「天才じゃなくても世界一になれた思考術」(元プロ野球選手・里崎智也)

「ロッテの魅力は弱いところ。強いチームで結果を出しても自分だけの成果ではない」

 ―執筆の動機は。
「ビジネス書を書いた野球選手はこれまでいなかったから。講演会で話した内容について『ビジネスにも役立つ』という意見があったので、いけるんちゃうかと。成果を形に残るモノにしたかった」

 ―入団の経緯を振り返る部分では巨人やソフトバンクを大企業に、ロッテを中小企業に例えていますね。
 「大企業でエースになるのが一番望ましい。でも全員がそうはなれないし、理想だけ高くても埋もれてしまったら終わり。まずは出場しないと意味がないので、逆指名でロッテを選んだ」

 ―ロッテの魅力は。
 「弱いところ。1兆円の企業の業績が1兆1000億円に伸びても個人の成果ではないように、強いチームで結果を出しても自分だけの成果ではない。弱いチームを強くしていく方が面白い」

 ―「目先のことしか考えられない人は、10年たっても目先のことしか考えられない」と書いています。
 「目先の利益を取りにいかないといけない場面もあるが、僕は短期、中期、長期のビジョンを持っていた。3年や5年、10年かけると決めた目標は、すぐに成果が出なくてもやり続けようと考えた。即効性が必要なことと、長期的なビジョンを使い分けていた」

 ―プロ野球界も厳しい世界だと思いますが、企業では過剰な労働や命令などで部下をつぶす「クラッシャー上司」が問題になっています。
 「組織の中で理不尽なことを言われた時に、やれることは二つしかない。相手を追い抜くか、自分が辞めるかだ。文句を言っていても変わらないので、僕は追い抜く方を選んでいた。自分の立場が上になれば、何も言われなくなる」

 ―里崎さんが上司の立場になったら、どんな指示を出しますか。
 「具体的な指示を出す。結局、育つのは本人次第だ。『育てる』のではなく、『育つ』のを待つだけ。人を育てるのがうまい人は世の中にいないと思う」

 ―里崎さんはロッテ一筋でした。その理由を教えてください。
 「球団に魅力があったし、引退後のことまで考える必要があったから。日本ではフリーエージェント(他球団と契約できる権利)での移籍は『裏切り者』というイメージがある。そのため移籍先で活躍できなかった場合、行く場所がなくなってしまう。

 「移籍すればお金という目先の利益は手に入るが、行った先で鳴かず飛ばずだったら、その後の野球人生は厳しくなる。ちょっと多く給料をもらったところで、税金で持っていかれるだけ。そういったことを差し引いても、他球団に移籍する魅力を感じなかった」

 ―2度の日本一など華々しい成績を残されたのは、何がよかったと思いますか。
 「ロッテを選んだこと。肩書や名前でチームを選んでも、埋もれたら何の役にも立たない。自分の能力を見極めて、どこに行けば自分が一番になれるかを考えることが大事だと思う」
(聞き手=福沢尚季)

【略歴】
里崎智也(さとざき・ともや)千葉ロッテマリーンズスペシャルアドバイザー。99年(平11)帝京大経卒、同年千葉ロッテマリーンズ入団。05年、10年に日本一を経験。06年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では正捕手として活躍し、日本を世界一に導く。大会ベストナインにも選出され、名実ともに“世界一のキャッチャー”の称号を得る。14年現役引退。徳島県出身、41歳。『エリートの倒し方 天才じゃなくても世界一になれた僕の思考術50』(飛鳥新社)

日刊工業新聞2017年9月25日

明 豊

明 豊
09月25日
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昨日、テレビでご本人は自分は「(ロッテの監督は)ない」と言ってたが、それも里崎流の逆算の人生設計なのかも。

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