狙うのはあくまでトップ。ライバルはやっぱりTDK?
村田、ソニーの電池事業買収が完了
ソニーから引き継いだ電池事業の戦略をどう描くのか。村田製作所の動向が注目される。取得したリチウムイオン二次電池は、スマートフォン向けと産業向けの2本柱で展開する。ただ、ソニーは同電池を世界で初めて商品化したものの、現在は世界シェア5位にとどまる。当面、村田はスマホ向けを中心に増産し、売上高を2000億円に引き上げて早期に営業損益の黒字化を目指す。どれだけ巻き返せるか、村田恒夫会長兼社長の手腕が問われる。
村田製作所が取得した事業の9割がリチウムイオン二次電池。スマホやウエアラブル端末向けの「ラミネート型」と、電動工具といった産業向けの「円筒型」に大別される。中核を担うのは、ソニー子会社のソニーエナジー・デバイスの事業を引き継いだ東北村田製作所(福島県郡山市)だ。主な生産拠点は、中国の江蘇省無錫市とシンガポールにある。
村田は2020年3月期までに500億円規模の設備投資を実行し、生産体制の強化を急ぐ。当初4月に予定していた買収手続きは、中国当局の審査などで半年もずれ込んだ。それでも、当初計画していた初年度の設備投資の規模に変更はないとする。
村田の藤田能孝副会長は「産業向けも力を入れるが、当面の間、増産するのはスマホ向け。非常に引き合いが多い」と、スマホ向けの需要に期待を込める。
ただソニーの電池は、スマホ市場で特に強みがあったとは言い難い。直近で注目されるのは、米アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」への搭載だが、既存の電池メーカーの牙城を崩すのは容易ではない。むしろ低いシェアからのスタートであることを考えると、中国スマホメーカーなどへの採用の方が早く進むとの見方もある。
長期的な収益改善の戦略から言えば、スマホへの展開に頼るのは危うさが残る。村田会長兼社長は「成長率が高いのは産業向け。そこに思い切って投資すれば収益の改善は大幅に進む」と、戦略を練る。また、安全性が高い全固体電池など付加価値の高い製品をいかに早く実用化して展開できるかも重要だ。
将来は車載機器向け電池への参入も視野に入れる。ただ、こちらは十分なめどが立っていない。積層セラミックコンデンサー(MLCC)や表面弾性波(SAW)デバイスなどと同様、電池でも世界首位を狙えるか、具体的な施策が待たれる。
(文=京都・園尾雅之)
村田製作所が取得した事業の9割がリチウムイオン二次電池。スマホやウエアラブル端末向けの「ラミネート型」と、電動工具といった産業向けの「円筒型」に大別される。中核を担うのは、ソニー子会社のソニーエナジー・デバイスの事業を引き継いだ東北村田製作所(福島県郡山市)だ。主な生産拠点は、中国の江蘇省無錫市とシンガポールにある。
村田は2020年3月期までに500億円規模の設備投資を実行し、生産体制の強化を急ぐ。当初4月に予定していた買収手続きは、中国当局の審査などで半年もずれ込んだ。それでも、当初計画していた初年度の設備投資の規模に変更はないとする。
村田の藤田能孝副会長は「産業向けも力を入れるが、当面の間、増産するのはスマホ向け。非常に引き合いが多い」と、スマホ向けの需要に期待を込める。
ただソニーの電池は、スマホ市場で特に強みがあったとは言い難い。直近で注目されるのは、米アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」への搭載だが、既存の電池メーカーの牙城を崩すのは容易ではない。むしろ低いシェアからのスタートであることを考えると、中国スマホメーカーなどへの採用の方が早く進むとの見方もある。
長期的な収益改善の戦略から言えば、スマホへの展開に頼るのは危うさが残る。村田会長兼社長は「成長率が高いのは産業向け。そこに思い切って投資すれば収益の改善は大幅に進む」と、戦略を練る。また、安全性が高い全固体電池など付加価値の高い製品をいかに早く実用化して展開できるかも重要だ。
将来は車載機器向け電池への参入も視野に入れる。ただ、こちらは十分なめどが立っていない。積層セラミックコンデンサー(MLCC)や表面弾性波(SAW)デバイスなどと同様、電池でも世界首位を狙えるか、具体的な施策が待たれる。
(文=京都・園尾雅之)
日刊工業新聞2017年9月7日