ローソンが目指す「次世代コンビニ」 ライバルはアマゾンか?
深刻な人手不足と人件費の高騰、他業態からのライバル襲来
ローソンがIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)を活用した「次世代コンビニエンスストア」の構築に動いている。背景にあるのは、深刻な人手不足と人件費の高騰だ。機械などがこなす“作業”の精度を上げ、従業員は接客に集中できる体制を整える。コンサルティング会社などを経て2014年にローソンに入社し、次世代コンビニ構築を主導している白石卓也執行役員に話を聞いた。
白石執行役員は「ライバルは他のコンビニチェーンではなく、アマゾンなどの他業態。これまでとは非連続のチャレンジをしなければ、次世代コンビニを作ることはできない」と話す。
ローソンは16年12月から、実験店舗に位置づけるパナソニック前店(大阪府守口市)でパナソニックと、完全自動セルフレジ「レジロボ」を使った実証実験を実施した。商品を入れた専用のバスケットをレジロボに置くと、自動で生産と袋詰めをする。従業員が商品のバーコードをスキャン登録したり、袋詰めをしたりする必要がない。
一方で米アマゾン・ドット・コムが運営する「アマゾンゴー」のような無人店舗を目指している訳ではないという。「接客をしないのなら、自動販売機で良い」(白石執行役員)との考えだ。
店内にはたくさんの商品と、情報端末や現金自動預払機(ATM)などの多様なサービスがある。それらについて来店者が聞きたくても、従業員は忙しそうで躊躇してしまう。レジ作業を無人化することで、こうした“機会ロス”を無くし、従業員は商品を勧めたり、困っている人に声を掛けたりといったコミュニケーションに注力できるようにするのが狙いだ。
一部の店舗では、来店者の行動を分析するためのカメラを設置している。コンビニが取得しているPOSデータから分かるのは「何を買ったか」だ。同じ「ツナ&たまごサンド購入」でも、「シーチキンおにぎりを買おうとしたが、品切れだったのでツナ&たまごサンドにした」「サラダも手に取っていたが、棚に戻した」といった違いがある。
画像データをもとに、「商品棚に空きが多いと、賞味期限を確認する人が多い」といった来店者の行動を分析し、仮説を立てて店づくりに生かす。“良い商品を作って、並べれば売れる”時代ではないからこその取り組みだ。
経済産業省は4月、ローソンを含むコンビニ大手5社と25年までに、全商品へRFID(電子タグ)を付けることで合意したと発表した。先駆けて2月にローソンはパナソニック前店で、電子タグとレジロボを組み合わせた実証実験をした。電子タグは電波を使い、非接触で個々の商品の履歴を記録可能だ。
経産省はコンビニが電子タグを使うことでレジだけではなく、検品や棚卸し業務を高速化できるほか、万引防止や食品ロス削減につなげられると見る。電子タグが取得した情報をメーカーや卸と共有すれば、生産量の調整や共同配送にも生かせる。
課題もある。2週間の実証実験では店舗で、一つ一つの商品に電子タグを手作業で付けた。しかしコンビニ大手5社の商品は推計で年間1000億個ある。ただでさえ人手不足の中、全店で恒常的にタグ貼りを実施するのは現実的ではない。
経産省はメーカーが商品に電子タグを付ける環境が整うことを、この構想が実現する条件の一つに挙げる。関係者からは「難しい」との声も挙がるが、白石執行役員は「皆がやろうとすることに、イノベーションはない。『できるだろうか』と思うことにこそ、イノベーションが生まれるチャンスがある」と強調する。
コンビニは日本で生まれてから40年以上経ち、今も成長を続けている。一方で成功体験が足かせになっている部分もある。他社とも協業し、AIなど新しい技術を組み合わせた上で、どのように“ローソンらしさ”を出すか。次世代コンビニ構築について白石執行役員は「4-5年で形にしたい」と、スピード感を持って臨んでいる。
白石氏のほかにも大林組、内閣官房、日立製作所など注目の企業・団体が登壇予定の、ITシステム部門戦略に関するイベント「CIO Japan Summit」が開催される。サミットイベントプログラムはコーヒーブレイクやネットワーキングランチを含む多くの交流の時間を所々に挟みながら、基調講演・ケーススタディー・パネルディスカッションを通じて、IT部門統括者の課題やビジネスチャンスについて討議する。参加申し込みは以下のURLより。
<開催概要>
CIO Japan Summit 2017
