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「MRJ」パリ航空ショーでの“商談初体験”の感触は?

ブラジル・エンブラエルと比べた優位性を強調。「スコープ・クローズ」緩和後に70席機の需要も出てくる
「MRJ」パリ航空ショーでの“商談初体験”の感触は?

初公開したMRJの操縦席モニター

 【パリ=杉本要】仏パリ近郊で開催中の航空宇宙産業展「パリ国際航空ショー」は18日、4日間にわたる商談期間を終え、三菱航空機(愛知県豊山町)の開発する小型旅客機「MRJ」は新たな受注を得られなかった。今秋に予定する初飛行を前に航空会社らが発注に慎重になっているとみられる。

 同社は17日に現地で開いた記者会見で開発の進捗(しんちょく)をアピールするとともに、最大のライバルであるブラジル・エンブラエルと比べた優位性を強調した。

 「顧客や金融関係者と話す中で、『早く飛ばしてほしい、初飛行はいつか』という声を多くもらった」。三菱航空機の森本浩通社長は、初めて臨んだパリショーでの商談印象をこう振り返った。その上で「開発は極めて順調。(受注増は)時間の問題ではないか」と、初飛行後の受注拡大に期待した。

 「MRJ対E2」。三菱航空機は記者会見で、エンブラエルの次世代機との徹底比較をして見せた。燃費性能や納期、70席機を同クラスのジェット機の中で唯一そろえる点などで、エンブラエル機よりも優れているという。同社が公表した今後20年間の市場予測によると、座席数70―100席クラスの「リージョナルジェット」の需要は今後20年間で5190機にも上る。このうち北米が36%を占め、欧州が16%、アジア・太平洋が14%と続く。

 最大の米国市場でのシェア獲得に向け、三菱航空機が強調したのは、70席型の優位性だ。MRJの現在の受注はすべて90席型だが、同社は胴体を短縮した70席型も開発中。また、胴体延長型の100席型も事業化を検討している。このうち70席型は、エンブラエルやカナダ・ボンバルディアが次世代機開発から手を引いている分野であり、なおかつ米国で一定の需要を期待できるという。

 米国では大手航空会社とそのパイロット組合が小型機の運航を外部委託する際、一定のサイズ以下にする取り決めを結んでいる。いわゆる「スコープ・クローズ」と呼ぶもので、具体的には離陸時の最大重量を一定の数値以下にすることで、大手航空会社のパイロットの雇用を守ろうとする。

 MRJのようなリージョナル機の運航は、大手から運航を受託する「地域航空会社」と呼ばれる会社が担うことが多く、その売れ行きはスコープ・クローズの結果に大きく左右される。三菱航空機の神谷英行商品戦略グループリーダーは「MRJは将来、次世代型では唯一の70席型となる。スコープ・クローズが緩和されれば70席機にも需要が出てくる」と“残存者利益”の確保を狙う。

 今回の航空ショーでは新規受注がなかったが、三菱航空機はMRJに搭載する操縦席モニターを初公開し、最新鋭の機能をアピールしていた。航空業界の注目は、3―4カ月後に迫った初飛行の一点に集中している。
日刊工業新聞2015年06月19日 3面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
この手のイベントでまだ初飛行前の機体に即発注を決めることはそうそうないだろう。ある程度の感触をつかめれば十分なのではないか。帰国後、杉本ファシリテーターはその当たりも解説してくれると思います。

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