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ファナックが欧州にもっと根を張る。ドイツに開発拠点

「お客さまの要望にダイレクトに応えられる体制を構築する」(稲葉会長)
ファナックが欧州にもっと根を張る。ドイツに開発拠点

欧州でシェア拡大を目指す(航空機エンジンのカバーをハンドリングするロボット)

 【独ハノーバー=西沢亮】ファナックは10月に、ドイツで工場自動化(FA)機器や産業用ロボットの開発拠点を新設する。まずはソフトウエア開発を中心に手がけ、欧州のユーザーニーズに対応する。すでに米国で一部ロボットの開発を手がけるが、FA機器など全事業を対象とした海外開発拠点は同社としては初めてとなる。現地製造業の要望に直接対応できる体制を整備し、事業を拡大する。

 ファナックのドイツ現地法人があるシュツットガルト市に、開発拠点「ファナックヨーロッパ開発センタ」を新設する。当初はソフト開発の技術者を中心に10人程度の規模で始める。投資額は未定。すでに大学などに採用を働きかけ、優秀な人材の確保に取り組む。日本の研究開発部門とも連携して顧客の要望に対応する。

 ファナックは欧州でコンピューター数値制御(CNC)装置などのFA、ロボット、小型切削加工機などのロボマシン事業を展開する。2016年度の欧州事業の売上高は874億円だった。全売上高に占める割合は16%と米州などと比べ存在感を示しきれていない。

 稲葉善治会長は「顧客の要望を吸い上げて応えていかなければ、欧州でシェアを上げられない」と分析。開発の現地化で顧客の要望を深掘りし、さらなるシェア拡大に取り組む。

会長・社長・欧州代表に聞く


 ファナックの稲葉善治会長、山口賢治社長、丹沢信一ファナックヨーロッパ社長がドイツのハノーバーで開催中の工作機械展示会「欧州国際工作機械見本市(EMO)」で日刊工業新聞社のインタビューに応じた。欧州事業の戦略や展示会の狙いについて聞いた。

 ―欧州では現地メーカーなどライバルとの競争が激しいです。
 稲葉会長 欧州ではコンピューター数値制御(CNC)装置などの工場自動化(FA)機器、ロボット、加工機などのロボマシンの三つの商品の柱があり、それぞれに伸ばす余地がある。この商品を総合してワンストップソリューションで提供する。これにIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)技術を加えて商品ごとの結びつきを強くし、一つのシステムとして高度な機能を実現する。EMOでもこの強みを訴求している。

 ―各国から多くの来場者がブースを訪れています。
 山口社長 今回の展示会では日本だけでなく、米国、中国、韓国、台湾、インドの当社の子会社から幹部が参加している。お客さまもグローバル化しており、いろいろな要望を各国に伝聞するだけでは分からない。EMOは欧州市場の状況や将来協力できる分野を肌で感じる良い機会だと考えている。米国の展示会も同様に各国の幹部が参加し、お客さまの要望を実感する取り組みを進めている。

 ―欧州は世界の製造業をけん引している面もあります。
 丹沢信一ファナックヨーロッパ社長 当社の価値を提供できる営業を展開するため、技術者を強化してお客さまに商品をより良く使っていただく取り組みを進める。一方、欧州では特有の技術がグローバルスタンダードになることがあり、そうした動きを迅速にとらえて当社の開発陣に伝える。欧州で成長するにはこの両方を進めることが重要になる。

 ―ドイツに開発拠点を新設します。
 稲葉会長 お客さまの要望にダイレクトに応えられる体制を構築する。現地で対応できない要望については日本の研究所とも連携を取りながら対応する。本気で欧州市場のシェアを上げることを考えた。そのためにはお客さまの要望をよく吸い上げて、応えていかなければならない。その思いを実行した。

『スマートファクトリーJapan2018』
 日刊工業新聞社は「スマートファクトリーJapan 2018」を2018年5月30日(水)~6月1日(金)の日程で、東京ビッグサイトにて開催します。本展示会は、製造工場においてスマートファクトリーを実現するうえで、欠かすことのできない「IoT」や「インダストリー4.0」を搭載した情報管理システムをはじめ、製造設備・装置、その他、生産工場に関する技術・製品を展示公開いたします。
 3回目を迎える今回は「スモールスタート支援ツール」の展示分野を設けたほか、また、同時開催の「2018防災産業展in東京」との連動企画として『スマートファクトリーを支える防災産業ゾーン』、昨年開催した「IoT・AI Innovation Forum」を『IoT・AI Innovationゾーン』として、新たに2つの特設ゾーンを設けます。
「スマートファクトリーJapan 2018」【出展者募集中】
日刊工業新聞2017年9月21日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
欧州ではCNCなどのFA関連機器で独シーメンス、ロボットでは独クカやスイスのABBと熾烈(しれつ)なシェア争いを繰り広げる。一方、2016年に独ダイムラーの量産ラインにファナックのCNCが初採用されるなど存在感を高めている。開発拠点の新設により現地ニーズを徹底的に取り込み、成長をけん引する新たな商品やサービスが生み出せるか注目される。 (独ハノーバー=西沢亮)

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