11月9-10日(木・金)
ホテル椿山荘東京
https://events.marcusevans-events.com/ciojapansummit2017/
並べれば売れる時代ではない
白石執行役員は「ライバルは他のコンビニチェーンではなく、アマゾンなどの他業態。これまでとは非連続のチャレンジをしなければ、次世代コンビニを作ることはできない」と話す。
ローソンは16年12月から、実験店舗に位置づけるパナソニック前店(大阪府守口市)でパナソニックと、完全自動セルフレジ「レジロボ」を使った実証実験を実施した。商品を入れた専用のバスケットをレジロボに置くと、自動で生産と袋詰めをする。従業員が商品のバーコードをスキャン登録したり、袋詰めをしたりする必要がない。
一方で米アマゾン・ドット・コムが運営する「アマゾンゴー」のような無人店舗を目指している訳ではないという。「接客をしないのなら、自動販売機で良い」(白石執行役員)との考えだ。
店内にはたくさんの商品と、情報端末や現金自動預払機(ATM)などの多様なサービスがある。それらについて来店者が聞きたくても、従業員は忙しそうで躊躇してしまう。レジ作業を無人化することで、こうした“機会ロス”を無くし、従業員は商品を勧めたり、困っている人に声を掛けたりといったコミュニケーションに注力できるようにするのが狙いだ。
一部の店舗では、来店者の行動を分析するためのカメラを設置している。コンビニが取得しているPOSデータから分かるのは「何を買ったか」だ。同じ「ツナ&たまごサンド購入」でも、「シーチキンおにぎりを買おうとしたが、品切れだったのでツナ&たまごサンドにした」「サラダも手に取っていたが、棚に戻した」といった違いがある。
画像データをもとに、「商品棚に空きが多いと、賞味期限を確認する人が多い」といった来店者の行動を分析し、仮説を立てて店づくりに生かす。“良い商品を作って、並べれば売れる”時代ではないからこその取り組みだ。
皆がやろうとすることに、イノベーションはない
経済産業省は4月、ローソンを含むコンビニ大手5社と25年までに、全商品へRFID(電子タグ)を付けることで合意したと発表した。先駆けて2月にローソンはパナソニック前店で、電子タグとレジロボを組み合わせた実証実験をした。電子タグは電波を使い、非接触で個々の商品の履歴を記録可能だ。
経産省はコンビニが電子タグを使うことでレジだけではなく、検品や棚卸し業務を高速化できるほか、万引防止や食品ロス削減につなげられると見る。電子タグが取得した情報をメーカーや卸と共有すれば、生産量の調整や共同配送にも生かせる。
課題もある。2週間の実証実験では店舗で、一つ一つの商品に電子タグを手作業で付けた。しかしコンビニ大手5社の商品は推計で年間1000億個ある。ただでさえ人手不足の中、全店で恒常的にタグ貼りを実施するのは現実的ではない。
経産省はメーカーが商品に電子タグを付ける環境が整うことを、この構想が実現する条件の一つに挙げる。関係者からは「難しい」との声も挙がるが、白石執行役員は「皆がやろうとすることに、イノベーションはない。『できるだろうか』と思うことにこそ、イノベーションが生まれるチャンスがある」と強調する。
コンビニは日本で生まれてから40年以上経ち、今も成長を続けている。一方で成功体験が足かせになっている部分もある。他社とも協業し、AIなど新しい技術を組み合わせた上で、どのように“ローソンらしさ”を出すか。次世代コンビニ構築について白石執行役員は「4-5年で形にしたい」と、スピード感を持って臨んでいる。
イベント情報
白石氏のほかにも大林組、内閣官房、日立製作所など注目の企業・団体が登壇予定の、ITシステム部門戦略に関するイベント「CIO Japan Summit」が開催される。サミットイベントプログラムはコーヒーブレイクやネットワーキングランチを含む多くの交流の時間を所々に挟みながら、基調講演・ケーススタディー・パネルディスカッションを通じて、IT部門統括者の課題やビジネスチャンスについて討議する。参加申し込みは以下のURLより。
<開催概要>
CIO Japan Summit 2017
11月9-10日(木・金)
ホテル椿山荘東京
https://events.marcusevans-events.com/ciojapansummit2017/
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