状況や室内環境などから人の生活パターンを推定。それをもとに照明や空調機器などを制御し、電力消費を抑制でき、快適な生活を実現するシステムとして期待されている。岡野教授は、その要素技術として照明制御プログラムを普及させたい考えだ。
(葭本隆太)

※金曜日に掲載中の連載「探訪・先端研究」より

日刊工業新聞2015年06月19日 科学技術・大学面

COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

寝る前に一気に暗くするのではなく、徐々に暗くした方が安眠効果があるのですね。未来の家では、人間が寝る支度を始めたのを察知してだんだんと暗くしてくれる機能が付くということでしょうか?

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