産業用ロボット大国の面子にかけて。革新は進むのか!?

裾野の拡大と簡単に動作させるソフト面の強化が課題

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ファナックは人と協調するロボットの展開や人工知能の活用に力を入れる
 「ロボット技術、そしてロボット関連産業が、少子高齢化などに起因する日本の諸課題を解決に導く」―。日本ロボット工業会の津田純嗣会長(安川電機会長兼社長)は、ロボットの可能性についてこう断言する。政府はロボットが社会に変革をもたらすロボット革命を提唱。日本を“ロボット大国”たらしめている製造分野向けロボットについて、国内の市場規模を2020年までに14年比2倍(1兆2000億円強)とする目標を設定した。

 【国内は微増】

 産業用ロボット市場で世界に君臨する日本メーカーだが、ユーザーの裾野は意外に狭い。最大ユーザーの自動車や電機業界など特定の用途で大量導入されているのが現状だ。販売先にも偏りがあり、中国、北中米向けなど外需の伸びが圧倒的。国内需要は微増にとどまる。自動車、電機業界の国内投資案件は限られ、大型受注が減少傾向にある。川崎重工業の橋本康彦執行役員ロボットビジネスセンター長も「ユーザー層の拡大が急務」と危機感を募らせる。

 【SIと連携】

 攻略対象の筆頭が食品業界だ。メーカー各社は欧州の食品工場で普及するパラレルリンク型ロボットに相次いで参入。仕分けや箱詰め作業向けに、一定の成果が出始めている。だが導入事例は限られ、本格的に普及しているとは言い難い。

 食品業界はロボット活用ノウハウが乏しく中小企業も多い。十分なサポートがないとラインの構築などは困難だ。こうしたニーズに供給側が応えきれていない。同様の問題は医薬品分野やその他の中小企業にも当てはまる。特に中小企業については、多品種少量生産への対応や、限られた作業スペースなども障壁となる。

 そこでロボットメーカー各社は、センサーをはじめとした周辺機器やソフトウエアなどと組み合わせて一括提案したり、システム構築(SI)企業と連携する動きを活発化させている。

 【省スペース化】

 また、安全柵を不要とする次世代機の投入が相次ぎ、人と同空間で働ける“協調ロボット”も普及段階にある。柵がないため省スペース化を図れ、これまで人が作業していたラインの構成を大きく変えずに自動化することも可能。中小企業、そしてロボットが十分活用できていない車・電機業界の組み立て工程でも活用が期待されている。

 次世代をにらんだ動きも始まっている。ファナックはこのほど、東大発ベンチャーのプリファード・ネットワークス(PFN、東京都文京区、西川徹社長)と提携した。機械学習の一つであるディープラーニング(深層学習)技術を産業用ロボットに適用する共同研究を始める。ロボットによる自律的な学習を可能にし、予防保全や画像処理などを高度化するのが狙いだ。

 人が直感的に行っているモノを認識し、つかんで移動させるといった作業を、ロボットも簡単に行えるようになれば、市場は格段に広がる。ファナックの稲葉清典専務は「製造業に革新をもたらす非常に大きなプロジェクト」と期待をかける。

 ※日刊工業新聞では「ロボット革命~人との共生時代~」を連載中です。

(2015年06月17日 総合1)

COMMENT

政年佐貴惠
名古屋支社編集部
記者

日本は動作教示ソフトやシステムインテグレーターなど、ソフトの面が弱い点が以前から指摘されている。それまでロボットとは遠かった分野への導入には、価格と共にソフト面の強化が欠かせない。新しいビジネスモデルを確立してこれまでなかった市場への導入が浸透すれば、日本の産ロボはよりその立場を強くできる。

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