ホンダ社長が1年半あまりで前言撤回、「過去にない大転換期」

八郷社長の大きな決断、ターゲットに固執しない潔さ

 ホンダは4日、4輪車の国内生産拠点を再編すると発表した。2021年度をめどに埼玉県にある2工場のうち狭山工場(埼玉県狭山市)を閉鎖し、車両生産を寄居工場(同寄居町)に集約する。同時に軽自動車の生産を委託する八千代工業の四日市製作所(三重県四日市市)を取得し、4輪車生産は国内3拠点とする。拠点の集約で国内工場は8割弱から「100%に近い稼働率になる」(八郷隆弘社長)見通しだ。

 国内工場の閉鎖は04年に高根沢工場(栃木県高根沢町)を閉鎖して以来となる。八郷社長は同日、都内で開いた会見で「日本の生産機能を進化させ、世界をリードする体制づくりが不可欠だ」と再編の狙いを強調した。 

 従業員の雇用は維持する。狭山工場の跡地利用については今後決める。狭山工場は64年に稼働し、ミニバン「オデッセイ」などを生産する。年間生産能力は25万台。

 ホンダは国内販売の伸び悩みや輸出の減少によって、国内工場の稼働率の低さが課題となっていた。21年度の国内生産は現在の約106万台から81万台に減る。

 寄居工場には新たに、電動化に必要な生産技術を開発して国内外の各拠点に展開する機能を持たせる。今後、国内外の拠点から人材を集める。サプライヤーにも参加を呼びかける。

 国内の競争力向上とともに電動化への対応力を強化し、激変する自動車業界での勝ち残りを目指す。
ホンダ寄居工場。左ハンドルの北米向けフィットが並ぶ

日刊工業新聞2017年10月5日



3―4年かけて90万台半ばにしたいは?


ホンダは24日、会見を開き、八郷隆弘社長が2018年度にも4輪車の国内生産を90万台半ばとする方針を明らかにした。開発体制を改め、電動化技術に経営資源を集中、30年までに電動車両の販売比率を3分の2とする長期目標も示した。八郷社長は「ホンダらしい商品を作る体制を整え、収益性向上とブランド力を強化する」と4輪事業のてこ入れを強調した。

 国内で新たに欧州向けのスポーツ多目的車(SUV)「HR―V」「CR―V」を生産すると発表した。北米向けのCR―Vと主力「シビック」の生産も検討する。八郷社長は「3―4年かけて90万台半ばにしたい」とした。シビックは日本での発売も検討する。

 欧州向けCR―Vはカナダから輸出すると発表していたが、カナダ生産は北米向けに集中する。15年暦年の国内生産は73万台と、01年以降では東日本大震災が起きた11年に次ぐ低水準だった。輸出減と販売低迷で国内生産が落ち込む中で輸出の立て直しを急ぐ。

 一方、八郷社長は「身の丈を超えたスピードで商品投入に追われ、開発現場に負荷がかかっていた」と指摘。小型車とそれ以外、高級車の三つの車格それぞれに開発責任者を設けるなど組織改正を行う。「(研究開発子会社の)本田技術研究所が車作りに集中できる体制にする」(八郷社長)と述べた。

 電動化戦略はプラグインハイブリッド車(PHV)を中心に据える方針を改めて示した。PHVと電気自動車(EV)は北米で18年にも発売し、米ゼネラルモーターズと共同開発を進める燃料電池車(FCV)は20年頃の商品化を目指す。

日刊工業新聞2016年2月25日



「狭山」苦悩の生産ライン改革


 埼玉製作所の寄居工場(埼玉県寄居町)が2013年に稼働し、国内の三つの完成車工場のすみ分けが進む。寄居工場は小型車、鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)は軽自動車を集中生産し、埼玉製作所の狭山工場(埼玉県狭山市)は多車種生産が基本だ。

 中でも体制変化が進むのが狭山工場。セダンからワンボックスまで10車種を生産するが寄居工場の稼働に伴い2本のラインを1本にした。「止めたラインを生かして残りのラインの競争力を上げている」と常務執行役員の山根庸史は説明する。

 車種間で共通する工程はメーンラインで流し、車種固有の工程は止まったラインの設備やスペースを活用してサブライン化する手法を導入した。

 例えば「インナーフレーム工法」という独自軽量化技術を最近導入した。ホンダは主力車種の全面改良に合わせて同工法の採用を広げ、昨秋全面改良した小型車「フィット」に採用した。他に採用していない車種があるため車種固有の工程だ。

 混流生産の効率化のために車種固有のサブラインを導入するのは一般的な方法だが、狭山工場も国内生産の再編を機に定石を踏み大胆に設備を改善する。

 一連のライン編成では「普通は工数が多い車種に合わせて人員を配置せざるを得ないが、工数が少ない車種に合わせた人員でも済むラインにもしている」(同)と人員最適化も進める。

 生産効率を高めても、生産・販売の連携という課題は残る。先月、狭山工場は毎週金曜日に操業を止めた。フィットの相次ぐリコールに伴い販売計画と実績にギャップが生じたのが一因だ。ホンダは生産計画を早期に確定する志向が強いと以前から指摘されてきた。トヨタ自動車や日産自動車がぎりぎりまで受注状況を見て生産計画を作るのとは対照的だ。

 それぞれ長短はあるが今回の異例の操業停止はホンダの特徴が短所となって表れた格好だ。山根は「販社に計画販売を取り入れてもらった」といい、生産と販売の協調を急いで生産計画の精度を上げる。

 特にホンダは輸出が急激に減り、国内販売が国内生産に直結する傾向が強まっているだけに、製販の連携強化は喫緊の課題だ。
(敬称略)※内容は当時のもの
狭山工場の跡地利用については今後決める

日刊工業新聞2014年12月5日


 

池田 勝敏

池田 勝敏
10月05日
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八郷社長は昨年2月に国内生産を90万台半ばまで回復させると宣言した。1年半あまりで前言撤回したことになる。自動車の事業サイクルからすると急速な方針転換だ。それほど電動化の潮流を重視しているということだろう。ここ数年ホンダの国内生産の低迷は深刻化していた。地元経済への影響は懸念されるが、かつて掲げたターゲットに固執しない潔さを感じる大きな決断だ。

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