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進化するオムロンの「卓球ロボット」は何に使われるの?

高度な人との協調技術、生産現場に落とし込み
進化するオムロンの「卓球ロボット」は何に使われるの?

シーテックに出展している卓球ロボット「フォルフェウス」

 オムロンは2日、独自開発した4代目の卓球ロボット「フォルフェウス」に、サーブや対戦相手が仕掛けるスマッシュに対応する機能などを搭載したと発表した。人工知能(AI)による時系列深層学習(ディープラーニング)や、ロボットの同期制御などを活用して実現。これらの技術は、車載用の運転手の状態判定や部品などを取り出すピッキング作業の自動化など、同社の事業へ応用しているという。

 フォルフェウスは人体センサーにより対戦相手の肘や頭の位置を検知し、時系列ディープラーニングにより解析。スマッシュを打つ気配を読み取り、返球の軌道を予測する。サーブはトス用とスイング用の2種類のロボを、100分の1秒以下の精度で同期制御。世界で初めて実現した。宮田喜一郎執行役員専務最高技術責任者(CTO)は、「卓球ロボットは我々の技術のアイコン(象徴記号)。通常商品の要素技術を組み合わせて実現している」と、技術力の高さを示した。同社は卓球ロボを2014年に国内で初めて公開した。

2017年10月3日



今月にIoTサービス基盤


 オムロンは製造業の現場でIoT(モノのインターネット)を簡単に導入できるサービス基盤「i―BELT(アイべルト)」を、10月に立ち上げる。現場で簡単に多種多様なデータを収集・分析できる仕組みを提供する。2018年4月にはAI(人工知能)を載せた制御用マシンオートメーションコントローラーによるデータ分析結果を基に、同時制御の仕組みなども導入する。宮永裕執行役員副社長に特徴や強み、展望などを聞いた。

 ―i―BELT構想のきっかけは。
 「地味ながらも草津工場(滋賀県草津市)で、IoTに取り組んできたことがヒントになった。草津には年間2000人以上の経営者や担当者が来訪する。身の丈にあったIoTをどんな順番で始めたら良いのかという話が多い」

 ―特徴と強みは。
 「ユーザーの現場に入り込み、顧客が持っている知識と、オムロンが持っている制御の知識を融合しながら役立っていく。草津には『オートメーションセンタ』がある。ここにはSE(システムエンジニア)がいて、彼らが現場に入り込んで顧客と一緒に機械向けソフトウエアの部品を作る。この部品は技術だけでなく現場のすり合わせで泥くさく、人手も時間もかかるが、他社にはまねしにくい」

 ―ソフトの部品が特徴なのですか。
 「制御のアプリケーションがキーになる。ソフトの部品は約200あり、こうした標準部品を作っておくと効率も上がる。ソフトの部品はさまざまな機器をすり合わせるタイルの目地のようなもの」

 ―今回の事業の見通しや目標は。
 「人間が器用にやっていることを機械で実現するのが当社の特徴。その集大成が卓球ロボットで、いろんなデータ、経験を積むことによって進化し、相手のレベルに合わせて球を返せるようになった。顧客の機械に置き換えると、当社と組んで一緒に機械を賢くできる。i―BELT導入に伴う機器販売などを含め、20年度に年間売上高500億円が目標だ」
【記者の目】
 今後、生産現場では、人手不足、省力化、人とロボットの協調対応などで、複雑な動きの高度な制御が求められる可能性がある。同社の卓球ロボットは、同社の市販品、FA機器を使っており、高度な動きができることを示している。今回のIoTサービス基盤の開始によりデータ収集、分析、制御アルゴリズムの開発により生産現場の競争力は高まるはずだ。
(文=京都・水田武詞)

日刊工業新聞2017年8月24日



2020年、自社工場に独自の生産ライン


 オムロンは2020年をめどに、人と協調作業するロボットを採用した独自のセル生産ラインを草津工場(滋賀県草津市)に導入する。アーム型ハンドリングロボットに人工知能(AI)を搭載。ロボットが作業者の動きに合わせ、衝突を避けつつ加工対象物(ワーク)を運ぶ仕組みを作る。現在5割の自動化率を6―7割に高める計画。作業者は手先の器用さや臨機応変さが求められる作業に専念できる体制を目指す。

 AI搭載の生産現場用ロボットは、プログラマブルロジックコントローラー(PLC)の組み立てラインに導入する。18年に基礎技術を固めた後に新ラインを設計し、20年の稼働を目指す。

 既存の生産ラインの自動化率は5割。隣の装置にワークを持ち運ぶ作業などの一部を「からくり」と呼ばれる電力を極力使わない装置に置き換えた。

 新ラインでは、さらに自動化率を高めるため、自社のAI搭載の搬送ロボットを改良。人や障害物を回避しながら最適なルートを自ら見つけるアーム型ハンドリングロボットの導入を目指す。

 セル生産は作業者1人が複数の工程を担当する方式で、多品種少量生産に向く。ただ、ワークの運搬作業を自動化することが難しかった。オムロンはAIなどの先進技術を活用。ロボットが人の動きに合わせるように改良して、機械中心でなく人間中心のモノづくりへ転換を目指す。
PLCを組み立てる製品混流セル生産ライン(草津工場)

日刊工業新聞2017年8月23日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
昨日は卓球日本代表の水谷選手がシーテック会場で卓球ロボットとラリーしメディアを賑わせていたが、地道に技術をフィードバックしょようとしていることが分かりますね。

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