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社長自らがビール夏商戦に出陣!「アサヒvsキリン」軍配が上がるのは?

コンビニ向け商品開発でもバチバチ!個性や遊び心で消費者を刺激
社長自らがビール夏商戦に出陣!「アサヒvsキリン」軍配が上がるのは?

アサヒの小路社長

 夏商戦に向けてアサヒ、キリンの社長が自ら商品配布―。アサヒビールは16日、三越日本橋本店の7階ギフトセンター会場で中元商戦をにらんだビールのサンプリングを実施した。小路明善社長が青の法被(はっぴ)姿で、中元限定の「和の贅沢プレミアム」などの商品を配った。今年の中元商戦では商品数を前年比27品多い74品に増強、売上高で同9%増を目指す。小路社長は「5―6月のビールギフト売り上げは前年比2ケタ増」とし「“和”のキーワードの商品、ストーリー性のある商品が好まれている。竹鶴など国産ウイスキーも好調だ」と手応えを感じた様子。
 
 一方、キリンビールは同日、東京・中野本社前の公園で同日発売の「キリン パーフェクトフリー」の配布イベントを行った。機能性表示の新制度に基づいた脂肪と糖分の吸収を抑える作用があるノンアルコールビール。布施孝之社長は「大手スーパーやコンビニエンスストアなど小売り側の反応は非常によい」とし、各社が機能性商品を相次ぎ発売予定のため「夏の陣の戦いになる」と強調。昨秋、発売したプリン体ゼロ発泡酒、今年1月発売のプリン体ゼロ第3のビールに続き「ノンアルコールビールでも勝者になりたい」とした。

 <コンビニ向けでも火花>

 大手ビールメーカーがコンビニエンスストアなど特定の流通企業向けの専用商品開発に力を入れ始めた。キリンビールはセブン&アイ・ホールディングスと共同開発の「セブンゴールドまろやかエール〈無濾過〉」ビールを、9日にセブン―イレブン店舗などで発売。セブンにはアサヒビールも3月に糖質40%オフの機能性ビール「アサヒ ザ・ロイヤルラベル」を発売し、サントリービールは昨年から「セブンゴールド 金のビール」を販売中。ビール消費全体は減少気味だが味に個性があるプレミアムビールやクラフトビールは伸びており、各社が販売チャンネルでコンビニに注目している背景もあるようだ。

 「ビール市場全体は右肩下がりだが、1兆円を超す有望市場であることに変わりはない。プレミアムビールの構成比は約10%で年々伸びている」。キリンと無濾過ビールを開発したセブン―イレブン・ジャパンの鎌田靖常務執行役員は、ビールの動きとプレミアムビールの動きが別物であることを強調する。

 キリンとの共同開発では「ビールの飲まれ方に変化が訪れている」ことが話題になったという。バブル時代のビールは「思い切り酔いたい」飲み方が主流だったが、健康を気にする今の世代は「リラックスするために飲む」。味もゴクゴク系より、香りやコクのある方が好まれるわけだ。9日発売するビールはこの観点で、日本のビールに多い下面発酵のピルスナービールでなく、香りだちの良い上面発酵のエールタイプを採用した。

 「味覚に個性のある商品、遊び心のある商品が売れている。特に20代の若者の間でその傾向が顕著だ」。キリンの橋本誠一常務執行役員は話す。コンビニルートで2012年から展開する「グランドキリン」ビールも、若者世代の購入率が高い。

 アサヒビールやサントリービールはコンビニエンスストア限定で、クラフトビールを展開している。上面発酵酵母を用いたポータービールやエールビールなど、こちらもピルスナービールと一線を画す。サッポロビールはネット上の投票で開発したクラフトビール「百人のキセキ 魅惑の黄金エール」をコンビニで展開中だが、これもエールビールだ。

 コンビニ向けPBビールの発売は、サッポロがセブン&アイ向けに12年11月、共同開発した「100%MALT」が始まり。それまではPBビールの開発に否定的な声が多かったが、販売チャンネルとしてのコンビニの力が無視できないうえ、最近のPBは缶本体に開発企業の社名を入れるなど、小売り企業側も“変化”している。

 ビールメーカーからすればコンビニ限定商品で若者や女性の嗜好(しこう)などを“実験”でき、共同開発商品ならTVコマーシャルなどの販売促進費がかからず、店舗でアピールできる。何よりスペースが限られているコンビニの棚で、自社ネームやロゴが入ったビールを一般商品と並んで間接PRできる利点は否定できない。この先も商品数が増えそうだ。
日刊工業新聞2015年06月09日/06月17日 建設・エネルギー・生活面
山口豪志
山口豪志 Yamaguchi Goushi Protostar Hong Kong 董事長
夏商戦が盛り上がるのはとても良いコト!企業がシーズナリーのアイテムで競うことで購買行動も活気がつくというもの。

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